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アヒージョは彼氏と一緒に作ればいい。ツーオペの結婚をするために知っておくべきこと

男も女も、家事や育児のスタートラインは同じはず。

2017年、「ワンオペ育児」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた。

家事や育児をひとりでこなすのは、主に母親だ。2017年度、男性の育児休業の取得率は5.14%になったが、女性の83.2%とはまだ大きな差がある。

2018年4月、「オリックス働くパパママ川柳」で大賞に選ばれたのは「ワンオペも 逆手に取れば ひとりじめ」。散らかった部屋で2人の子どもの世話をする母親のイラストがポジティブに描かれたが、「当事者のつらさに寄り添っていない」とネット上では批判もあった。

そんな中、5月には自民党の萩生田光一・幹事長代行の「赤ちゃんはママがいいに決まっている」という発言もあった。

「ワンオペは前向きに」「子どもには母親の愛情が一番」。ポジティブなメッセージが先行するが、家事や育児の負担は母親に偏ったまま。保育園の整備も進まない。「ワンオペはつらい」という当事者の声が届きにくいのはなぜなのだろう。

過酷な家事育児の実態とその背景を著書『ワンオペ育児』にまとめた明治大学教授の藤田結子さん(社会学)と、フェアな夫婦関係を目指して奮闘する実録エッセイ漫画『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』を描いた漫画家の水谷さるころさんが、とことん語り尽くした。

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絵本ではクマもママだけ

ーーお二人とも「ワンオペ」のつらさを実感されています。

水谷:あとで詳しくお話しますが、私は最初の結婚ですごく張り切ってしまって、家事すべてをひとりでやることに耐えかねて、離婚した経験があります。

今はバツイチ同士の事実婚なので、家庭の問題は積極的に話し合って解決していこうという気持ちがお互いに強くあります。夫婦ともに自営業で、夫婦別姓。ちょっと特殊な家庭かなと思います。藤田さんのところはどうですか?

藤田:夫の仕事の都合で、長男が生まれてから3歳半までは、私と長男の2人だけのワンオペ状態でした。その3年半のことは、大変すぎてあまり覚えていないんです。今は一緒に住めるようになりましたが、夫は会社員なので長時間労働。私のほうが時間の都合をつけやすいので、夫も家事育児をしているとはいえ、やはり私のほうが比重が大きいです。

水谷:そうなりますよね......。うちも最初から問題がなかったわけではないので、夫婦関係をテーマにした漫画を描こうと思ったんです。つまりワンオペを回避するための壮絶な裏側ですね(笑)。だから育児エッセイ漫画なんだけど、赤ちゃんはほとんど出てこない。代わりに、父親はたくさん登場します。

そこで気づいたんですが、ほとんどの育児漫画や絵本って、著しくお父さんの存在感がないんですね。クマでさえ、擬人化されてお母さんになっている。お父さんが登場したとしても、「お馬さん」をして遊ぶような限定された役割で、日常生活を描いている絵本の登場人物のほとんどは、母と子です。

リアリティを優先するから父親不在なのかもしれないけれど、「なんで父親が出てこないんだ」と夫は読み聞かせをしながらイライラしていますね。

「逃げ恥」で裾野が広がった

ーー2017年、「ワンオペ育児」が注目を集めました。

藤田:母親が一人で育児を担うのは今に始まったことではなくて「孤育て」「母子カプセル」などと言われてきました。

2010年代にSNSが普及したことで、ママ友コミュニティで話していた不満が、全世界に公開され、共有されるようになりました。現状のつらさを訴えるための当事者の言葉として使いやすかったので広がったのでしょう。SNS時代の賜物ですね。

2016年末にドラマ「逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)」が大ヒットしたのも大きかったです。家事分担や「愛情搾取」など、これまで社会学者がどれだけ訴えても伝わらなかったことが、エンタメの力で一気に裾野が広がりました。

水谷:対象が広がると、標準をどこのラインにするかが難しいですよね。うちの夫は洗い物をしてくれるからまだマシと思うか、洗い物しかしないと思うか。マシなのかまだなのかというジレンマ。そのバランスを少しずつ底上げしていくしかない。

藤田:男性の育休取得率も、90年代の1%台から5%台に上がったのはすごい、とみるか、まだまだとみるか(政府目標は2020年までに13%)。2015年度は育休を取った男性の過半数が「5日未満」の取得日数でしたから、取得期間の平均が長くなったかどうかも知りたいですね。

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彼氏ができるとアヒージョを作る

ーー家事分担が進まないのは、スキルの差が原因なのでしょうか。

藤田:一人暮らしの学生に食事を記録してもらった調査があるのですが、男子も女子も、ほとんど夕食を作っているとはいえません。ファストフードかコンビニです。千切り野菜の袋にドレッシングをふり入れて振って袋から直に食べるとか。

水谷:思い当たるふししかない......。私も20歳で一人暮らしを始めてから、自分のためだけに料理をすることはなかったですね。みんなどのタイミングで料理するようになるの?

