<link rel="stylesheet" href="/static-assets/css/enhanced.313774e5e52ce82213eb3c3443e3e660.css"> back to top

We’ve updated our privacy notice and cookie policy. Learn more about cookies, including how to disable them, and find out how we collect your personal data and what we use it for.

検索上位の医療機関の影に悪質SEOの実態 「業者に依頼」「認識不足で把握せず」

掲げていたのは高額な保険外治療。

医療サイトの誇大広告などを規制対象とする改正医療法に対し、悪質なSEOで規制をかいくぐっていると指摘された医療法人が、過ちを認めて対応を改めた。

「リンクスパム」による悪質SEO

この医療法人Aは「NK療法」という「免疫細胞療法」を大きく紹介している。この療法は科学的根拠に乏しく、効果が証明されていないにもかかわらず、高額で提供されており、そもそも批判が強い。

ただ、今回の改正医療法をめぐって「抜け道」疑惑が指摘されたのは「悪質なSEO」。医療法人Aのウェブサイトは、「リンクスパム」という不正なSEO手法を使って、検索結果が上位に表示されるようにしていた。

中古ウェブサイトを買いつけ、順位を上げたいサイトのリンクを貼る手法で、Googleのガイドライン違反に当たる。

BuzzFeed Japan Medicalが医療法人Aに取材をし、この手法の問題点を指摘したところ、この手法を誤りと認めて、リンクを解除した。

「業者に依頼」「認知不足で把握してなかった」

取材への回答はAの事務長により、メールでおこなわれた。

「今回のSEO対策につきましては、全て業者に依頼し行ったものですが、認知不足で把握しておりませんでした。意図があってやったわけではございません」

つまり、Aは検索結果の上位表示を業者に依頼した。しかし、どのような手法でそれを実現するかについては把握していなかった、という。

「情報提供及びご指摘をいただきまして、6月1日時点で対象とされるリンクは全て解除しており、また今回利用した業者への依頼も解除致しました」

「今後は、同様の過ちが無きよう注意し適切に行うよう努める所存です」

リンクスパムのために作られたウェブサイトの中には、抗がん剤治療など「標準治療」と呼ばれる科学的根拠の確かな治療のデメリットを強調するサイトや、逆にNK療法のみを「副作用がない」などの表現で推奨するサイトもあった。

Aのウェブサイトは5月31日時点で「NK細胞療法」の検索結果で8位に位置していた。「十二指腸がん」「癌性胸膜炎 症状」「胸膜癌」「がん性胸膜炎」「十二指腸がん 転移」「癌性腹膜炎」などの検索ワードでは5位以内だった。

上位表示されれば、それだけより多くの集客が期待できる。SEO自体は一般的な企業努力だが、このような手法はGoogleのガイドライン違反だ。

SEO専門家で、この手法の問題点を指摘した辻正浩氏が確認したところ、リンクスパムに使用された複数のウェブサイトは削除され、Aのサイトの検索順位も下落しているという。

「この規模での順位下落は普通にあることではありません。同タイミングではこのサイトだけが落ちていることからも、寄せられた通報を元にGoogleが評価を落とす対応をしたとしか考えられません」(辻氏)

「標準医療に及ばないのは確か」

改正医療法の抜け道としての悪質なSEOに対策が取られたとはいえ、そもそも、医療法人Aが提供する「NK療法」に問題はないのか。

これは公的保険適用外の「治療」で、Aでは1回30万円、1クール(6回投与)180万円と高額で提供されている。

いわゆる「免疫細胞療法」と呼ばれるもので、自分の体の中から取り出した、がんを攻撃するとされる免疫細胞を培養、活性化し、体の中に戻して、治療効果を期待するものとされる。

また、科学的根拠が確かな「免疫チェックポイント阻害薬」と混同させる狙いで「免疫療法」とひとくくりに表現する傾向も問題視されている。

この点について、AはBuzzFeed Japan Medicalの取材に以下のように答えた。

「ご指摘の通り、標準療法の科学的根拠程には及ばないのは確か」

「治療効果についても標準治療より勝るものでも、それに代わるものでもございません」

「当会としては、特に標準治療の治療法がなくなってしまった患者様や身体に負担の少ない治療法を求められている患者様のお力になりたいと願っております」

Aの説明には矛盾がある。

「標準医療より勝るものではない」としながら、ウェブサイトでは“身体への負担が少なく、標準治療で起こるような重い副作用は極めて少ない”と記載していた。

改正医療法では、ウソや大げさな広告なども禁止している。そもそも、ウソや大げさな広告は景品表示法や健康増進法でも規制の対象であり、内容によっては医薬品医療機器等法(薬機法・旧薬事法)にも抵触する。

Aはこのような表現について、6月1日の改正医療法施行前に修正済みであると回答していたが、BuzzFeed Japan Medicalは4日14時時点まで、このような表現がAのウェブサイト上に残っていたことを確認している。

そのことを指摘すると、Aは以下のように回答した。

「業者に修正を依頼し、順次対応されているため、時間差があった」

「ガイドライン上の変更によって適切にサイトの改善・修正を継続的に行っております」

“重い副作用は極めて少ない”などの表現は、BuzzFeed Japan Medicalの取材後、現在は修正されている。

「悪質な広告に加担しないで」

今回のケースでは、明確なGoogleのガイドライン違反があったために、速やかな対策が実施されたともいえる。

しかし、よりわかりにくい手法や、正当な手法で、悪質な広告が表示されたとしたら、今回のようにスムーズに話は進まないだろう。

辻氏は以下のように指摘する。

「引き続き、一般の方や報道機関などの方が監視を強め、然るべき機関に報告するなど、適切な警告をすることが、ネット上の情報の信頼性を保つためには必要でしょう」

「また、専門家は悪質な広告に加担しないことで、ネットの自浄作用を働かせてほしいと私は思います」

サムネイル画像=Getty Images