海を漂う「マイクロプラスティック」が、大型の海洋生物に危険をもたらす

海洋を汚染するマイクロプラスティックは生態系全体に影響を与えている。なかでも特に、プランクトン類を濾過して食べるクジラやマンタ、ジンベエザメなど大型の生物に及ぼす影響が懸念されている。

TEXT BY PHOEBE BRAITHWAITE
TRANSLATION BY MISAKO ASANO/GALILEO

WIRED(UK)

PHOTOGRAPH BY AUDUN RIKARDSEN/UNFORGETTABLE UNDERWATER PHOTOGRAPHY/NHM

カリフォルニア州からハワイまでの太平洋には、太平洋ゴミベルト[日本語版記事]と呼ばれる海域がある。海流により、80,000トンのプラスティックごみが集積したところだ。フランスの3倍の広さとされる海域に、記録されたなかで最高の密度でプラスティックごみが集まっている。今年3月下旬に発表された論文によると、その量は、これまで考えられていた量の16倍にも上る。

こうした「ゴミベルト」をはじめ世界中の海で問題になっているのが、マイクロプラスティックと呼ばれる、5mmより小さいプラスティックごみだ。それを食べた魚の消化管は詰まり、発育は阻害され、死に至る。そしてそれは食物連鎖で、魚を食べた生物へと受け継がれていくのだ。

現在、北極に浮かぶ海氷にも、記録的なレヴェルのプラスティックが閉じ込められていることがわかってきている。そのほとんどは太平洋から流れてきたものだ。つまり、マイクロプラスティックは世界中の海面に遍在している。

北極の氷が溶ければプラスティックも流れ出す

気候変動が加速度的に極氷を溶かしていることは、マイクロプラスティックが再び海洋に流れ出るということだ。研究者たちがこれまでに見つけた17タイプのプラスティックのなかには、塗料、ナイロン、ポリエステル、タバコのフィルターの原料であるセルロースアセテートが含まれている。そのほとんどは、産業用船舶や漁船から出ていると考えられている。

科学者たちは、プラスティックがクジラやマンタ、ジンベエザメなど大型の生物に及ぼす影響について、もっと調査をすべきだと主張している。こうした濾過摂食者(水中でプランクトン類を濾過して食べる動物)が毎日摂取するたくさんの極小のプラスティックは、彼らの個体数を脅かし、海洋生態系にさらなるダメージを与えることが深く懸念されている。濾過摂食者は、毎日何百立方メートルもの水を飲みこんでいるため、特に危険に晒されている可能性がある。

上の写真は、オスのザトウクジラがノルウェー北部の沖合いでジャンプして泳ぎ回る様子を撮影したものだ。オス、メス両方に見られる自分を誇示するための行動で、繁殖のために南へ移動する前によく見られる。

食物連鎖を通して人間にも影響

マイクロプラスティックが海洋生物全般に害を及ぼしていることは、よく知られている。このプラスティックは、フタル酸エステルなど有害な化学物質と結びついていると考えられ、それらを摂取する生物に次々に健康リスクをもたらす。人間[日本語版記事]も例外ではない。

2018年の「アースデイ」では、プラスティックによる環境汚染にも焦点が当てられた。英国のさまざまな企業は4月26日(現地時間)、プラスティック汚染を削減するための協定を結んだ。

ロンドン自然史博物館は問題にさらに光を当てるための写真集、『Unforgettable Underwater Photography(忘れがたい海中の写真)』を出版した。実にさまざまな海の生物たちを紹介する作品だ。

この本は、ロンドン自然史博物館などが主催して毎年行われる写真コンテスト「Wildlife Photographer of the Year」にノミネートされた写真家たちの作品を集めている。今年の受賞者は2018年10月に発表される予定だ。

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