争いは
仮の世の 仮の宿りの 仮垣に なわばりをして 長短とは 兄弟が 田を分け取りの 争いは たわけものとや 人のいうらん 仮の世に 仮の宿りの 垣に 縄張りをして 長短かとは あらそいの 握り拳も 開くれば 可愛いと撫でる 同じ手の先 あらそいは げに山びこの こだまかや わが口故に 先もかしまし あらそわぬ 風に柳の 糸にこそ 堪忍袋 ぬふべかりけれ ありという 人に地獄は なかりけり なしと思える 人にこそあれ 気もつかず 気もつかず 目にも見えねど 知らぬ間に ほこりのたまる 袂なりけり なき物を 仕出す宝の 手を持ちて ただおく人ぞ 愚かなりけり 水壺の 水はいつでも 清けれど わが不精から ためる水垢 夜遊びや 朝寝昼寝に 遊山好き 引っ込み思案 油断不根気 悪いとは 知りつつ渡る ままの川 流れて淵に 身を沈めけり 借りるときは 頭の上に いただけど 返さぬ傘は 足下にあり 事足れば たることを 知るこころこそ たから舟 世をやすやすと 渡るなりけり 事足れば 足るに任せて 事たらず 足らせ事足る 身こそ安けれ 乏しかり 時を忘れて 食好み このみの多き 秋の山猿 道ならぬ 物をほしがる 山猿の 心からとや 縁に沈まん 千畳の 座敷持ちても なにかせん たった寝床は たたみ一枚 千両箱 富士の山ほど積んだとて 冥土の土産に なりはすまいぞ 身を思う 心は身をば 苦しむる 身を思わば 身こそ安けれ 身のほどを 知れと教えし 伊勢の神 今もわら屋の 宮にまします 身を知らば 人の咎にも 思わぬに 恨み顔にも ぬるる袖かな 思うこと ひとつかなえば またひとつ かなわぬことの あるが世の中 事足れば 足にも慣れて 何くれと 足がなかにも 猶嘆くかな 足る事を 知りからげして 身を軽く 欲の薄きに 福と寿はあり 破れたる 衣を着ても 足ることを 知ればつづれの 錦なりけり 壁に耳 悪しきこと 人は知らぬと 思えども 天に口あり 壁に耳あり 誰知ると 思う心の はかなさよ 天知る地知る 人の知るなり 壁に耳 石のものいう 世の中に 人知れずとて 悪しきことすな いつとなく 見知る聞き知る 蚤の息 天に通うと いう例えあり 壁に耳 石のものいう 世なりけり 露ちりばかり 盗みはしすな 人知れず 暗きところで なす業も 世に白波の 立たでおくべき 垣壁も 人の目口と 思いつつ 見聞かんことを 語りはしすな 知るまいと 思う心の 愚かさよ 月日の眼 あきらかに照る りょうけんし いかにかくすと 思へども ただよく人の しるは世の中 あこがれて 出てゆく後の 柴の戸に 月こそやがて 入り代わるらむ なせばなる なせばなる なさねばならぬ なにごとも 成らぬは人の なさぬなりけり 一筋に 思い射る矢の 矢先には 堅くと見ゆる ものなかりけり 虎とみて 石にたつ矢も あるものを なぞか思いの 通らざるべき おしどりの みなるるほどは つれなきを 下苦しとは 知るらぬや人 見ればただ 何の苦もなき 水鳥の 足に暇なき 我が思いかな 世にあるを 思えば人の しもべかな 上に使われ 下に使われ 雨霧に うたるればこそ 紅葉葉の 錦を飾る 秋はありけれ 井戸掘りて 今一尺で 出る水を 掘らずに出ず という人ぞうき 憂きことの なおこの上に つもれかし かぎりある身の 力ためさん 惜しまれて 玉となる身は いさぎよし 瓦とともに 世にあらんより 思うままに ならで逆目に 立つ板は おのが鉋に 錆のあるゆえ 重くとも 我が荷は人に 譲るまじ 担うにつけて 荷は軽くなる 今日限り 今日限り 今日を限りの 命ぞと 思いて今日の 勤めをばせよ 苦と楽の 花咲く木々を よくみれば 心の植えし 実の生えしなり 小石をも よけてそろそろ はびこりて 木の根はついに 岩をわるなり 千万石 積み重ねたる 米の山も ひとつひとつの 俵よりなる 千里ゆく 道もはじめは 一歩み 低きよりして 高く登りつ 丹精は 誰知らずとも 自ずから 秋の実りの まさる数々 長命を 