日本を代表する「プロ経営者」として、これまでにさまざまな経営改革を推進してきたカルビーの松本晃会長兼CEO。インタビュー記事の前編ではカルビーでの9年間を振り返ってもらった。今回は働き方改革にまつわる日本企業の問題点などを聞いた。
――日本企業が取り組んでいる働き方改革を見ると、その多くは残業規制のための制度作りに注力しすぎている気がします。この点はいかがですか?
日本の働き方において何が一番悪いかといえば、言うまでもなく残業ですよ。残業手当てという制度がある限り、問題は解消されません。
働き方改革に関しては、あながち政府が言ってることも間違ってるとは思いません。裁量労働制にしたらいい。特にオフィスで働いている人たちは、「時間」ではなく「成果」で働いているのですから。
ところが、そうした人たちに残業代を払うとなれば、そんなのするに決まっているじゃないですか。
例えば、「伏見さん、明日から残業手当を払うよ。1時間100万円」。しますか?
――します。
当たり前でしょ。「松本さん、あなたカルビーの会長だけど残業代払うよ。1時間10万円」。やるに決まってますよ。
もらっている給与に対して、残業手当は高いです。あんな悪しき制度を作っているから社員は使うんです。いま残業を月に数十時間している人がいたとして、明日から残業手当を1時間30円にすれば、きっと誰もやらないですよ。
――制度化してしまったがゆえの弊害ということですね。
ただ一方で、会社にとっては残業手当の金額自体は高くないのです。新しい人を雇うよりも、今いる人にたくさん働いてもらったほうが採算が合うので。まあ、そんなことやってるから、多くの日本企業はうまくいかないんだけどね。
――長年取り組んでこられたカルビーの働き方改革に関してはどうでしょう? まだできていない具体的なことはありますか?
働き方に関する社内の考え方は悪くありません。ただ、制度面から言うと、非常に進んだということはないです。僕が最も気に入っていないのが「就業規則」「就業時間」。なぜあんなものが決まっているのか。
確かに工場の就業時間は大切ですよ。工場は時間で動いているので、社員がバラバラにやって来たら困りますから。朝8時半にベルが鳴って仕事が始まり、工場の機械が動き出す。12時になったらお昼休みなので、機械も人も止まる。工場はそうやらないと。バラバラに働いてもうまくいきません。
一方、工場以外の場所で働く社員は、オフィスに何時に来て、何時に帰るというのを考える必要はないはずです。ところが、カルビーには就業時間というものが残っている。在宅勤務やリモートワークに関して、カルビーは進んでいると思いますよ。喫茶店でも図書館でも、どこで仕事をしても構わないという仕組みにしました。大事なのは成果ですから。そうした状況なので就業規則も変えてしまえばと思うのですが、これがなかなか変わりません。
もちろん、制度を一気に変えることはできないというのも分からなくはないです。社員がある程度納得して、そうしたほうが良いと思えば、1つ1つ制度を変えていけばいいと思います。
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