ナマケモノの日々

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【映画レビュー】万引き家族は現代のファンタジー【こんな人におすすめ】

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21年ぶりの快挙!パルムドール受賞作として話題の【万引き家族】本来は6月8日公開ですが、一足お先に先行上映で観てきました!

映画レビューを書くのは初めてで、感じたことをわたしなりの言葉で表現するのは難しすぎますが、それでも書きたくなるくらい素晴らしい映画でした。

万引き家族】のあらすじはこんなかんじ

東京の下町に暮らす、日雇い仕事の父・柴田治とクリーニング店で働く治の妻・信代、二人の息子・祥太、風俗店で働く信代の妹・亜紀、そして家主である祖母・初枝の5人家族。家族の収益源は初枝の年金と、治と祥太が親子で手がける「万引き」。5人は社会の底辺で暮らしながらも家族には笑顔が絶えなかった。

冬のある日、近所の団地の廊下にひとりの幼い女の子が震えているのを見つけ、見かねた治が連れて帰る。体中に傷跡のある彼女「ゆり」の境遇をおもんばかり、「ゆり」は柴田家の6人目の家族となった。

しかし、柴田家にある事件が起こり、家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれの秘密と願いが次々に明らかになっていく。

 Wikipediaより引用

一見ちょっと重たい内容です。貧困や虐待など社会問題が浮き彫りになっており決して明るいストーリーではありません。

セリフも自然で日常会話のようにとてもリアル、汚くてごちゃごちゃした室内の風景もとてもリアルです。序盤から中盤までは、そんなリアルな家族の日常が淡々と進みます。けれどこの序盤がなければ後半に繋がらない、一つ一つが大切なシーンなんですがね。

現代社会の闇やリアルさを描きながらも、暴力や狂気に焦点を当てたリアルではなく、愛に焦点を当てたファンタジーチックな作品だなと感じました。

 

こんな作品が好きな人におすすめ

  

おすすめした作品にも言えることですが、いわゆるハッピーエンドではありません。ハッピーエンドって人生の中では本当は無いはずです。死1つとっても、悲しいと感じるのか、素晴らしい人生だったと感じるのか。本人にとってどうなのか、相手にとってどうなのか。どこからどこまでを切り取るのかが、ひとつの物語だと思います。押しつけられたハッピーエンドではなく、見る人によって異なる感想を持つ、もやもやと考えてしまう読後感その当りも含めて楽しめる方におすすめしたい映画です。

 

俳優陣の震える演技を観たい方に

見えない裏側の思いや願い、複雑に入り交じった不安や悲しみなどを演じきる役者陣の巧みさを観たい人にもおすすめです。

全体を通し分かりやすい表現ではなく抑えた表現で進んでいくため、少し分かりづらい部分もありますが、「ああ、このシーンはここに繋がっているんだ、この表情はこうだったんだ」と観た後に思い返しながら、少なくとも2回は観たくなります。

カンヌでも評価されたという、安藤サクラさんの後半の泣きの演技はもちろん、子役達の演技もみずみずしいが為に余計に胸を打ちます。松岡茉優さんは体を張っている驚きと、視線の鋭さが印象に残っていてかなりイメージ変わりました。そして安定のリリーフランキーさんと樹木希林さん、突如出てくる池松壮亮さん、後半に出てくる高良健吾さんと池脇千鶴さんは濃すぎて蛇足かなとも思いますが。日本映画好きにはたまらない豪華な配役です。

 

愛する家族を持つ人にもおすすめしたい

家族って、不思議な集合体です。他人同士が共に生活し、他人同士の親も含め繋がりができ、子どもを持ったりすることで関係性が変化していきます。

この作品の中では、中盤以降1つの事件をきっかけに家族がバラバラになってしまいます。ですが、バラバラになってしまうきっかけも結果も含め、その根底にあるのは家族への愛情。6人目の家族を迎えて変化した関係性が、バラバラになったことで皮肉にも本当の愛情となって昇華されていきます。

一見悲しい別れのようでもありますが、それぞれの成長とその根底にある家族で過ごした日々、それがあるならきっと大丈夫。この結末はそういった家族愛を感じる結末だと、信じたい。ただし直接的な救いがあるわけではないので、見終わった際にはどう受け取るか、そこには違いがあると思います。

 

万引き家族】は現代社会の隙間にある家族愛ファンタジー

リアルな表現も多分にありますが、やはりこの作品はファンタジーだと思います。なんせ登場人物の誰もが貧困底辺なのに根が優しくって、愛を求めているんです。確かに、軽犯罪で生計を立ててはいますが、彼らにとっては必要悪のようなものです。

リアルで考えると実際は切羽詰まった人間ってこうじゃないと思うんです。もっと人を陥れたり、裏切ったり…

同じリリーフランキーさんの出演映画【凶悪】や、園子温監督の【冷たい熱帯魚】、なんかは人間の狂気や欲望の表現がとてもリアルだと思います。この2つの作品、わたしは好きなんですが、こういった作品が好きな人にとっては、生ぬるく感じるかもしれません。