コンビニと鉄道会社の業務提携が加速していて首都圏では最終局面を迎えつつある。

 

 この3月8日にはセブン&アイ・ホールディングスと小田急電鉄、小田急商事が駅売店やコンビニ約100店舗を2年間でセブン‐イレブンに切り替えるなど業務提携が発表された。

 これまでにもセブン‐イレブンは京浜急行電鉄や西日本旅客鉄道、北海道旅客鉄道など、ローソンは東京急行電鉄や東京メトロ、大阪市営地下鉄など、ファミリーマートは九州旅客鉄道や西武鉄道、近畿日本鉄道などの駅に店舗を構えており、その他の鉄道会社も含めて陣取り合戦は全国に戦場を変えつつある(現在、自前で店舗展開をする阪急電鉄と阪神電気鉄道、京阪電気鉄道と南海電鉄の今後に注目が集まっている)。

 また、セブン‐イレブンに次ぐ平均日販と言われているJR東日本リテールネットのNEWDAYSは直近、タレントの芳根京子でおにぎりのテレビCMを流すなど独自路線を推し進めていて、商品の品質アップで勝負していくものと思われる。

“賑わい商圏”として成功確率が著しく高い

 

 駅ナカにあるコンビニは集客が確実に見込める上、駅売店からの看板替えは既存店の実績があるため売上げのめどが立てやすく、ともに"賑わい商圏"として成功確率が著しく高い。このことが、各コンビニが提携に躍起になっている理由だ。

 コンビニの商圏人口は1店舗当たり3000人程度が必要とされてきたが、現状ではその平均値は2100人強となっており、既に3000人を大きく割り込んでいる。

 これまで出店数を増やすことで成長してきたコンビニは現在、国内約5万8000店まで増え、出店余地が徐々に減り、出店数が頭打ちを迎えようとしている。しかも、各社とも既存店の客数が前年割れしている中、"賑わい商圏"である駅ナカコンビニは、是が非でも欲しい魅力的な出店場所なのだ。

女性客が増え、プライベートブランドも売れるように

 駅売店がコンビニになったことでメリットがあったと、あるコンビニ関係者は話す。

「かつては駅売店といえば新聞とたばこなどを買う男性サラリーマンが利用するイメージが強かったが、コンビニになったことで女性客が増えただけでなく、おにぎりやパン、お菓子などコンビニのプライベートブランドも売れるようになっているんです」

 筆者も、駅売店コンビニの店先で2時間ぐらいお客の動向をチェックしてみたが、パンやスムージーなどを買う若い女性客の姿を数多く見た。品揃えが増えたことで顧客拡大が図れ、売上げが確実に上がっていることが視認からも実感できたのだ。

 そういえば、通勤や通学の時間帯にはレジに行列ができているなど、従来の駅売店にない光景も見られるようになっている。人の集まる場所に大手コンビニの店舗を設置し、売上を上げる戦略は確実に成功しているといえるだろう。

駅売店型は約800アイテムを厳選して品揃え

 駅売店型コンビニの品揃えには特徴がある。一般的なコンビニのアイテム数は約3000〜3500なのに対して、規模によって異なるものの、駅売店は約800アイテム。おにぎりなど売れ筋商品を厳選して品揃えしており、ピンポイントで利用者ニーズに応える戦略をとっている。

化粧に加え、電車内で飲食する光景も増えた

 数年前は、電車の中で若い女性が化粧をすることに抵抗があった人が多かったが、今では普通の光景になりつつある。

 近頃、筆者が住む東急東横線沿線では、駅売店がローソンに変わっていることもあり、学生ぐらいの年齢の男女がおにぎりやサンドイッチを電車の座席に座りながら頬張る姿を時折、見掛けるようになった。今後 駅売店がコンビニ化することで、こうした光景は当たり前になっていくのかもしれない。

終電後は閉めるので、人手不足の悩みがない

 また、駅ナカコンビニは当然ながら、終電後は店舗を開けておけないため、人手不足で深刻化している深夜のアルバイト不足に悩まなくてもよいところも理にかなっている。

 こうした背景があって駅売店が高品質の大手コンビニになっていくのは大変うれしい一方で、小売りフォーマットの多様性が失われていくのは大変寂しくも感じている。

 駅売店で都こんぶや冷凍みかんを売っていた風景は、ノスタルジーとなってしまいそうだ。