「どうして子どもが来ないのか」。県内のある子ども食堂で運営者の嘆きを聞いた。スタッフは善意と熱意があり、温かい食事を用意して待っていた。自治体の補助金を受けていたが、来所者ゼロの日もあった

▼気になったのは「施し」の感覚だ。悪意はないにせよ「恵まれない子に食べさせる」という意識がのぞいていた。あいさつや食事作法にこだわる言葉を、子どもは説教くさく感じたかもしれない。地域に定着せず数カ月で閉所した

▼民間団体の調査では、無料か安価で食事を提供する子ども食堂は全国に2200カ所以上ある。沖縄は127カ所で東京、大阪、神奈川に次いで4番目、人口比では最も多い

▼子どものため何かしたいという大人の多さは心強い。だが子どもが望むこととずれがあり、居場所になり得ていない例もある。貧困家庭の子が利用する場所、という誤った認識を拭い去る努力も必要だ

▼県内で最初にできた沖縄市のNPOももやま子ども食堂は5月、開所から3年を迎えた。鈴木友一郎副理事長は「大人が子どもから学ぶことの方が多い」と一緒に楽しむ姿勢を強調する。開所時の小学生たちが中学生になった今も通う

▼先週土曜は30人以上の小中学生が来た。子どもからのシンプルな回答がそこにある。食事だけでなく、心を満たす何かが求められている。(田嶋正雄)