核融合炉を14歳で作った天才の親がしたこと

5歳の誕生日プレゼントはクレーンの操縦

もし、わが子が本物の天才だったら…。親はどうしたらその芽を摘むことなく才能を昇華させることができるのでしょうか?(写真:FatCamera/iStock)

この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。

ギフテッドの親は何ができるのか

彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置をつくるなど、その技術を次々と世の中にために活かし始めている。本書『太陽を創った少年:僕はガレージの物理学者』は、そんな少年のこれまでの歩みについて書かれた1冊であり、同時にそうした「少年の両親が、いかにしてのびのびと成長し、核融合炉をつくれる環境を構築してきたのか」という「ギフテッドの教育環境」についての本でもある。

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著者は『ポピュラー・サイエンス』誌などで科学ライターとして活躍するトム・クラインズ。彼はその確かな知識でもって、核融合炉をどのように作るのか、核融合がどのようなプロセスで起こるのか、またそこでどのような困難が発生するのかをしっかりと描写していってくれる。そのおかげで本書は、きちんとしたサイエンス・ノンフィクションでもあるのだ。少年が幼少期から科学と工学に取り憑かれこれでもかと新しい領域を開拓し続けていく様は驚異という他なく、その脇を固める両親たちのほぼ完璧なサポートもあって、安心して世紀の道筋、科学が成されていく興奮を味わうことができる。今年読んだ中でもベストといっていい出来だ。

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  • NO NAME71d45f161c6b
    クレーンをくれる友人の経営者、科学のメンターができる会社の経営者と友人とか、繋がりと親の信用信頼関係もすごすぎ
    up10
    down0
    2018/6/2 16:30
  • NO NAME91084d0c5ac9
    『仮説を立てる、実際に実験で確かめようとしてみる、失敗する、なぜ失敗したのかを検証する、再度仮説を立てて実験してみる』

    これを身に付けることが非常に重要です。失敗の中に次に為すべきことのヒントを見つけることができます。

    数多くの失敗に真摯に向き合うことにより、感覚がだんだんと研ぎ澄まされ、普通の人が見たらノイズとしか思えないようなデーターの中に壁を打ち破るための兆候を見逃さないようになります。

    先人の大発見の中には、偶然の発見といわれるものもありますが、その時の僅か兆候を見逃さない感性を持っていたことが、大発見に結びついたと思っています。

    up4
    down0
    2018/6/2 20:37
  • 気になって調べました468653cc1b65
    >5b9707dcedb4
    ’The Radioactive Boy Scout’ で取り上げられているのはDavid Hahnさんで確かに2016年に亡くなられています。
    ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B3

    この記事が紹介しているのは ’The Boy Who Played with Fusion’ という別の本で、取り上げられているのは別の青年Taylor Wilsonですね。
    ただ二人ともアメリカ人で若くして自宅で核融合実験を試みたという点では同じです。前者は散々な人生の後に悲惨な亡くなり方をしていますが、後者は現役で活躍されているようです。
    up2
    down0
    2018/6/2 21:47
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