何をもってして「ライター」と呼ぶのか。のっけから難しいところです。
当然、その起源は火打石にまで遡るわけですが、持ち運び可能な着火器具という意味では、
例えば日本では安永元年(1772年)に平賀源内が、火打石と鉄とゼンマイによる刻み煙草用の着火器具を考案しています。
1906年、オーストリアの科学者Carl Auer von Welsbachによってオーエルメタルが発見されます。
(鉄とセリウムの合金らしいですが、マグネシウムとセリウムの合金、という記述もあります)
これが現在のライター用発火石(フリント)です。
一般的には火打石=フリントなのですが、厳密には火打石は、チャートと呼ばれる石英等の自然石です。
火打石より強力なスパークと合金ゆえの加工の容易さから、フリントは火打石にとって代わりました。
旧来のライターは、ストライカーと呼ばれる形式の、いわゆるオイルマッチが主体でしたが、
フリントの発見以降、ライターは急速に進歩していきます。
1910年代初頭には既に、誰がみてもライターと思える機構のPATENTが登録されています。
1946年、フランスのFlaminaire社により高圧の液体ガスを燃料に使用するガスライターが発明されました。
この発明以降、ガスライターが主体になっていきます。
ここではライター黎明期~中期の、いわゆるオイルライターを対象としています。
RONSON
1886年にLouis V. Aronsonがニューヨークに設立したthe Art Metal WorksがRONSONの起源です。
当時は金属装飾やアクセサリーを手がけていたようです。
その後ニュージャージーに移転し、1920年にRonson、1945年にRonson Art MetalWorks,Inc、1954年にRonson Corporationと社名変更を繰り返したようです。
1906年のオーエルメタル発明の後、1913年にRONSONはwonderliterと呼ばれる方式の着火器具を発売します。いわゆるストライカーです。
あまり評判は良くなかったと聞きますが、1940年代に入ってもストライカーは販売されていますから、当時にも洒落者は多かったのでしょう(笑)
1926年、Ronsonはワンハンドオートマティックライターに関するPATENTを取得します。
そして翌1927、世界初のワンハンドオートマティックライター"Banjo"が開発されます。
このPATENTについてはかなりの係争があったらしく、その中の1社がEVANSでした。
最終的にEVANSがRONSONへロイヤリティを払う事で解決したようです。
このPATENTが切れるまでの間、多くのメーカーはオートマティックライターを製造する事ができませんでした。
1928年にStandard、1929年にはその小型版であるPrincess、1947年にはAdonisを発売しています。
RONSONは今も米国でライターを生産しています。
ですが、現在日本国内で販売されているRONSONは、全てウィンドミル社によるライセンス生産品です。
参考:http://members.tripod.com/~Transporter/
THORENS
1883年、Hermann Thorensによりスイスのサン・クロワにて創業。当初はオルゴールメーカーだったようです。
エジソンの蓄音機に使う録音用シリンダーの生産等を行っていました。
一説には世界最初のライターメーカーという話もありますが、それを裏付ける資料は残っていません。というか多分嘘です(笑)
1913年にライター製造を開始、1919年にはシングルクロウのPATENTを取得したようです。ライターの生産は1964年まで続きます。
数社との合併、離散を繰り返し、現在も高級オーディオメーカーとして存続しています。
Alfred Dunhill
1893年、Alfred DunhillによりDunhill Mortoritiesが設立。今でいうところの自動車用品メーカーでしょうか。
1907年にロンドンで煙草専門店をオープンし、1921年より英国王室御用達、1923年にライターの販売を開始。
パイプよりだいぶ遅れてライターに取り組んだようです。
1932年、CartierがTALLBOYのPATENTを取得。このTALLBOYをDunhillが気に入り、CartierよりPATENTを購入。
ROLLALITEへと続く系譜の始まりとなりました。
スイス生産分はLaNationale社のライセンス品らしいです。
こーしてまとめてみると、なんか某巨大ソフトウェア企業みたいな印象(笑)
Progress Maschinen GmbH (H.W./HAHWAY)
1912年、G.F.Hofmann、N.Wildによりミュンヘンに設立。ですが実際にはそれ以前から活動していたようです。
二人の名前の頭文字から"H.W."のロゴを採用、さらに"H.W."のドイツ語読み「ハー・ヴェー」を英語表記にもじった
"HAHWAY"のロゴの為、本来の社名で呼ばれる事は少ないです。
よくわからないメーカーの1つ。
EVANS
1918年、Alfred F.Reillyら3名が、The Evans Case Companyをマサチューセッツに設立。
1922年から操業を開始したようです。
ライターのみならず、コスメ用品、バッグ、宝飾品といった商品の製造販売を行っていました。
女性を対象として徹底的なマーケティングを行った会社で、ライターも非常に女性的なデザインになっています。
その一方で、1932年にはオートマティックライターを開発するなど、技術力も優れていましたが、
オートマティックライターの開発で一歩先んじたRONSONとの特許係争に突入、1950年代までRONSONへロイヤリティを払い続ける羽目になります。
その為、この時期のEVANSライターには、RONSONのPATENTが刻印されています。
その独特のセンスと華やかな装飾により、大ヒットとなるのですが、ガスライターの台頭により衰退していきます。
1960年代に入ると、他社への経営譲渡、日本のプリンスライターとの提携、と生き残りの道を模索していきますが、1971年にライターの製造を終了しました。
ですが現在もEVANS正規のリペアセンターが稼動しているようです。
Zippo
ほんとはZippoは除外する予定だったのですが・・・
まぁ、究極のカーシュミレーションゲームを謳いつつもフェ○ーリやポ○シェが入ってない、かつての某ゲームみたくなるのもアレなので(笑)
Zippoについては、ここでは軽~く触れるに留めます。詳しいサイトが沢山あるので、そちらをご覧ください。
1932年、George G. BlaisdellがZippo Manufacturing Companyを設立。
あまりにも有名な台詞「It Works!」を目標に開発され、1933年に発売されました。
ちなみに10年ほど前まではZippo社自身が「Zippoの発売は1932年」と言い切り、アニバーサリーモデルとかも売ってました。いい加減ですね(笑)
メンテナンス性、耐久性、操作性、着火率のいずれも優秀。
それに加え、ライター最大の弱点「風」にも強く、永久保証制度もついてるという、まさに「It Works!」を体現したライターです。
よく「ジッポ」と呼ばれますが、正しくは「ジッポー」。
表記時も「Zippo」もしくは「ZiPPO」と表記すべきでしょう・・・マニア以外にはどうでもよい事ですね(笑)
レギュラーとスリムの2種のみ。
それぞれのボディタイプ別に、トップの形状・表面仕上げ・表面装飾の種類の組み合わせで型番が振られている。
ビンテージと言われる物としては、アウターヒンジ、3バレル、4バレル、ブラッククラックル等があるが、基本構造は同じ。
なのでマニアでもない限り、新品を使うべきかも。
が、あえて古い物を入手して「It Works!」を実感するのも良いかもしれない(笑)