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論功叉論纂行為及び語彙論証を主観に因る荒唐無稽な指摘反論及無碍発言乙。 闡明且簡単明瞭且侑耶無耶せずに直截簡明で具陳及び精緻極まる開陳且、
理路経緯論旨に合致した反駁希望。 ー 名無き指喧嘩師
2005年、KDDIとDOCOMOがパケット定額プランを発表した。従量制から定額制へのパケット課金システムの移行は、携帯ユーザーに特化した掲示板の乱立を招き、アングラ色の濃い掲示板文化が大衆に開かれた。
当時の私は、乱立した掲示板のうち、1つの掲示板に入り浸りになった。
その掲示板は着メロ・着うたの無料ダウンロードサイトとして人気を博していた。が、まもなく音楽ファイルのアップロードが規制され、凋落していくだけかのように見えた。
しかし、凋落するどころが、その掲示板の住民はどんどん増えていった。
なぜか。
その掲示板では、あちこちでレスバトルが行われていた。どこまで性根が腐ればこのようなお下劣な言葉を吐き出せるのか、そう思わざるを得ないほどの言葉がその掲示板に氾濫していた。人格破綻者が織り成す異様な雰囲気に、掲示板訪問者は圧倒され、夢中になり、喜んでその異様な雰囲気を形作る歯車の一つになった。歯車はどんどん増えていき、人間の卑しさを動力源とし、その掲示板は朝から夜まで活動する電脳界隈の不夜城になった。
その掲示板では、レスバトルの強者こそ正義だった。掲示板の男性ユーザーはこぞってレスバトルランキング内でのヒエラルキーを上げることに躍起になり、レスバトル強者は、掲示板の女住民を何人も抱いた。
頭のおかしい空間だった。そんな空間でも、わたしは大好きだった。携帯のディスプレイだけが光る薄暗い部屋で、不景気特有の閉塞感を罵詈暴言の渦中放り込んでいたあの時を、いまでも懐かしく思う。
レスバトルとは?
レスバトルとは、掲示板上で行われるディベートのことである。当時はレスバトルとは言わず、「口論」「論争」「指喧嘩」と呼んでいた。(※そもそもレスバトルという呼び方自体、つい最近生まれたものである。)
レスバトルのルールはシンプルだ。どんな形であれ、文章によって相手を言い負かせば勝ちだ。
例を挙げて説明した方が、理解は早いだろう。以下、はてな運営に規制されないよう留意しつつ、当時のレスバトルを再現してみた。
例えば「日本は再び鎖国するべきである」というテーマでレスバトルが発生したとする。
※以下のレスバトル内容は、私の思想とは一切関係ありません。あくまで当時のレスバトルの再現です。テーマ主題は下記から一部を抜粋ならび編集したものを使用する。
日本は将来的には鎖国を目指すべきだと考えざるを得ないです... - Yahoo!知恵袋
「日本は再び鎖国するべきである」というスレッドを立ち上げたスレ主が下記のように主張したとする。
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スレ主▼
歴史を捻じ曲げてまで利益を追求する獰猛な中韓が隣国に存在する。彼らは、国内で人口比で1%も存在しないくせに、パチンコや情報などの悪どい産業には牛耳って悪さを行う。だから友好的な国以外との国際交流は遮断するべきだ。
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普通のディスカッションならともかく、レスバトルにおいて、このスレ主はLv.1 のスライムである。カモである。なぜカモなのかは、読み進めていけば分かる。
さて、スレ主に初っ端からヘビーなパンチをぶっぱなしても良いが、一瞬で勝負が終わってしまい、レスバトル紹介にならない。まずは、手始めに軽いジャブをかまそう。
このレスバトル紹介例の主役はLv.10の「論破厨くん」である。彼はこう答える。
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Lv.10の論破厨くん▼
>「隣国に存在する」「悪どい産業には牛耳って」
「隣国として存在する or 隣に存在する」「悪どい産業を牛耳って」だろ?日本語ちゃんと使えよ。
ほか、悪どい産業を牛耳っていることを説明するソース(主張の論拠となるデータ)がない。そもそも、鎖国後に友好的な国が友好的な国じゃなくなったらどうするの。
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スレ主から律儀に下記のようなコメントが来る。
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Lv.1のスレ主▼
実際、在日朝鮮人の犯罪が社会問題になっているし、そのデータも調べれば大量に出てくる。友好的な国が友好的な国じゃなくなるリスクを考えて、あなたは鎖国に反対しているようだけど、現在の時点で友好的じゃない国がもたらす弊害をなんとかする方がよほど喫緊の問題だと思うのだが。
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なるほど、伝えたい内容が明確であり、かつ理路整然とした文章。しかし、これはレスバトルである。レスバトルにおいて、真面目に反論する行為は、「私はホ〇です」という看板をぶら下げて新宿二丁目を歩くようなものである。
