うきよのおはなし~江戸文学紹介ブログ~

江戸文学に少しでも興味を持つ方が増えれば良いなと。

亀が時間を操れるとは。 ~『浦島太郎』その17~

『浦島太郎』の続きだよ!

玉手箱を開けてお爺さんになっちゃった浦島さん、この後、どうなっちゃうんだろう?

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国立国会図書館デジタルコレクション - 御伽草子. 第21冊 (浦嶌太郎)

翻刻

扨(さて)うらしまはつるになり
て。こくうにとびのぼりける。
そも/\此うらしまが年(とし)
を。かめがはからひとして。
はこの中にたゝみ入に
けり。さてこそ七百年(ねん)の
よハひをたもちける。あけ
てみるなと有しを。あけ
にけるこそよしなけれ
きみにあふ
よハうらしまか
玉手(たまて)はこ
あけてくやしき

わかなミたかな
と哥(うた)にもよまれてこそ
候へ。しやう有物。いつれもな
さけをしらぬといふことな
し。いはんや人けんの身と
して。おんをミておんを知(しら)
ぬは。木石にたとへたり。情(なさけ)
ふかきふうふは。二世のち
きりと申が。寔(まことに)有がたき
事共かな。うらしまハ鶴(つる)に
なり。ほうらいのやまに
あひを◆なす

[※赤字が前回のくずし字クイズの答えです。]

【現代語表記】

扨(さて)、浦島は鶴に成りて虚空に飛び昇りける。
そもそも、この浦島が年(とし)を、亀が計らいとして、箱の中に畳み入れにけり。
さてこそ、七百年(ねん)の齢[よわい]を保ちける。
開けて見るなと有りしを、開けにけるこそ由[よし]無けれ。

「君に会う
 夜[「世」とも掛ける?]は浦島が
 玉手(たまて)箱
 開けて「夜」からの連想で「明けて」と掛ける]悔しき
 我が涙かな」

と歌(うた)にも詠まれてこそ候え。
[しょう]有る物、何れ[いずれ]も情けを知らぬという事無し。
況や[いわんや]人間の身として、恩を見て恩を知ら(しら)ぬには、木石[ぼくせき]に例えたり。
情け(なさけ)深き夫婦は、二世の契りと申すが、真に[まことに]有り難き事共かな。
浦島は鶴(つる)に成り、蓬莱の山に相を[?][「舞を」?][「相生」?][「相老」?]成す。

【ざっくり現代語訳】

さて、浦島になり、何も無い空に飛び立って行きました。

そもそも、浦島が本来重ねるはずの年齢を、が仕組んで、箱の中に封じ込めていたのでした。

だから、浦島七百年もの間、を取らずに生きることが出来たのです。

が「開けて見てはいけませぬ」と言ったのに、開けたからこんなことになっちまったのです。

「お前と会う夜は~
 玉手箱開けた浦島みたいに~
 あっという間に過ぎちゃうね~
 悔しくて溢れる涙~」
[君と会う夜は、浦島が玉手箱を開けた時のように、あっという間に時間が過ぎてしまうので、悔しくて涙が出てきます]

というにもなったことは、みなさんもご存知ですよね。

生きとし生けるものは全て、「情け」[思いやりの心]ということを知っています。

ましてや、人間でありながら、恩知らずな者は、まるで木や石のように「情け」がないと言われます。
なにしろ、でも恩返しをするんですから。

「情け」が深い夫婦は、本当に素晴らしいことに、来世[「あの世」?]までも契りを重ねると言います。

になった浦島蓬莱山に舞い降りて、と再会しました。[?]

【解説】

最後の行の「あひをなす」の意味がよく分からないのですが、たぶん、「相生・相老[あいおい]の最後の「い」が版木の痛みか何かで消えてしまったのではないかと思われます。

また、「あ」ではなく「ま」で、「舞[まい]と読む可能性も考慮してしてみました。

「情け」「恩」を知ってしかるべき
浦島さんは、再びと過ごす道を選んだのではないかと。

「蓬莱山」仙人が住むという中国の想像上の山です。

日本では「富士山」「熊野山」「熱田神宮などの異称として用いられることもあります。

唐突に「蓬莱山」が出てくるように感じますが、当時のお祝いの席で用いられた蓬莱台蓬莱山をかたどった台の上に、鶴亀松竹梅を飾ったもの]というものがあるように、蓬莱山鶴亀はセットと考えられていたようです。

ひょっとしたら、浦島の墓を教えたお爺さんは、蓬莱山の仙人の化身かもしれませんね。

さて、ようやくこのページで玉手箱と言う言葉が出てきましたが、何と、玉手箱の中には、浦島太郎時間が封じ込められていたいう!

封じ込められていた浦島太郎時間が一気に解放されてしまったので、浦島太郎老人になってしまったというわけです。

七百年が一気に開放されてしまったので、老人なるどころか、更に肉体も朽ち果ててしまったので、に化身したということでしょう。

ちょっとファンタジーと言うかSFチックですね。

浦島さん時間を閉じ込めているので、当然、浦島さん一緒に置いとかなければ、色々と不都合が生じるのでしょうから、玉手箱浦島さんに渡したのです。

ほら、別れ際ののセリフを思い出してください。

「片時も見えさせ給わぬさえ、「とやあらん、かくやあらん」と心を尽くし申せしに、」
(「ちょっと姿が見えないだけで、「どうしたのかしらん?」とソワソワする程でしたのに、」)

ずっと浦島さん玉手箱が離れないように注意してたんですよ!

それにしても、自分の正体だと明かしたぐらいなんですから、玉手箱秘密もちゃんと明かせば良かったのに!

悲劇の原因は、要するに、亀さん説明不足!(笑)

でも、こんな能力を持っているとは、やっぱりタダの亀じゃないですよね。

が別れをあんなに悲しんだのは、浦島性格的に絶対を開けちゃうと分かってたからでしょうか?

というか、も一緒に里帰りに付き合ってあげればよかったんじゃね?

この、「玉手箱に浦島太郎の時間を封じ込めた」という一番肝心な部分が、今の浦島太郎では何故か省略されてしまっているので、今ではお土産玉手箱を開けたら、何故かお爺さんになってしまうという、意味不明理不尽な終わり方になっているんですよねえ。

次回予告とくずし字クイズ

次回、感動(?)の最終回です!
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ちょっとだけヒントっ!
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三つ目コーナー

実は僕も時間を操れるんだ。

マジ?

うん、夜、目を閉じたら、一瞬で朝になるんだ!

それは熟睡と言うものだ。

  

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