祈らぬ人は なかりけり まこといのらば 朝起きをせよ なるように なろうというは 捨て言葉 ただなすように なると思えよ 花見とは 稲の花見が 花見なり 吉野初瀬は そのうえのこと 身にもてる 玉と雖も 磨かずば あたら光の 世には知られじ 身にもてる 心の玉の くもりなば ふみ読むわざも 甲斐やなからん 実るほど 稲はうつむく 人もまた 高き身とても 奢らぬぞよき 昔蒔きし 木の実大木と なりにけり 今蒔く木の実 後の大木ぞ 道という いのちより 名こそ惜しけれ もののふの 道にかふべき 道しなければ 思いみれば この身の外に 道もなし 身をまもるこそ 道をしるなれ 聞きてよし 言えばなおよし 行なえば いとも妙なる 人の道かな 心をば 心にさとす 心こそ まことに道を なすといはまし ともすれば あらぬ方にと 踏み迷う 教え難きは 人の道なり 人心 悪しき道には 入りやすし 朱に交わりて 赤恥をかく 道という 言葉に迷う ことなかれ 朝夕おのが なす業と知れ 見渡せば 果てしも知れぬ 荒海も わたらば渡る 道はありけり 闇の夜も 心の月の 出でぬれば いづこへ行くも 道は迷わず 梁伝う 鼠の道も 道なれど まことの道ぞ 人の行く道 あみの糸 一つすじめの 違うゆえ 乱れにけりな 人の世の中 思いみよ 暁の 寝覚めになりと 思いみよ 日々に三たびは 省みずとも 奢ったり 遊んだりした 仕返しに 難儀な年の 尻がくるなり 釈迦もまた あみだも元は 人ぞかし われもかたちは 人にあらずや 人のただ よかれと思う いさめごと 耳に入らぬぞ 愚かなりける 人我に 辛きも人を とがめずて 我が身の悪き 影とこそ知れ 道の辺の 草にも花は 咲くものを 人のみあだに 生まれやはする 若きとき 学ばぬ悔いを かみしめる 奥歯なきまで 身は老いにけり 我が宿に やしないおける 犬だにも うち罵りて 責めじとぞ思う 我が善きに 人の悪しきは なきものぞ 人の悪しきは 我が悪しきなり 身をすててこそ 山川の 末にながるる とちがらも 身をすててこそ 浮かぶ瀬もあれ 河水に 流れ流るる ちから藻も 身を捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ みる人も みらるる人も うたたねの 夢幻の 浮き世ならずや 憂きことは 世にふるほどの 習いぞと 思いも知らで なになげくらん うつせみの もぬけのからと 身はなりて 我もあらばこそ ものおしはせめ 夏蝉の もぬけて果てる 身となれば 何か残りて ものおじをせん なぜさすり 大事にするも 手あぶりの つめとうならぬ うちでこそあれ 顔くせを 常にたしなめ とがなくて 世ににくまれて なににかはせん 木に竹の 無理はいうとも そこが親 いわせて桶屋 たが笑うとも 手を打てば 下女は茶を汲む 鳥はたつ 魚寄り来たる 猿沢の池 手を打てば 鯉は寄り来る 鹿は逃ぐ 下女は茶を汲む 猿沢の池 惜しむとて 惜しまれぬべき この世かは 身を捨ててこそ 身をも助けめ 憂きことは 哀れとも うしともいわじ 陽炎の あるかなきかに 消ゆる世なれば いづくにも 心とまらば すみかえよ ながらへぬれば 元のふるさと 憂きことは 世にふるほどの ならいぞと おもいも知らで 何嘆くらん 憂きことも 知らで千年も 経る田鶴の 清き心に ならへ世の人 鴬が 法華経を説くと いうならば 雀は忠忠 烏は孝孝 美しき 花に良き実は なきものぞ 花を思わず 実の人となれ おしなべて 心ひとつと 知りぬれば 浮世にめぐる 道も迷わず 思えただ 満ればやがて 欠く月の 十六夜の空や 人の世の中 聞きしより 思いしよりも 見しよりも のぼりて高き 山は富士が嶺 聞けや人 忠とあしたに 雀の子 孝と夕べに 鴉鳴くなり 暗きより 暗き道にぞ 入りぬべし 遥かに照らせ 山の端の月 ここもうし かしこもうしと 嫌うなよ いずこも同じ 秋の夕暮れ 心より よこしまに降る 雨はなし 風こそ夜半の 