5月27日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)は、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)、HISASHI(GLAY)、津野米咲(赤い公園)をスタジオゲストに迎えた「ギター特集」だった。
番組では、総勢100組以上のプロアーティストに「本気で凄いと思うギターリフ」についてのアンケートを実施し、その結果から厳選した30曲を紹介。スタジオでは3人がトピックに合わせてギターテクニックを解説したり、ジャムセッションのコーナーではSUGIZO、HISASHI、津野がトリプルギターを担当し、関ジャニ∞メンバーとともにLUNA SEAの「STORM」を演奏した。
「本気で凄いと思うギターリフ30選」については、Derek and the Dominos「Layla」やThe Beatles「Day Tripper」、Deep Purple「Smoke On The Water」、レニー・クラヴィッツ「Are You Gonna Go My Way」など、老若男女がCMやBGMなどで一度は耳にしたことのあるだろう世界的ヒット曲や、RCサクセション「雨あがりの夜空に」、Hi-STANDARD「STAY GOLD」、ASIAN KUNG-FU GENERATION 「リライト」、BUMP OF CHICKEN「天体観測」、[Alexandros]「ワタリドリ」といった、国内からも幅広い楽曲が紹介されるなど、ギター経験者から未経験のリスナーまで楽しめる“マニアックでポップ”な内容だったように思う(参考:『関ジャム』プロデューサーに聞く、“マニアックでポップ”な音楽番組の作り方) 。今回の特集について、音楽機材に詳しいライターの冬将軍氏に話を聞くと、番組の着眼点が非常に面白かったと語ってくれた。
「『ギターを特集する』という字面だけを見ると、Charさんや野村義男さんがCSでやっているような教則本的な番組の作りに思えますが、今回はロックファンにもそれ以外にも響く構成でしたね。それが一番よく表れているのが“ギターリフ”に焦点を当てたこと。普通、こういった特集をするなら“ギターソロ”に着目しがちだと思うんですが、“ギターリフ”であれば、意識しなくても必ずどこかで聴いたことのある楽曲ばかりで、経験者でなくても楽しめます。あと、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)さんを『ただひたすらかっこいい』とアーティストのアンケートを交えて紹介していたように、立ち姿の格好良さもまたギタリストの魅力の一つであることを見せていて、しっかり調べて作っている番組の姿勢が純粋に素晴らしいと感じました」
また、スタジオゲストのラインナップについてもこのように分析する。
「SUGIZOさんはLUNA SEAとX JAPANで活躍する、誰もが認めるギターヒーローですし、HISASHIさんは国民的バンドGLAYのギタリストでありながら、“弾いてみた”動画への投稿などインターネット的な感性も持ち合わせている人です。そして津野さんはコンポーザー的な感覚を持ったギタリストなので、うまくバランスが取れていたと思います。ちなみに、SUGIZOさんは昔から『赤い公園が良い』と言っていたので、それを知っている人にとってもアツい組み合わせでした」
同氏は3人のギタリストの中でも、特に津野のプレイに注目しているという。津野が番組で見せた凄さについて、セッションのシーンなどを踏まえて解説する。
「津野さんはセッションの終盤、SUGIZOさん、HISASHIさんとソロが続く場面で、HISASHIさんのソロを引き立てながら、しっかりとフレージングしていたことが印象的でした。オーケストラにおけるチェロの役割ような“対旋律”アプローチが彼女の得意とするところで、主張しながらも絶対に主役を邪魔しないんです。赤い公園でも、1番2番で<か>や<き>など発音が早い言葉と、<ず>や<ん>といった発音の遅い言葉の違いがあると、ボーカルと当たらないように弾くタイミングやフレーズを変えたりしてるんです。番組内でも『コードを弾かずに茶々を入れる』弾き方の話をしていましたが、あれも歌の合間を縫ってのプレイですので、あくまで歌が主役であることを常に考えてるんですよね」
最後に、番組の内容も踏まえつつ、ギタリストのことを深く知ることで、音楽はどう面白くなるのかという質問に、冬将軍氏はこう答えた。
「バンドサウンドにおいて、曲の全体像を決めるのはどうであれギターだと思うんです。楽しくなるのも悲しくなるのも、歌を生かすも殺すもギター次第ですし、楽器のことがわからなくてもみんなが覚えている音って、ギターフレーズであることが多いんですよ。そんなギターリフやギタリストについて、『この音はどうやって出しているのか』と紹介してくれることで、これまで聴いてきた音楽をまた違った切り取り方で楽しめるきっかけを与えてたのではないかと思います」
ギターとギタリストをこれまでにない視点から掘り下げ、音楽の新たな楽しみ方を提示してみせた今回の『関ジャム 完全燃SHOW』。今後もまだまだ面白い特集が展開されそうだ。
(文=中村拓海)
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