藤田:彼氏ができたり結婚したり、でしょうか。この調査でわかったのは、女性は生まれつき料理が得意なわけではなく、女だからといって実家で教えられていたわけでもないということ。今の学生たちは「女は料理ができなければいけない」という意識もそんなに強くなくて。ただ、女子は彼氏ができるとなぜかアヒージョを作る。

水谷:なぜアヒージョ!(笑)

それで思い出したんですが、犬山紙子さんの夫の劔樹人さんの家事エッセイ漫画を読んだときに、私すごく共感したんです。

「今日からアナタが家事担当ね」となったときに、一生懸命勉強してスキルアップする。その心情を劔さんが語っている。これ女の人も同じじゃんと思ったんですね。

ただ女性の場合はできて当たり前だとされているから、そこの努力が可視化されないんですよ。

台所で育まれるオカンメンタリティ

ーーやはり役割分担の意識があるということでしょうか。

水谷:うちは夫が料理、私が掃除や洗濯という得意分野で分担しているんですが、炊事をやると男性でもめちゃくちゃオカン化が進むんです。

「今日ご飯いらないってなんで早く言ってくれなかったの」とか「温かいうちに早く食べて」とか「こんなに頑張ったのに食べてくれなかった」とか言ったり、キッチンのものを適当なところに置くと怒られたり。オカンメンタリティはつまり、愛情やケアを主導する精神ですね。掃除や洗濯ではオカンメンタリティは生まれないです。

藤田:「愛は食卓にある。」という食品メーカーのキャッチコピーがありますよね。昔から、食事を作るのは人の世話をすることで、それには愛情が必ずあって、家事労働の中でも最も愛情と密接に関わるのが料理だという前提があります。愛情たっぷりのお掃除とは言わないですもんね。

水谷:おもしろいのは、それが女性特有のものではなくて、男性が料理をしても愛やケアを内面化するということです。

夫は、栄養バランスを考えて料理をし、どうやって子どもに野菜を食べさせるか工夫したり、テレビを見ながら食べさせないようにしたり、マヨネーズをご飯にかけていいかどうか問題で夫婦で揉めたりします。オカンメンタリティは性別にではなくキッチンにある、と思っています。

専業主婦に育てられた成功体験

藤田:料理をすれば男性も変わるというのはおもしろいですね。

ただ実態としては、30代〜40代前半の未就学児がいる世帯を30世帯ほど調査したのですが、さるころさんのご家庭のように夫が朝昼晩とも料理を作っているというケースは全くありませんでした。他の家事はやるけれど、料理だけは作りたがらないという男性は結構います。

私が立てた仮説は、一部の男性は料理に愛情の意味づけをしていて、自分も母親の手料理で育ってきたから、妻の作った料理を食べることで愛情を感じようとしている、あるいは子どもが愛情を感じるものだと信じているのではないか、というものです。

萩生田さんの「赤ちゃんはお母さんのほうがいいに決まっている」という発言にも通じるものがあるのではないでしょうか。彼がお母さんがいいというのは、ご自身がお母さん大好きなのか、育児に関わっていないのか......。

水谷:官僚も政治家も、エリートは専業主婦家庭でケアされて育ってきて、自分の周りにはそういう人ばかり。僕たちはこれで正しいんだという成功体験と自己肯定から、「母親がいいに決まっている」という感覚になるのかもしれませんね。

藤田:さまざまな先行研究によって、子どもが愛着を抱くのは母親に限らないし、複数でもいいというエビデンスがあります。それでもなお、ああいう発言が出てくるのは、団塊世代は専業主婦に育てられた人が多いことも関係しているでしょうね。

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産んだらママになるわけじゃない

ーーNPO法人ファザーリング・ジャパンが2011年の総務省「社会生活基本調査」からまとめたデータによると、6歳未満児がいる世帯の1日の家事・育児関連時間は、夫は1時間7分、妻は7時間41分となっています(上のチャート)。

藤田:日本は男女で家事や育児に関わる時間に大きな差があり、ほとんどのケースで妻のほうが圧倒的に家事や育児を担っています

先ほどの料理の話もそうですが、適性があるからそのように偏っているのではなく、これは「結果」です。女性が家事や育児を主に担当する社会構造がまずあり、子どもは母親といつも一緒にいるから、結果として「ママがいい」と言うようになるわけです。

水谷:スタートは父親も母親も同じだと思います。息子が生まれたときに、育児って学習と練習を積み重ねてやるものなんだ、と知りましたから。

今、息子のトイレトレーニングに取り組んでいるんですが、人間って練習しないと一人でトイレもできないのに、産んだら自動的にお母さんになるわけないですよね。母性は自然に芽生えるなんて考えている人には「アナタだって練習してトイレできるようになったでしょ」と言いたい!

