朝、いつものように玄関を出ると家の前にキリンがいたので驚いた。
そういえば昨日、酔っ払って動物園から連れてきたのだったと思いながら、時間もないので、せっかくだからキリンに乗って出勤することにした。
キリンは、ゆっくり歩いているように見えるけれど、実際は足がとても長いので、その一歩はとても速い。
私は通学や出勤で歩いている人たちをどんどん追い越していった。
たまに、自転車やバイクに追い越されたが、トータルでみればたくさんの人を追い抜けたので、嬉しかった。
気がつくと、もう会社の近くまで来ていた。キリンのおかげで、私はいつもの半分の時間で会社に着くことができた。
キリンの背から降りると、キリンと私は名残惜しそうに少しの間見つめ合った。
実際、私はとても楽しかったし、キリンも動物園の檻の中にいるよりはずっと楽しかったのではないかと思う。
私が「送ってくれてありがとう。」
と言うと、キリンは首を一度縦に振って、背を向けて歩き始めた。きっと動物園に帰るのだろう。
キリンは一歩ずつゆっくりと歩いていった。そしてあっという間に姿が見えなくなってしまった。
と思って、私は少し悲しくなった。