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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 日本の少子化の主因は<いい男がいない>ことにある。女性が結婚したくなるような男性が少ないから、婚姻率と出生率が下がるのだという。そんな説を十年前に出版された『「国力」会議』という本の中で展開しているのが、現財務相の麻生さんだ

▼<日本男児には「強いリーダーシップを持て」と言わねばならん>と力説している。首相を経験する前のことだから、持論は同じでないかもしれないが、現在の自身の<リーダーシップ>は、いったいどうなったのだろう

▼森友学園を巡る財務省の文書改ざん問題での処分である。当時の理財局長が停職三カ月相当となる一方、自身は閣僚給与一年分の自主返納で「進退は考えていない」のだという。続投だ

▼国民を欺き、行政の信頼を失墜させた問題で、処分はことの重みに比べて軽いだろう。つるし上げろと言いたいのではない

▼もしここで自ら身を引いていたなら、公文書改ざんは、大臣の進退につながる罪深い行いとして、将来への強い戒めが生まれていただろう。官僚の倫理を取り戻す一歩になったはずだ。リーダーとしての身の処し方をみせる機会を逃したのが残念でならないのだ

▼自主返納について、麻生さんは、「それなりのあれ(姿勢)を示した」と語った。重大なという意味だろうが、逆の意味に聞こえてしまう。「それなり」の幕引きで終われば、禍根は残る。

 

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