介護報酬の身体拘束ペナルティー厳格化 施設の指針作成 期限迫る

2018年0604 福祉新聞編集部
安誠園の委員会の様子。左は岡芹統括施設長

 2018年4月の介護報酬改定で、身体拘束に関する減算(対象は特別養護老人ホーム、老人保健施設など)の要件が厳しくなり、減算幅も10%に上がった。減算が適用されると経営に大きな打撃となるため、各施設では適正化のための指針作成など対応が求められている。

 

 

 現行では、身体拘束は緊急やむを得ない場合のみ認められる。本人や他人の生命・身体を危険にさらし(切迫性)、他に介護方法がなく(非代替性)、一時的に行う(一時性)ことを確認し、慎重な手続きをとり記録も残す。

 

 これまでの身体拘束減算は、記録をとるなどの要件を満たさず身体拘束をした場合のみ適用されたが、今回の報酬改定で、身体拘束をしていなくても要件を満たさないと減算となる。要件には新たに、身体的拘束適正化のための指針を作成し、委員会を3カ月に1度開き、職員研修を年2回以上行うことなどが加えられた。

 

 さらに減算幅は10%に上がった。1度減算が適用されると、最短でも改善状況報告を提出して確認されるまでの3カ月間は続くため、事業収入に大きく影響する。

 

 厚生労働省は減算の適用について7月からとしており、6月までに指針を作成して委員会を開催し、研修体系を整備しておくことが求められる。
 埼玉県の特別養護老人ホーム安誠園(社会福祉法人安誠福祉会)は月に1度、身体拘束に関する委員会を開いている。関連する内容もあるため、事故防止委員会や感染症予防委員会も併せて行う。

 

 安誠園では、認知症の利用者数人に、経管栄養のチューブを外さないよう手指にミトンをつけたり、車いすから立とうとして転倒しないようベルトをつけたりしている。「身体拘束ゼロへの手引き」(01年3月、厚労省)を基に作成した要領(指針)にのっとり、「切迫性」「非代替性」「一時性」を徹底する。

 

 法人では他に複数の施設を運営しており、施設ごとに要領があり、委員会も開いている。委員会で話し合った内容は回覧で職員に周知する。また職員研修は各施設で行うほか、法人全体でも新人研修や職種別研修をしている。

 

 今回の身体拘束減算の厳格化は、介護事業所の職員による虐待が増加していることが背景の一つにある。

 

 安誠園の岡芹正美・統括施設長は「不適切な介護から虐待につながる。身体拘束が起きやすい認知症の理解を深めることを含め、しっかり対応しなければいけない」としている。

 

 

 

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