窓を打つらめ 帰らぬ昨日 心から 流るる水を せきとめて おのれと縁に 身を沈めけり 咲く花を 歌によむ人 ほむる人 さかせる花の もとを知れかし 咲くもよし 散るも吉野の 山桜 ただ春風に 任せてぞみん 桜花 けふこそかくは におふらめ 頼みがたきは 明日の夜のこと 差し当たる 今日のことのみ 思えただ 帰らぬ昨日 しらぬ明日の日 三度炊く 飯さえこはし 柔らかし 思うままには ならぬ世の中 死ぬるのみ 一大事かは 人はただ 生ける間ぞ 一大事なる 年を経て 浮き世の橋を 見かへれば さても危うく 渡りけるかな 万能に 足りてももしや 一心が 足らぬと役に 立たぬ世の中 人は皆 持ちつ持たれつ 世をわたる 一人離れて 保つべしやは 人皆の 選ぶが上に 選びたる 玉にも傷の ある世なり 人をのみ 渡し渡して おのが身は 岸に上がらぬ 渡しもりかな ぶらぶらと 舟と水と 仲良くてこそ 世を渡れ 心の荒き 浪風ぞ憂き ぶらぶらと 暮らすようでも ひょうたんは 胸のあたりに 締めくくりあり 水車 みずから臼の みずからは することも知らで 米やしらげん 世の中に 身のとりどころ なかりきと いわれんことや 無念ならまし 世の中は 兎と亀の かけくらべ はやいからこそ おそくなるなれ 世の中は かくぞありけり 猿の手の 左のぶれば 右は短し 世の中は ふくべの尻で 鯰の尾 おすが如くに わたるべきなり 世の中は 何をいまはの 苔むしろ ただ働くに しくものぞなき 世の中は 回り合わせば 擂鉢の 甘き日もあり 辛き日もあり 世の中は 月に村雲 花に風 思うにわかれ 思わぬに逢う わが性の 人にかくれて 知られずば たかまのはらに 立ち出でてみよ 悪いこと 人は知らぬと 思うなよ 天に口あり 壁に耳あり すまば澄め にごらば濁れ 月影の 宿らぬ水の あらばこそあれ 我が身だに 我がままならぬ 世の中に 思うままには ならぬ世の中 天地と 分かれし中の 人なれば 下を恵みて 上をうやまへ 世の中は 人の上のみゆかしけれ うらやむわれも うらやまれつつ 這えば立て 誰もみな こころは父の 形見なり はずかしめなよ 己がこころを 誰もみな からだは母の 形見なり きずつけなよ 己がからだに 世の中に 思いやれども 子を恋うる 思いにまさる 思いなきかな 思いやれ 使うも人の 思い子ぞ わが思い子に 思いくらべて 花ならば またくる春も 咲きぬべし 散りし吾が子は 帰らざりけり 這えば立て 立てば歩めの 親心 吾が身に積もる 老いを忘れて いつまでも あると思うな 親と金 ないと思うな 運と災難 いつまでも 親の目からは 子供なり 子供心に なすが孝行 芋を見よ 子に栄えよと 親やせて えぐうなったり 甘うなったり おのが子の 巣立ち誘いて 野の雲雀 手もおよぶべき 空にてぞ鳴く 親の子を 思うほどには 子も親を 思うて親に つくせ子の道 孝行を したい頃には 親はなし 孝のしどきは 今とこそ知れ 孝行を 肌身こころに はなさずば いづくへゆくも 怪我はあるまじ たらちねの 心の闇を 知るものは 子を思うときの 涙なりけり 父母の恩 山より高く 底深き うみの親ほど 尊きはなし はかなしや はかなしや 朝見し人の 面影の 立つは煙の 夕暮れの雲 これもみよ 満つればやがて 欠く月の いざよう空や 人の世の中 咲かざれば 桜を人の 折らましや さくらのあだは 桜なりけり むりなりと むりなりと 思いながらも いいかかる 性を性にと するは人かは 成功を 急げば無理の 出るものぞ 無理のないよう 無理のないよう 思うべし 人はすりこぎ 身は杓子 思いあわぬは われゆがむなり 姑めの 杓子当りが ひどければ 嫁ごの足が すりこぎとなる 何事も 時ぞと思え 夏来ては 錦にまさる 麻のさ衣 名は末代の 下駄足駄 刻みかえれば 釈迦阿弥陀 かわればかわる ものにぞありける 聖人と いうは誰かと 思いしに おらが隣の 丘のことなり おもうべき ものは身よりも 名なりけり 