怪情報が飛び交っていて訳が分からなくなっている本件ですが、一足先に外務省が組織上の処分としてロシア課長毛利忠敦さんの9カ月の停職ということだけ発表になりました。

外務省ロシア課長を停職9カ月 https://jp.reuters.com/article/idJP2018060501002387

 さらに記事では「処分の理由」が伏せられているため、さらに怪情報が飛び交うわけなのですが、近い将来我ら我らの週刊文春が外務省ロシア課長毛利さんのある種のセクハラについて記事にするということで、直接のネタはそれじゃないかと言われておるわけです。しかも、その「悪質度」やら「累犯」やらいろんな話もくっついてくるので「お前、またか」みたいな話でご時節柄云々ということなのかもしれません。

 ただ、朝日新聞記者の女性が財務省事務次官の福田惇一さんと不適切な会食の果ての常習的なセクハラ問題が週刊新潮に垂れ込まれ、これについては最終的に福田さんのクビが飛んでしまい、なぜか「お前も悪い」と財務大臣の麻生太郎さんまで飛び火してみんな往生してました。それに比べれば、課長級のセクハラ一発で停職9か月ってのは「???」という量刑じゃないかとさらに憶測は広がるわけであります。

 外務省としては、日本とロシアの間での歴史的な交渉経緯を踏まえて、仮に安倍政権下で日露外交が一定の合意に向かい、先行して共同経済活動の前進でまとまるところまでは容認できたとしても、これが事実上のロシア領ロシア法の下で行われる経済活動だとする場合、領土問題でクレームを起こしている日本からすると「ロシア法下での経済活動を日露で行う(日本が資本を提供する)ということは、ここはロシア領であるということを認めるのですね」という、北方領土(クリル諸島)帰属問題ではざっくりと大きな後退を意味するわけです。まあ、他にもいろいろあるけど、故・丹波實さん以降の対ロシア外交では「成果を焦った安倍政権の外交がロシアに手玉に取られた」とも見えるし、「進展が期待できない北方領土問題に見切りをつけ実利的な日露関係の構築に安倍政権になってようやく踏み出せた」とも言えるという実に微妙なところです。

 具体的な経済活動を行う以上、玉虫色はないので、極東開発における日本のプレゼンスを確保するために領土問題をどう棚上げし、国内世論に火をつけないかが大事、というのはまあ分からなくもありません。

 敷衍するべき補助線としては、「世耕弘成さんの対露外交が思い違いの連続でロシア側の不興を買い続けている(おまけに実質的な二元外交みたいになっていて対外的にも評判が悪い)」話と、「欧州・アメリカとロシアの関係が非常に深刻な状態に悪化している中で、東アジアの経済、安全保障だけ見て日本がのほほんとロシアと前向きな外交をして成果を国内向けに喧伝していて馬鹿じゃねーのと思われている」話とが交錯します。

 グランドマップが崩壊しているのに、しょっぱい話で更迭人事するのもどうなのかという気もしますし、そういう人事をやって憶測を呼ぶぐらいなら「事実関係はこうでした」と早めに開示してしまって謝罪したほうが傷口は浅いというのが一連の #Metoo 事案でみんなが学んだ危機対処策だったんじゃなかったのか、と思うわけですが。

 事実関係は別として。


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