【ロンドン=小滝麻理子】英国のクラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は4日、日立製作所が英国で進める原子力発電所の建設計画を継続することで日立側と合意したと発表した。クラーク氏は事業推進に向けて「重要な次の段階に入った」と述べ、原発の開発会社への出資を検討すると表明した。
日立は英中部アングルシー島で2基の原発の新設計画を進めており、英政府と資金負担などの協議を続けていた。クラーク氏は同日、英議会で協議の進捗を報告した。
クラーク氏は「英国が低炭素経済へと移行するなかで原子力は重要なエネルギーだ」と述べ、日立の新たな事業が地元経済に多くの雇用を生み出すとも指摘。その上で、「英国は日立や日本政府とともに、(原発の開発会社に)直接出資することを検討している」と明言した。具体的な出資比率などについては明らかにしなかった。
一方、クラーク氏は「(最終的な)決定には至っていない」とも強調し、「交渉の主眼は消費者にいかに低コストの電力を提供するかだ」と述べた。英政府による電力の買い取り価格の水準を巡っては英政府と日立の間になお隔たりがあり、今後の焦点になる。
英政府はフランスや中国が主導する英南西部の原発事業に高い買い取り保証をつけたことについて、電力料金が跳ね上がりかねないとして強い批判を受けている。英国内の既存発電所の老朽化が進む中で、財政負担と難しいバランスを求められている。
英国はサッチャー政権以降、エネルギー産業の民営化を率先して進めてきた。英政府による日立の原発事業への出資が実現すれば、英国のエネルギー政策にとっても大きな転換点となる。