――消費者が買わなければ資源が保たれるという話ではないのですね。

 違います。日本の漁業のシステムは海外に比べて遅れていると思います。

 2年ほど前、水産物の輸出が増えたのですが、その最大の原因が北海道漁業協同組合連合会のホタテ貝がMSC認証を取得した(2013年)ことです。ヨーロッパやアメリカはグローバルスタンダードであるMSCが当たり前なので、このホタテは海外からの引き合いが強くて国内にはほとんど流通しなくなっています。われわれはこういった基準をいち早く取り入れてきたということです。

――他の小売店ではそこまで行けない企業が多いと思いますが、なぜだと思われますか。

 旗振り役がいないと進まないと思います。イオンという会社は正しいことを正しいと評価し、どんどん進めていくという思想がありました。

 他社さんの中で目を瞠るのがコープデリさんです。5年ほど前までは何もありませんでしたが、今年の「お魚スーパーマーケットランキング」では2位、農産物のオーガニックは1位です*。

*グリーンピース・ジャパン「Goオーガニックランキング(2016)」
http://www.greenpeace.org/japan/ja/library/publication/20180515-organic-report/

認証を取る企業や漁業者は増えている

――SM各社がそういった取り組みをしていくことで、先述の漁業のシステムも良くなっていくとお考えですか。

 変わっていくと思います。2012年のロンドンオリンピックは環境にやさしいオリンピックと言われています。国が先陣を切ってイギリスのソウルフード、フィッシュ&チップスの魚を全てMSCに変えたのです。それで海外から来た人がMSCなどのサステナブル・シーフードを味わい、一気に広がりました。リオもそれを継承しましたが、日本はそうではありません。

 東京五輪ではMSCやASCに加え、日本の認証であるMELとAEL*も調達基準に含めています。MELとAELはグローバル基準であるGSSIで認められていないので、海外の人にとってはどうなのかなと個人的には思います。

*MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)とAEL(養殖エコラベル):天然魚(MEL)と養殖魚(AEL)の持続可能性に関する日本独自の認証制度。

――持続可能性の認知を広めるいい機会なのに、基準を緩めてしまったのは残念ですね。

 ただ、ヨーロッパやアメリカのマクドナルドではフィレオフィッシュにMSCの魚を使っているので箱にMSCと書いてあるんです。日本もいずれそうなると思います。そうなったら世の中で(サステナブル・シーフードが)マジョリティになって変わっていくと思っています。

 また養殖業もASC認証を取る業者は増えていますし、今後もどんどん増えていくと思います。

 西友が取り組んでいるFIP*はNGO法人と企業、漁業者の3者が三位一体になってMSC取得を目指すというものです。これも増えていくのではないでしょうか。

*FIP:漁業改善プロジェクト。漁業者、流通、小売などが参加でき、MSCの認証基準達成を目指す。