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【社説】

週のはじめに考える 首脳会談で歴史を変える

 朝鮮半島の対立構図を、根本から変えることになるのでしょうか。ぎりぎりの調整が実を結び、史上初の米朝首脳会談が、十二日に開かれます。

 シンガポールで、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が会談する-。

 ほんの一年前、北朝鮮の核実験や、弾道ミサイルの発射が相次ぎ、米国との間で戦争が起きるという見方さえありました。

 その二つの国が、まさか首脳会談を行うと発表するなど、想像もできませんでした。

 しかし会談への期待が高まったと思うと中止が発表され、また実現に向けた交渉が始まる。

◆読めない会談の行方

 まるでジェットコースターのような展開でした。会談の行方は、二人の首脳に委ねられることになりましたが、結果はまだ予断を許しません。

 最大の焦点は、核兵器の扱いです。米国は、短期間に北朝鮮の非核化を実現したい。

 北朝鮮側は、時間をかけ、段階的に進めることや、北朝鮮を攻撃したり、現在の体制を崩壊させるような試みを行わないよう約束してほしいと伝えています。経済支援も要求しているようです。

 まだ立場の違いが残っているため、「日程にこだわらず、事前の調整をしっかりやるべきだ」という専門家の指摘もありました。

 しかし、世界の期待が高まっている今のタイミングを、双方とも逃したくなかったようです。

◆画期的な合意の数々

 トップ同士が第三国で直接会い、対立を乗り越えて劇的な合意を実現したことが、過去に何回かあります。

 複雑な歴史と利害がからむ中東が大きく動いたのは、一九九三年のことでした。

 イスラエルのガザ地区では、パレスチナ住民が、イスラエル軍に対して石を投げる抵抗運動を始めました。

 イスラエル側は武力で対抗、パレスチナ側に千人以上の死者と数万人の負傷者が出ました。

 子供も巻き込まれて犠牲になったことからノルウェーのホルスト外相の仲介で、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が、ノルウェーの首都オスロで、秘密交渉を進め、合意に達しました。

 交渉場所にちなみ「オスロ合意」と呼ばれます。九三年九月にクリントン米大統領の仲介で、アラファトPLO議長と、ラビン・イスラエル首相がワシントンを訪問して握手し、合意が正式に調印されました。

 イスラエルは、占領していたガザ、ヨルダン川西岸両地区から撤退し、代わりにパレスチナの自治を認める、という内容でした。

 世界から歓迎されたこの合意は、残念ながら、現在は崩壊状態となっています。

 八六年には米国とソ連の首脳会談が、アイスランドのレイキャビクで行われました。

 当時米ソ両国は、通告から数分以内に相手国に核ミサイルを撃ち込める緊張状況にありました。

 一方で軍事費の負担も重くなっており、ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が、レーガン米大統領に軍縮会談を申し入れたのです。

 二人は激しい議論の末、中距離核戦力(INF)の削減に合意します。この会談によって、第二次世界大戦後の国際社会を支配してきた「東西冷戦」の終わりが始まった、と評されました。

 さらに八九年十二月には、地中海マルタ島沖に浮かぶ船の上で、ブッシュ米大統領(父)と、ゴルバチョフ氏が会談し、東西冷戦の終結を、正式に宣言しています。

 ゴルバチョフ氏はこの時、「われわれは長く、平和に満ちた時代を歩き始めました。武力の脅威、不信、心理的・イデオロギー的な闘争は過去のものになったのです」と発言しました。

 それでは、朝鮮半島を考えてみましょう。

 朝鮮戦争(一九五〇~五三年)は、いまだに終わっていません。休戦のままです。

◆夢では終わらせない

 トランプ氏は、十二日の会談で、まず「終戦宣言」を出すことを考えているようです。

 非核化が最終段階に来た時、終戦宣言を土台に関係国が平和協定を結べば、戦争は終わります。

 北朝鮮が求める体制の保証につながり、非核化も実現すると判断しているのかもしれません。この方法も試す価値はあります。

 多くの人たちに苦しみをもたらし、将来も続くと思われていた朝鮮半島での対立と分断の日々。

 その歴史を「過去のもの」にするため、二人の指導者にはさまざまな努力をしてほしい。

 難しい道のりは続くでしょうが、この一年間に起きた変化を考えれば、夢物語ではありません。

 

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