加熱式たばこ「日本だけで大流行」という真実

「ガラパゴス市場」なのか「テスト市場」なのか

実は今、この加熱式たばこが普及しているのは、世界でも日本だけと言っていい(撮影:今井康一、石阪友貴)
日本のみで繰り広げられている加熱式たばこ戦争。これは世界の潮流から外れたトレンドなのか。

ビジネスの世界で「ガラパゴス」と言えば、いいイメージがない。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら

1990年代から2000年代前半にかけ、日本の携帯電話は世界的に高い性能や機能を誇っていたが、日本という孤立した環境で最適化が著しく進んだ結果、世界市場では全く勝負できないものになってしまった。アップルのiPhoneをはじめとするスマートフォンが日本に押し寄せると、日本の「ガラケー」は駆逐されてしまう。悪しきガラパゴス化の例だ。

加熱式たばこは新たな「ガラパゴス」?

そんな日本で今、新たな「ガラパゴス」製品が出現しつつあるように思える。加熱式たばこだ。Ploom TECH(プルーム・テック)、IQOS(アイコス)、glo(グロー)という加熱式たばこ3製品が「三国志」さながらの激戦を繰り広げ、連日ニュースにも取り上げられているが、実はこの加熱式たばこが普及しているのは、世界でも日本だけと言っていい。

これらの加熱式たばこも、ガラケーと同じ運命を辿るのだろうか。いや、そうとは言えないだろう。

まず、日本のメーカーが日本市場で競い合っていた携帯電話と異なり、アイコスは米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)、グローは英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)と海外メーカーの製品。対するプルーム・テックは日本たばこ産業(JT)の開発したエマージングプロダクトだ。

海外企業が参入していることだけが理由ではない。日本市場はガラパゴスというよりむしろ、世界進出を見据えたテストマーケティングの市場だ。世界のたばこ市場はいま転換期を迎えており、従来の紙巻きたばこに代わる新型たばこに大きな注目が集まっている。その1つが日本で普及しつつある加熱式たばこで、実際、各社は日本を足掛かりに世界展開へと乗り出しているのだ。

アイコスは2014年に日本で先行発売されたが、「PMIは当初はテスト市場と考えていたはずだ」と野村證券アナリストの藤原悟史氏は言う。「想定を超える売れ行きがデバイス供給の問題に繋がったのだろう」

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  • NO NAMEdbacfd9407e0
    >煙が見えないし、配慮意識の低下となる電子タバコが1番迷惑。

    本当そう。アイコスだからという理由で禁煙区域で平気で吸う奴が本当に多い。
    up62
    down14
    2018/6/6 13:52
  • NO NAME3eb0c0791509
    煙が見えないし、配慮意識の低下となる電子タバコが1番迷惑。
    up67
    down20
    2018/6/6 13:32
  • NO NAME8605a97627e0
    晴れて気持ちの良かったこの前の日曜日、神戸のメリケンパークで、加熱式タバコのお試しテントがはられていました。

    なんで?とは思いましたが、こうしたシェア争いや、紙巻きから移行してほしい思惑があったんですね。

    個人的にはタバコは吸ったりやめなりの繰り返しですが、清々しい公園でアピールされても、せっかく空気が美味しいのにとしか思わず、手は伸びませんでしたけれど。

    それよりテントは若い男性スタッフばかりで、若い子のほうが入りやすい雰囲気。記事にある50代を狙ってるようには見えなかったなぁ。

    ガラパゴスというのは個人的には違和感があり、リスボンやポルトでは買ってる方を何度も見かけました。
    up17
    down6
    2018/6/6 13:55
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