名は末代の 人の世の中 油断こそ 油断より 小事大事に なるものぞ こころをつけよ 事の初めに ゆだんすな いたずらものの 我が心 日々に直して よく使うべし 油断こそ 大敵なりと心得て 堅固に守れ おのが心を ゆだんすな 身は鴛鴬の 仲なりと 淵瀬にかかる 人の心ぞ ゆだんすな 比翼連理の 仲なりと 淵瀬に変わる 人の世の中 甘いかと 思えば渋が またかえり 油断をすれば 恥の柿の実 大石に つまづくことは なしとても 小石につまづく ことな忘れそ 折りえても 心許すな 山桜 さそうあらしの 吹きもこそすれ 心せよ 蛍ほどなる 煙草の火 心ゆるせば 早鐘の音 小敵よ 弱き敵よと 油断すな あなどる故に 負けをこそとれ 束の間も 油断をなすな 一時が 千里の違いと なると思いて 夏草の おのが時とや しげるらん 霜にもあはむ 秋も思わで 用心の 良いも悪いも その家の 主ひとりの 了見にあり 世渡りは 浪の上いく 舟なれや 追手よきとて 心ゆるすな わざわいの 門口なれば 油断なく 心の内の 慎みをせよ 欲深き どんよくの 心を種に 植えおきし こがねの花は 散りやすきなり 落ちて行く 奈落の底を 覗き見ん いかほど欲の 深き穴ぞと おのが身の 主人を知らで 欲という いたづらものに まかすあぶなさ 欲深き 人の心と 降る雪は 積もるにつけて 道を忘るる 兄弟の 中も互いに 敵となる 欲は激しき 剣なりけり 欲深き 人の心と 降る雪は 積もるにつけて 道を離るる おそるべし 欲のほのほは 激しくて 我が身も家も 人も焼くなり 物事の 一つかなえば また二つ 三つ四つ五つ むづかしの世や 毒多き 毒の中にも 気の毒は なにより毒な ものでこそあれ 世の毒は 口から入れど 気の毒は 目から鼻から 耳からも入る 急がずば 急がずば 濡れざらましを 旅人の 後より晴れる 野路の村雨 ころころと 転げやすきは 人心 転げぬように 心して持て もののふの 矢走のわたし 近くとも 急がば回れ 瀬田の唐橋 きっぱりと 埒の明きたる 世の中に 埒を明けぬは 迷いなりけり 散りぬれば 後は芥に なる花を 思い知らずも 惑う蝶かな われという その角もじを 折りつくせ 迷い悟りも 忘れ抜くほど 上見れば 上見れば 及ばぬことの 多かりき 笠見て暮らせ おのが心に 上見れば 及ばぬことの 多かれど 笠ぬぎてみむ およぶ限りを 上見れば ほしいほしいの 星だらけ 笠着て暮らせ おのがこころに 下見れば 我に勝りし 者はなし 笠とりて見よ 天の高さを 融くれば同じ あめあられ 雪や氷と へだつれど とくれば同じ 谷川の水 雪氷 雨やあられと へだつれど 落つれば同じ 谷川の水 酒は心の 百薬の 長たるゆえに かえりては また百病の もととなる酒 慎めや 鏡は姿 見すれども 酒は心の 内を見すれば 空渡る 雁の一行 見るにつけ 世にうれしきは 友にぞありける よき事に むすびてわるき 事はなし 麻の中なる 蓬見るにも 堅けれど 砕くに易き 瀬戸物の 心を知れば ふれぬこそよき 夢の世に 夢の世に 夢の如くに 生まれきて 露と消えなん 身こそ安けれ 夢ゆめと 口にはいえど 悟りやらで 夢に夢見て 遊ぶ夢助 夢さめて 衣の裏を けさ見れば 珠かけながら 迷いぬるかな 夢の世と 思いながらも 厭わねば 誰がなすわざと その主をみよ 夢なれば 覚めなと思う 嬉しさに 寝返りもせず 待つぞ楽しき 借り切りと 思う間もなく 目が覚めて 乗合船の 夜半の起き伏し 仮の世を 仮の世じゃとて 仇にすな 仮の世ばかり おのが世なれば 一生を 夢とは知らず 覚めぎはに 夢と知りゆく 夢の世の中 ■
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by 55kara
| 2006-02-05 13:02
| 道歌もの
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