〈時代の正体〉極右政治団体日本第一党を抗議の市民が包囲 川崎に高まる反ヘイト機運
- 神奈川新聞|
- 公開:2018/06/03 00:55 更新:2018/06/03 04:05
同党県本部のメンバー十数人を市民が幾重にも取り囲み、間断なく「レイシスト、帰れ」と連呼し続けた。
〈多文化共生の川崎はヘイトを許さない〉
〈私たちが差別をなくさなければ、差別が私たちの社会を破壊する〉
〈この街に差別主義者の居場所はない〉
〈川崎の街は差別主義者を許さない〉
無数に掲げられたプラカードが、差別扇動が公然と行われようとしているという重大な事態を道行く人々に伝えた。
同市中原区の女性(67)は市の対応に憤り、初めてカウンター行動に参加した。「レイシストの集会を守り、市民を守ろうとしていないから」。当初は控えめにプラカードをかざしているだけだったが、響く怒声がヘイトスピーチをかき消し、レイシストの心をくじく効果を知り、「私も声を張り上げます」とコールの輪に加わった。
「心を殺すな」という手書きのプラカードを手にした女性(65)も「差別を止めるべき行政が機能しないなら、市民が行動を起こすしかない」と、東京都練馬区から足を運んだ。
都内でカウンター行動に参加したことはあったが、「まさか川崎に来るとは思わなかった。これまでヘイトデモを中止に追い込むなど、私たちも頑張らないといけないと励まされてきたから」。
市民の力に見合わないばかりか、地元の思いを裏切る市の対応にはだから失望し、腹が立った。
「ヘイトスピーチを防ぐためのガイドラインもでき、川崎市は先進自治体と思っていたが、公的施設をレイシストのための会館にしようとしている。許可のままなら3日も抗議に参加する」と力を込めた。
中村和弘県本部長をはじめ、来春の統一地方選で相模原、横浜市の各選挙区に立候補予定の党員らは茫然自失の体で沈黙。時折マイクを手にスピーチを試みるも抗議の声にかき消され、かざすプラカードも、姿さえも周囲からはまったく見えない状態で、街宣は30分ほどで終了した。
川崎駅のエスカレーターから自由通路まで「帰れ」「二度と来るな」と罵声を浴びせられ、追い立てられるように改札の向こうへ消ていくと、市民からは拍手が起きた。
組合の研修で居合わせた神戸市の人権担当の職員は「カウンター市民の多さに驚いた。神戸では参加者10人、カウンター20人程度で、警察50人と一番多いくらいだから。川崎ではそれだけ差別への怒りが強いということなのだろう」。
ヘイト団体によるデモや街宣への対応にはやはり苦慮しており、川崎市のガイドラインの運用を注視しているという。市は講演会前日のこの日まで瀬戸氏の会館使用を許可する判断を変えていないが、「市民の反差別の熱い思いがこれだけある。先進自治体として他の見本となる判断をしてくれれば」と話していた。