(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年6月1日付)
レックス・ティラーソン氏は気の毒な米国務長官だった。そして、これまでに得られた証拠を見る限り、その後任のマイク・ポンペオ氏は、米国のグローバルな権益の推進役として無思慮な人物であることが判明するだろう。
ドナルド・トランプ大統領の自己中心的な気まぐれがここに加われば、米国外交はジ・エンドだ。
ティラーソン氏は国政のことをほとんど何も知らなかった。ずっと石油業界に身を置きながら、地政学的な時流の理解を授からなかった。
同氏の約束した国務省改革は、一流外交官の大量流出と化してしまった。
トランプ氏からも信任を得られずじまいだった。ときおり大統領の暴走にブレーキをかけられたが、ホワイトハウス発のツイッターの嵐に傷つけられることの方が多かった。
個人的な関係で見るなら、ポンペオ氏の方がトランプ氏に近い。ひょっとしたらそれは、ポンペオ氏が大統領の短所を非常に注意深くまねているからかもしれない。
イランの核開発に対するアプローチでポンペオ氏があらわにしたように、国務長官と大統領は、米国ならいつでもどこでも好きなことができると思い込んでいる。
そして両者とも、外交におけるすべての計算の核心にある「それで、次はどうなる?」という問いを立てない。ましてや、それに答えることなど決してない。