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【ゴルフ】

市原弘大が大逆転で初V 元天才少年が…プロ18年目

2018年6月4日 紙面から

ツアー初勝利を挙げ祝福される市原=宍戸ヒルズCCで

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◇日本ツアー選手権 森ビル杯<最終日>

 ▽3日、茨城県笠間市、宍戸ヒルズCC西C(7384ヤード、パー71)▽晴れ、27・6度、南南東2・3メートル▽賞金総額1億5000万円、優勝3000万円▽69選手▽観衆6184人

 首位に5打差の5位で出た市原弘大(36)が、劇的な大逆転でツアー初優勝を日本タイトルで飾った。1打差を追う最終18番でチップインバーディーを沈め、通算12アンダーで差し切った。プロ18年目、計170戦目。「まさか。勝っちゃった」という無欲の戴冠だった。首位で出た時松隆光(24)=筑紫ケ丘GC=は17、18番で連続ボギーをたたいて、通算11アンダーで2位だった。

 必死だった。18番パー4、グリーン奥からの3打目。「しっかりパーを取ろう」。サンドウエッジから放たれた球はラインに乗り、ゆっくりと転がっていく。「入るの? 入っちゃうの?」。カップの乾いた音が鳴り、ギャラリーは総立ち。市原は上気した顔で喜んだ。

 「本当に入るとは思っていなかったので、僕が一番ビックリしている」

 土壇場のチップインで首位の時松に追いついた。なのに「集中していて、周りのスコアは全然見ていなかった」と、スコアを提出して帰ろうとした。係員から「トップと並んでますよ」と伝えられ、「まさか。まさかね」と驚いたまま、プレーオフに備えて練習場へ向かった。

 十数分後。時松がパーパットを外した。“吉報”が届いても、市原は「えっ。本当に勝ったの?」。信じられなかった。待ち望んだはずの初優勝を、なぜか受け止められなかった。先輩の谷口徹、武藤俊憲が喜んで駆けつけると、実感が込み上げ、涙がこぼれた。

 「思いがけない優勝。ビックリ優勝。感激というより、勝っちゃった。言葉もないです」

 2001年、25個のジュニアタイトルを引っ提げ鳴り物入りでプロ転向しながら、パターイップスや腰椎ヘルニアに苦しめられ「何度もやめようと思った」。アジアツアーに出向いたり、欧州ツアーの予選会を受験したり、「ゴルフを通じて、世界を見て楽しむ。なんだかんだ、よくやってるな」。あるがままの現実を受け入れ、亀の歩みのごとく「ゆっくり、ゆっくりと」重ねてきた努力が、大舞台で大輪の花を咲かせた。

 5年シードに加え、全英オープン&世界選手権シリーズの出場権を獲得。「優勝者としての責任がある。これからが大変ですね」。元天才少年は、優しい笑みを浮かべていた。 (松岡祐司)

<市原弘大(いちはら・こうだい)> 1982(昭和57)年5月29日生まれ、東京都出身の36歳。171センチ、78キロ。3歳からゴルフを始め、埼玉平成高時代に日本ジュニア優勝。2001年、18歳でプロ転向後、腰の故障などで低迷。09年に下部ツアーで賞金ランク5位、アジアツアーで同13位。10年に日本ツアーで同58位に入り、初の賞金シード権獲得。17年賞金ランク88位で2度目のシード権喪失。17年末のツアー最終予選会(QT)10位。

 

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