論破厨くんは、ここでストレートパンチを繰り出す。
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Lv.10の論破厨くん▼
は?質問しただけで鎖国に反対とか一言も言っていないんだがwwww(揚げ足を取る)
あと、俺は「在日朝鮮人の犯罪率」ではなく「在日朝鮮人が悪どい産業を牛耳っている」と言い切れるデータを要求したのだが?(少しでも質問に正しく答えられていなかった箇所は、嫌らしく指摘する)
「隣国に存在する」「悪どい産業には牛耳って」とかいう謎の日本語についてのコメントあくしろよ。(過去の相手のミスをねちっこく責める)
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めちゃくちゃである。話が通じない論破厨くんにスレ主はこう切り返す。
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Lv.1のスレ主▼
結局、あなたは鎖国に賛成なの?反対なの?
論点ずらしや揚げ足取りばかりで、議題に沿ったディスカッションが成立しないから、以降あなたのコメントはスルーする。
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まったくもって正論である。しかし、何度も言うが、喧嘩において正論は悪手である。ここで、論破厨くんがスレ主にトドメのアッパーをかます。
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Lv.10の論破厨くん▼
1.日本語ミスを指摘したが言及なし→都合主義乙
2.自身の主張についての情報源・論拠を出せない→妄想乙
3.思い込みが激しく、思慮分別に欠ける→人との温かな交流が皆無であることが原因と思われる
1~3より、スレ主を論破。(このレスだけを見たギャラリーが、自分が優位に立っている風に見えるよう、相手の失点をまとめ、論破宣言)
>以降あなたのコメントはスルーする。
は?自分からこのディスカッションを設定したくせに、自分の主張すらロクに述べられないまま、逃げるのでちゅか?wwwwこういう展開を想定できていない時点でネット向いていないよwwwww半年ロムっとけよwwww(そして安定の煽りコメント)
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上記の論破根拠1~3のいずれも、スレ主ではなく論破厨くんの特徴としか思えないのはともかく、こんな調子で煽っていけば、ギャラリーは沸きだし、スレ主の顔は真っ赤になり、発狂し、自滅する。テーマはどちらかといえば国際的な知識や論理的思考力が求められるような内容だが、レスバトルにそんなものは一切必要ない。やるべきことは、相手の揚げ足を取り、詭弁を展開し、挑発し、「はい、おっぱぴー」感覚で「はい論破」を宣言することだ。
理性的なあなたはこう思うだろう。「やりとりをまともに読めば、いやまともに読まなくても、論破厨くんが言っていることがめちゃくちゃなのは明らかだよね。これでも、ギャラリーは論破厨くんを支持するの?」
ギャラリーは論破厨くんを支持する。なぜなら、そのほうが面白いからだ。レスバトルにおいて、言っていることの論理性や常識、正しさは重要ではない。文字によって相手を効率的かつ効果的に誹謗中傷し、野次馬の多くを味方につけたものが勝ちだ。レスバトルの強者であればあるほど、そいつの人格は破綻している。差別的な語彙を自由自在に操り、めちゃくちゃなロジックをこれでもかと叩きつけ、相手の人格や尊厳をぶち壊す。レスバトラーとは、社会のゴミを地で行くようなやつらだ。
おまけとして、上のLv.10の論破厨くんの最後のレスに、Lv.30の指喧嘩師が反駁すると、こうなるだろう。
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Lv.30の指喧嘩師▼
>1.日本語ミスを指摘したが言及なし→都合主義乙
サーセン、日本語間違えました。認めます。はい、たったいま言及したので、「言及なし」というお前の主張を論破。もっと言えば、論破とは「相手の主張のなかにある矛盾を立証する」ことを意味するのであって「言及がなかったから論破」という言い分が支離滅裂。なぜこれが論破になるのか、説明宜しく。
>2.自身の主張について情報源・論拠を出せない→妄想乙
情報源を出せないとか一言も言っていないけどね。とりあえず、思い込みの激しいお前は「君はソースを出せない」と断言しているわけだから、俺がソースを出した途端、お前の主張は間違っていることになる。
http://xxxx.xxxx.ne.jp/xxxxx/xxx/xxxxx
はい、論破。
>3.思い込みが激しく、思慮分別に欠ける→人との温かな交流が皆無であることが原因と思われる
「思い込みが激しく、思慮分別に欠ける」ことと「人との温かな交流の欠如」の因果関係を示す論拠の提供よろしく。
>は?自分からこのディスカッションを設定したくせに、
>自分の主張すらロクに述べられないまま、逃げるのでちゅか?
