サッカーW杯が盛り上がらない要因はどこにあるのか
優勝トロフィーの行方も気になるが(写真:ロイター/アフロ)
2018FIFAワールドカップで盛り上がる準備はできただろうか
気が付くと、2018年も6月に入り、4年ぶりのサッカーの祭典である、FIFA ワールドカップ(以降、サッカーW杯)の開幕が、6月14日と迫ってきた。
ちなみに、今年の日本の1次予選の試合と、主なテレビ中継の予定は下記のようになっている。
- 6/19(火)21:00 コロンビア vs 日本 NHK
- 6/24(日)24:00 日本 vs セネガル 日本テレビ、NHK-BS
- 6/28(木)23:00 日本 vs ポーランド フジテレビ
今年は、開催国がロシアであり、日本と時差ではヨーロッパほど離れていないものの、いずれも深夜の試合になり、サッカーファンにとっては、寝られない日々が続くのだろうか。ところで、このテレビ放映、私のようにマーケティングを行っているものからすると、視聴率が気になる。なぜならば、一般にサッカーW杯のテレビコマーシャルの媒体価格は高額になるため、それに見合うだけの視聴率を取れているのか、気になるからである。
過去のサッカーW杯のテレビ視聴率
日本国内のサッカー番組の視聴率は、メディアリサーチデータを提供しているビデオリサーチが丁寧にWebページでデータを公開している。
驚くべきは、2002FIFAサッカーW杯、グループリーグ「日本×ロシア」の試合が、66.1%の視聴率だったことである。この2002年の大会は、日本が共催国だったこともあり、サッカーW杯が、大きなブームになった。日本の勝利後、渋谷のスクランブル交差点にファンが押し掛けるようになったのもこのときからと記憶している。それほど、日本全体で盛り上がっていたのかもしれない。
一方、直近の2014年大会では、「日本×コートジボワール」のゲームが46.6%とだいぶ下がってきた。その他の試合も、Top20には入っていない。つまり、以前よりはテレビ視聴率があまり取れなくなりつつあるのだ。
今年に関しては、大会直前に、急な監督交代があったり、他のスポーツでの不祥事もあったりと、あまりサッカーW杯について、盛り上がっているとは思えない。今年のテレビ視聴率は、どの程度の数字になるか、とても心配だ。
今回のW杯、日本サッカー協会はマーケティングしていたのか
スポーツというのは試合が命である。良い試合であれば、テレビ視聴率も高い数字になり、ファンも増える。しかし、それがプロ・スポーツとなった場合には、状況が大きく異なる。プロ・スポーツは、きちんとマーケティングを行い、きちんと利益を上げて、その利益の一部を、そのリーグや選手の強化に使い、継続的に成長するモデルを作らないといけない。プロ・スポーツの成長は、プロ・スポーツのビジネスそのものだ。
日本がサッカーW杯に出場するのも、マーケティング的視点で考えれば、日本のサッカー界にお金を落としてもらうためだろう。そのお金により、日本のサッカー界が成長できるのだ。ところが、今回のW杯では、今のところ、その「匂い」がしない。つまり、サッカーW杯を活用した、マーケティングが見えてこないのだ。日韓W杯サッカーでは、たくさんあった街頭イベントは、今年はまだ見られない。W杯直前に行うのかもしれないが、きちんとマーケティングのスケジュールを組んでいるのだろうか。
サッカーW杯では、ファンにさまざまな行動をしてもらう必要がある。もちろん、多くのファンにテレビを見てもらいたいだろう。できることなら、ファンにSAMURAI BLUEのジャージを買ってもらいたいだろう。さらには、ロシアまで行ってもらい、現地での熱い思いを伝えてもらい、ファンを増やしてもらうべきだろう。これら、ファンが行う体験を、サッカーW杯の開催日から逆算したスケジュールを組んで、マーケティングを行っている人はいるのだろうか。総合的に、統合的にファン・エンゲージメントを行う人である。
米国でのプロ・スポーツには、このようなファン・エンゲージメントの担当のマーケッターは、多く存在する。直接、ファン・イベントも企画するし、メディア向けにさまざまな情報を提供し、本番前のスポーツ番組で、多くの時間取り上げてもらうように努力する。
サッカーW杯の場合は、公益社団法人日本サッカー協会がきちんとマーケティングを行う必要があるのだ。この組織では、「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する。」という理念を掲げている。これも重要な理念だろうが、W杯ではサッカーを積極的には行わない人、つまり観戦がメインのファンとの関わりが少ないように感じる。マーケティングの整理論である3C分析では、「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」への網羅的な戦略検討が重要だ。今回の場合では、市場つまり、ファンに対しての戦略を立てて、マーケティングを行うべきなのだろう。
ただ4年間の時間を費やし、良い試合を作ろうとするだけでは、ファンとの絆は強くならない。もっと、ファンのためのマーケティングを行うべきだろう。何をすればサッカーファンが喜ぶのかという視点が欠けている。きっと、日本サッカー協会には、その担当者がいないのではないだろうか。
振り向いてくれない人へのマーケティングではなく、ファンへの恩返しが、最大のマーケティングだ
先のテレビ視聴率の話をすると、「もっと多くの人にサッカーの良さを伝えないと」という会話が聞かれる。私の答えは、NOである。地球上の人、全員がサッカー・ファンなんてことはありえない。それぞれが、好きなスポーツ、見たいスポーツがあるから、楽しいのだ。
マーケッターは、たまにマーケティングを誤解する。マーケティングの知識や、広告の力があれば、ファンでない人もファンにすることができると。そして、それこそがマーケティングだと。そのマーケッターに私は強く言いたい。あなたのビジネスを支えている人は誰ですか。支えている人に、きちんマーケティングのフレームを使って、もっとファンになってもらう努力をしましたかと。
まず私たちマーケッターが行うべきことは、サッカー・ファンにきちんと恩返しのマーケティングをすることだ。地上波で、無理に多くの人が見る番組よりも、サッカー・ファンのためのニッチなネット番組を作ることの方が、サッカー・ファンは喜ぶかもしれない。サッカー・ファンも、Jリーグの発足から時がたち、年齢もレベルも多様だ。「選手の人柄」を知りたい人もいれば、「戦術」を知りたい人もいれば、「ゲーム」にのめりこみたい人もいるのだ。地上波では、その最大公約数的な番組しか提供できない。もっと、それぞれのファンに寄り添ったコンテンツを提供することを考えても良いのだ。
ファンの望んでいることが何かを明確に理解し、それを実現することが、最高のマーケティングだ。サッカー・ファンへのおもてなしは、サッカー・ファンではない人をファンに成長させる原動力になる。このような波及効果を想定した、きちんと考えたマーケティングが重要なのだ。
さぁ、もうすぐ始まるサッカーW杯。今年は、どの程度サッカー・ファンが盛り上がり、楽しめるか。様子を見届けたい。日本サッカー界の成長のカギもそこにあるのだ。