――あとは取り締まれないIUU漁業が懸念でしょうか。
そうですね。日本に入ってくる輸入品のうち30%ほどがおそらく違法漁業です。それを知らずに購入したらIUUの商品をつかまされたということになる。われわれは基本的に海外の商品であっても必ず船籍までさかのぼる体制を取り、IUUを排除しています。
――洋上転載でIUUの商品が紛れ込んでしまうことについてはいかがですか。
だいたいどこで獲ったものかというところまでさかのぼることができればある程度防げると思います。また船籍までたどれるとその船がちゃんとしているかどうかはある程度分かるので、目安、けん制になるでしょう。
小売業ができることは?
――消費者に対してできることはありますか。
まだまだサステナブル・シーフードやMSC、ASCの認知度が低いので、われわれが消費者に知らせてマジョリティにしていくのが小売業の使命だと考えています。
具体的な取り組みとしては、(イオングループの)全国63店舗で認証商品だけを集めたフィッシュバトンというコーナーを展開しています。認証商品を集めることでコーナーの売上げが上がることは確認しており、今後も拡大していくつもりです。
――海外の事例で、資源量を魚のパックにシールで貼るというものがありますがどう思われますか。
ホールフーズ・マーケットがやっているもので、シーフードウォッチ*かWWF(公益財団法人世界自然保護基金)の資料を基にしていると思います。日本でも(資源量を)調べる団体はあるのですが発表はしていません。そういう手法が一番分かりやすいとは思うのですが、明確な基準がないと消費者にお知らせすることはできないというのが本音です。
*シーフードウォッチ:アメリカのモントレー・ベイ水族館が行っている水産資源の持続可能性の評価。アプリやリーフレットで情報公開しており、さまざまな海産物の危険度を調べることができる。
――ありがとうございました。
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イオンの10年以上かけて確立させた調達システムには自信と期待がうかがえた。それでもIUU漁業の根本的な対策は難しいようで、船籍の把握による目安、けん制に留まる。また、日本の漁業のシステムそのものの欠点も示唆された。それでも松本氏には、流通業界の意識は高まっており今後良くなっていくだろうという希望的な見解を示していただいた。
では、調達のシステムや駐在員の派遣が難しい、小規模の小売店には何ができるだろうか。次回は独自で持続可能性に取り組む小規模小売企業を紹介する。
第1回 水産資源とスーパーマーケットの切れない関係
第2回 サステナブルな魚の選び方