おう、こんだけ煽ってんだから俺のコメントのすべてに返事しろよ?
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レスバトルに常勝するための5鉄則
引用元:http://e-village.main.jp/gazou/entry/000466.html
なんの自慢にもならないが、当時の私は、掲示板内の口論ランキング上位だった。
わたしが貴重な若い時期を1年半費やして培った「レスバトル必勝上の鉄則」を5つ紹介する。これから紹介する黄金鉄則は、ひろ〇き氏、橋〇氏などの口論強者も使用している。
この鉄則を正しく運用すれば、レスバトルで負けることはないだろう。(そして、使いどころを間違えると人として大切なものや社会的実績をすべて失うだろう。)
【鉄則1】自分にとって都合の悪いコメントは原則無視
相手が鋭い指摘・質問をしてきた場合、それに反応してはならない。想像してみよう。「~はおかしいよね!?」と追及する者と、「おかしくない!」と弁明する者。
どちらが強く賢く見えるだろうか。明らかに追求する側の方が強く賢そうに見える。
レスバトルにおいては重要なことは、いかにして自分の立場を「問い詰める側」に置き、相手よりも優勢であることを周囲にアピールするかである。
あいての指摘に回答してはならない。傾聴の姿勢を捨て去ろう。過ちを素直に認めるのも良くない。相手を調子づかせるだけである。相手からの鋭い指摘は、最初から無かったかのように振舞おう。すべてを自分の都合のいいように曲解し、詭弁をまくしたてることがレスバトル絶対強者になるための条件だ。
さて、相手のレスをオール無視するかわりに、なにをするべきだろうか。下記3点を押さえたコメントをしなければならない。
- 話題をすり替えるか、揚げ足を取る
反論に律儀に答えてはならない。助詞「て・に・を・は」の誤用、「的を得る」「ありえる」など慣用語句のミス、コメント間の論理的一貫性・結合性が保たれていないことに言及するなどして、話題をそらすのがセオリー。 - 相手の矛盾や失点を複数項目まとめて、長文で叩きつける
自分のミスの印象を薄くし、相手のミスの存在をギャラリーに印象付けるためには、長文かつ厚みのある記述を心がけなければならない。相手のミスを複数まとめた長文を叩きつけた後は、相手が一生懸命、反論コメントを作成している間に、2~3の追撃コメントを送りこむなり、ギャラリーを盛り上げるなりして、相手をキャパオーバー状態に追いやろう。 - 煽るだけのコメントはするな。
レスバトルの不文律に「相手が煽りしかしなくなったら勝ち」というものがある。誰から見ても明らかな自分のミスを多数指摘され、何も言い返せない状況であっても、相手を煽るだけのコメントを送ることはやめよう。「煽ることしかできないの?」というレッテルを貼られると、挽回はほぼ不可能。煽りは、揚げ足、矛盾指摘などのコメントと組み合わせて使おう。
【鉄則2】持論は述べない
レスバトルとは、オセロのようなものだ。最初に自分の持ち駒を増やしすぎると、終盤で一気にまくられる。つまり、レスバトルでは、具体的な考えを主張するほど、自分の発言内容の一貫性・結合性を保つことが難しくなり、反論の隙を相手に与えてしまう。一方で、持論を述べないことは、相手の思い込み、決めつけを誘発し、言いたいことが言える余裕を確保することにつながる。持論を述べないことで得られるアドバンテージは計り知れない。
