1995年、ローソンが5000店舗を達成したとき、全加盟店オーナーがハワイに招待された。当時のダイエーグループ中内功CEOが壇上から、「ローソンは1万人に1店舗、店舗が1万2000店舗になったら、またハワイにみんなで来ましょう!!」とあいさつをした際にはオーナーから歓喜の声が上がったが、同時に夢のように感じているオーナーも多かったものだ。そのころはまだ、コンビニが近くて便利な生活インフラになる前の時代だったからだ。

 そのローソンも1万3930店舗(2018年1月度)となり、セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は、世界の小売業でも未曾有の2万33店(2018年1月度)のチェーン網を築き上げた。

エンタメ系サービスでは「全国出店」が重要になる

国内2万店突破を記念し、2018年10月から従業員のユニフォームデザインが一新される。

 この一方で、昨年12月度の主要コンビニ13チェーンの店舗数は5万8359店舗と、前月対比で初めて店舗数が減り(31店舗減)、人口減の中、「コンビニ飽和説」を表す数値ともなっている。

 こうした中でのセブン-イレブンの2万店舗達成は、石橋を叩いて渡るドミナント戦略で出店エリアを拡大してきた結果だ。

 ローソンが47全都道府県に出店したのは1997年だが、セブン-イレブンは沖縄未出店で2019年に1号店をオープンする予定で、ローソンから遅れること22年で全国制覇を達成する予定だ。

 セブン-イレブンは、2013年に香川県と徳島県、2014年に愛媛県、2015年には高知県へ出店し、四国への進出も遅かった。

 

 香川県のお客さまに話を聞くと、「香川では岡山の民放テレビ局が放送されており、セブン-イレブンのテレビCMは見ていたが、店舗がなかったのでできたときはうれしかった」とのこと。香川県の店舗数も101店舗(2018年1月度)と、5年ですっかり地域に密着したコンビニになっている。

 全都道府県への出店はインフラやエンタメ系サービスにおいて重要で、この分野ではこれまでは先行するローソンでの展開が多かったが、セブン-イレブンの四国出店以降は圧倒的な店舗数と相成り、ポケモン、妖怪ウオッチ、乃木坂46などエンタメコンテンツの展開もセブン-イレブンのお箱と変更していっている。

2万店を記念して「NPB商品」を多数発売

 

 セブン-イレブンは2万店を記念商品として、おやつカンパニーの「ベビスターラーメン ななチキ味」や「サッポロ 黒ラベル」の2万店感謝!缶、「コカコーラ レモン&ビタミン」「ロッテ コアラのマーチTHEセブンシュー」「こち亀SEVEN-ELEVEN 2万店記念限定版」のコミックなど、NB商品(ナショナルブランド商品)をフレーバーやパッケージ違いなどの若干の差別化をしたNPB商品(ナショナルプライベート商品)を多数発売する。

 セブン-イレブンの店舗網は、メーカー商品製造ロット数に十分見合う規模なわけだが、それ以上に圧倒的な販売力があることから、こうした商品開発が可能になる。

 メーカーの関係者に話を複数聞くと、「NPB商品の依頼は、通常のNB商品の取引を考えると断るのが非常に難しい」との意見が大半を占めている。

 ローソンが47都道府県に出店した1997年、メーカーとの協業をNB商品において増量品やバンドル品で行ったことを考えると、商品設計を根本的に変更するNPB商品の開発は隔世の感がある。

 大手コンビニのPB比率は60%を超えてきていると言われている。今回のセブン-イレブンの施策は、定価販売を基軸とするコンビニにおけるメーカーのNB商品の展開が大きな曲がり角にきている状況が如実に現れたものとなっている。

お客さまを待っているだけでは成り立たない

 既存店客数が23カ月連続で前年割れするなどは、コンビニの国内店舗数が上限に達している予兆と考える向きもある。

 その一方で、「経済産業省 商業動態統計」によると小売業の2017年上期販売額70兆670億円のうち、コンビニの販売額は5兆6609億円(収納代行除く)と構成比が8.1%しかなく、スーパーマーケットやドラッグストア、百貨店、中小小売業、飲食業からお客さまを奪い、規制緩和が進めばまだまだ伸びていく可能性も高い。

 

 今後、コンビニはただお客さまを待っているだけでは成り立たなくなる。

 セブン-イレブンとセイノーホールディングスの取り組みのように宅配や御用聞きでお客さまに近付いて売上げを伸ばしていく方向。プチローソンのような飲料自販機やオフィスグリコをターゲットとしたオフィスや工場、物流拠点など閉鎖商圏を狙った出店。大手3社が取り組んでいる駅売店のコンビニ化による賑わい商圏への看板変えによる出店など、お客さまにとっては多様な買い場が失われるデメリットはあるものの、コンビニとの接点が今後ますます広がっていくことは間違いない。

 超高齢社会となり、高齢者が買物に歩く距離は700mと言われていることを考えると、狭小商圏をマーケットとするコンビニは、品揃えが豊富で多様化した顧客ニーズに対応して伸び続けているネット通販とともに、日本の小売りの主力であり続ける可能性が高そうだ。