課題は開設と運営の難しさ

 さて、コミュニティカフェの原点、そして目的はそこに集う人たちの交流にあるが、”全国コミュニティカフェ・ネットワーク”ではカフェを開催する人同士の交流会を開いたり、ネットワーク化も進めている。というのも、コミュニティカフェには開設や運営の難しさがつきものだからだ。

「例えば、市の支援を受けて一戸建ての空き家を借り、そこでコミュニティカフェを開こうとした人が、近隣住民の見知らぬ人たちが集まるのは迷惑だという声で断念せざるを得なくなったこともあるんです」(昆布山さん)

 また「コミュニティカフェを存続させるにはお金と人の問題が大切」で、自宅を“住み開き”のようにして開放する方法、または公共施設で定期的に開催する方法などもあるが、いずれにせよ人力は必須で、逆にせっかくイベント等を開いても人が集まらない、というようなことも起こる。カフェ間でそうした状況への対応法などを共有することも大切だ。

コンビニや商店街にできることがある

 そうしたコミュニティカフェの運営を、実はコンビニや地域の商店街が助けることができる。

「最近は商店街でも”まちゼミ”と称して、お茶屋さんがおいしいお茶の入れ方を教える会などを開いていますよね? こういう会をコミュニティカフェで開くことはどうでしょうか? 絵手紙教室だっていいし、みんなで教わりながら楽しむ麻雀教室だっていい。そして、その告知をコンビニでしてもらえたら集客にもお手伝いをしたい人を呼び込むのに助かります。逆に教室に集まった人にお出しする飲み物やお菓子などはコンビニで買うとかね。お互いが助け合っていけると思います」(昆布山さん)

 イベントなどで収益をあげられれば、コミュニティカフェはそれを運営費に回すことができるし、活動を知った人がお手伝いを申し出てくれることもある。

 コンビニや商店街は人材を提供したり、伝言板としての役割を果たすことでまた、人と地域に優しいお店というイメージアップにだってなりえる。

「潮の路」の小林さんは、「例えばカフェのチラシをコンビニが置いてくれたりしたら、それだけで信用が生まれます。怪しい団体がやってるんじゃないか?などと思われがちですが、信用担保になる」と言う。

 コンビニや地域の商店街とコミュニティカフェは、実は親和性がとても高いのだ。

 さらに最近ではマンションや介護事業所の共有スペースを、コミュニティカフェの場として無料で貸し出すことも増えてきている。

 そうした場所に無償で提供してもらった本を置いて貸し出す「民間図書館」というNPO団体は、「ただ本を貸し借りするにとどまらずに教養講座が開かれたりと、地域の文化交流の場にもなって、同時にまたそれがマンションの付加価値にもなっています」(昆布山さん)と、コミュニティカフェという場所作りが徐々にビジネスともつながり始めている。もちろん、そうした場所があれば、間借りという形でコミュニティカフェ自体も開設しやすくなっているのだ。

母親の介護で地元に帰り、直面した現実

広島・呉に「かたすみカフェ」を開いたおだしずえさん。30年以上ラジオDJとして東京や大阪などのラジオ局で活躍してきた。

 マンションではないが、間借りスタイルでコミュニティカフェを開いて成功している一つが、広島・呉の「かたすみカフェ」だ。

 30年以上ラジオDJとして東京や大阪などのラジオ局で活躍してきた、おだしずえさんは2014年に母親の介護のために実家のある広島県・呉に戻り、現在も地元RCCラジオの番組「おひるーな」のパーソナリティを務める。

 しかし、久々に戻ってきた故郷では親しい友人も少なく、また認知症の母親について介護者や当事者同士が語り合える場が欲しいと感じ、知り合いのお店を借りて週に1回、コミュニティカフェを開くことを決め、昨年4月末にオープンした。

 

「私は何となく始めて、やっています。地元に帰ってきてこんなことしたい、あんなことしたいと話していたら、お店をやっているオーナーさんが『昼間は空いてるから使っていいですよ』とおっしゃってくれ、間借りしました。呉の街が一望できるビルの5階にある場所で、映画『この世界の片隅で』にならって『かたすみカフェ』と名付けて。今はまた別の場所を間借りして開いているんですが、映画の舞台となった場所を巡り、ここが空襲に遭い焼野原になった場所ですと、戦争の記憶を語り継ぐ巡礼ツアーをやったりもしています」

 

 呉の街案内所にもなれば、とひっそり始めたコミュニティカフェ。最初は20人ほど座れる比較的広い店舗を借りてだったが、現在はもう少し親密な、10人程度が入るお店を借りて開く。

「キャパが20人のときは大変で、10人の今はちょうどいい。やってみて、大き過ぎる場所は自分には合わないと分かりました。そして昔、私が高校生の頃にはみんなが集える喫茶店もあったのに、帰ってきたらそういうお店もなくなっていました。中学生でも高校生でも入れる、ノン・アルコールの場所にしたいとやっています。いろいろな人が集い、いつも来て小さなキーボードで弾き語ってる人がいたり、土地柄で自衛隊の方も来たり、地元の人が年代も男女も関係なく集まります」

ふるさと再発見、生きがいにもつながる

 

 おださんの活動はゆる~く、今も週1で続くが、さまざまな人たちと交流し、地元・呉を語っているうちに興味が高まって観光ボランティアの勉強を始め、今や呉の観光特使に任命された。また集まった人たちと仲間となり、自分たちの収入にもつながる「日替わりカフェ」の開設にも動き出した。無理せず地域の人たちにつながりをもたらせ、ふるさと再発見、また本人の生きがいにつながっている。多くの人がコミュニティカフェでやりたいと願う形……それを体現した好例だろう。

 コミュニティカフェの中には営利を生んで生計を立てながら集い場としての機能を持たせる、といった場所も増えている。多様なスタイルで地域の人が集まり、助け合う場。これからますます増え続け、必要とされるだろう。