藤田:男性はおっぱいがないから育児できない、という人もいるけど、母乳だって最初から自然に出るものじゃないですからね。

水谷:私は部活かと思いましたよ! 新生児室にママたちが集まって授乳しているとき、私はなかなか母乳が出なくて、居残りの落ちこぼれ組でした。みんながみんな、当然のように母親になれるわけではないですよ。

藤田:男性のほうが細やかな気遣いが苦手、などと言われたりもしますが、ずっとケアされる立場だったから、ケアする意識が育っていないだけ。相手のニーズを読み取る経験を重ねれば、気遣いのスキルは高まるはずです。

女性が家事を手放さない

水谷:それなのに、なぜ女性のほうにばかり「家事や育児をやらなければならない」「やって当たり前だ」という圧力や強迫観念があるんでしょうね。

藤田:『家事の社会学』というイギリスの古い本には、家事は嫌いだけど、主婦のアイデンティティを獲得するために家事をやるんだという主婦たちの話があります。それは今も同じで、女性らしさ、母親らしさに価値があると考えて、女性のほうが家事や育児を手放さない。妻がゲートキーパーになっているケースは割と多いです。

水谷:私が初婚で失敗したのは、そこなんです。

20代後半のころ、いわゆる結婚がしたかったんですが、付き合っていた同い年の彼は腰が引けていました。自分の父親がやったように専業主婦の妻を養って子ども2人を大学まで入れて......というのを自分ができるのかと考えて踏みとどまっていたんですね。

そんな彼を口説き落とすために、結婚のメリットとして「私は稼ぐし、家事もする。アナタが家事しなくていいなんて、結婚ってすごくいいでしょ」というプレゼンをしてしまったのが初回の失敗です。

家事を完璧にこなさなければならないプレッシャーはのしかかるし、仕事先からは養ってもらっていると勘違いされてギャラを減らされるし。私がもう無理! と白旗を上げたらじゃあ解散ね、となって3年半で離婚しました。

男性は男性で「一家の大黒柱」といった旧来型のプレッシャーを結婚に感じているから、結婚するなら家事育児など重たいものは女性が持ちますから、という役割分担が自発的にできあがってしまうのではないでしょうか。

家事のハードルを下げる

ーーどうすれば、ワンオペの「自家中毒」から抜け出せるんでしょう。

藤田:女性たちに聞くと、「自分だけがやらなくてもいいんだ」と気づいたとしても、どうせケンカになるだけだからと、夫とのコミュニケーションをあきらめている人が多いですね。ワンオペを脱出したければ、あきらめないで交渉し続けるしかないです。

あと、女性のほうがハードルを下げる必要もあります。専業主婦の全盛期にできあがった家事や育児のレベルは、先進国でもダントツに高いです。夕食におかず3品なんて、どんだけハードル高いんですか。夫にも高いレベルを求めてダメ出しするのではなく、相手に任せる姿勢が大事です。

水谷:初婚のときにすごく頑張っていた家事ですが、離婚したときに、それは自分が求めていたレベルではなかった、社会からの刷り込みだったのだ、と気づきました。

おかず3品は必須とか、夫のシャツがヨレヨレだったら妻が恥ずかしいとか、どれも私が考えたことじゃなかった。結婚の夢が崩れたと同時に、自分を縛っていた呪いから解放されましたね。

藤田:男女の賃金格差とか、権力をもった人からの3歳児神話の押し付けとか、変えなければいけないことはたくさんあるけれど、それを待っていたら10年15年、自分が子育てする期間は終わってしまいます。まず、自分で気づいたことから行動に移していくしかないですね。

水谷:結婚したいという気持ちだけで結婚したことを後悔しているので、10年前の私にこの漫画を全部読ませたい。社会がそうだから、ではなく私はどういう生活をしたいのか、ということ。結婚はカスタマイズできるということが伝わるといいなと思います。

BuzzFeed JapanNews


Akiko Kobayashiに連絡する メールアドレス:akiko.kobayashi@buzzfeed.com.

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