自分の主張は、そもそも話さないか、限りなく曖昧にしなければならない。発言の責任の作らないよう立ち回り、相手の主張のあげ足を取ることを優先しなければならない。
「沈黙は金、雄弁は銀」というが、レスバトルにおいて、沈黙はあなたをフリーザー様にし、雄弁はあなたをヤムチャにする。
【鉄則3】野次馬を味方につけよ
人間関係における真理をひとつ教えよう。この真理はリアルでも応用できる。
場に10人いたら、3人が自分の味方になり、3人が自分の敵になる。残りの4人を味方に付けられるかどうかで勝負の行方が決する。
この法則はレスバトルにおいても例外ではない。ギャラリーを味方に付けることは、レスバトルで勝利するための絶対必要条件である。逆に言うと、ギャラリーに嫌われたら、あなたの言い分がどれだけ正しかろうと、あなたは負ける。
とあるレスバトラーは、「みんな、お前の主張がおかしいことに気が付いているけどなw」というコメントしたばかりに、「いや、勝手に俺らを含めるなよ」と観客から総スカンを受けて敗北した。ほか、「文章が長すぎ」「wを使いすぎ」等、ギャラリーの所感がレスバトルの勝敗を決してしまうことは多い。
では、ギャラリーに好かれ、コンセンサスを得るためには、どのような点に注意すればいいのだろうか。
- 自身のコメントの正当性・一貫性を確保する
正論は悪手と述べたが、レスバトルの流れを理解したものが使う正論は、やはり強い。まともなレスポンスは、相手のキチガイっぷりを際立てる。勘違いしてほしくないのだが、わたしがいう正論とは、世間的な常識や感情に訴えかけるような論ではなく、知識の確かさや客観性に裏打ちされた矛盾の無い論理展開のことである。鉄壁の正論を身に付けるためには、鉄則2の「持論を述べない」を忠実に守り、なぜ持論を述べると負けるのかを肌を通して覚えることだ。 - クールなキャラを徹底する
反論するにしろ、煽るにしろ、キチガイにならない範囲で行わなければならない。自分以上に、相手が必死であると、オーディエンスに思わせるためにも、クールさ、スマートさは必要不可欠。短文と長文を使い分け、知的な語彙を活用し、相手のコンプレックスをグリグリと抉るようなレスを淡々と投下することが肝要だ。 - 常にギャラリーの味方をする
時折、賢いというか、まともなギャラリーが、レスバトル相手の指摘をもっともだと評し、レスバトル相手とグルになって、自分を追い詰めてくる場面がある。相手は調子づくし、指摘内容そのものは正しいしで、非常にうっとおしい場面である。相手からの反論は原則無視だが、ギャラリーからの反論や指摘は素直に認めよう。ただし、過ちの認め方にコツがある。指摘してきたギャラリーを褒めるのだ。褒めると同時に、対戦相手を貶すとよい。 例えば、下記のように。
『対戦相手の指摘のほとんどが答えるに値しないゴミみたいな内容だったから全部スルーしていたが、(ギャラリーが指摘してきた内容)は大切なポイントだな。確かに~は・・・だね。語彙も貧弱で主張の中身が無い典型的無能な対戦相手と違って、あなたは話が通じるから助かるよ。』
【鉄則4】レスバトル強者の黄金のフレーズを使いまわせ
レスバトルで特に役立つフレーズを5パターン、解説と併せて紹介する。
- 「それはあなたの感想ですよね?」
いわゆる「ひろゆき論法」。最強。逆にこのセリフを相手に使われたときは、「むしろ感想じゃない主張ってあるの?」と反論し、相手の主張も感想の域を超えないことを責めよう。 - 「それ、どういう状況を想定して言ってんの?」
レスバトルの初めの段階で、相手から具体的なコメントを引き出したいときに使えるフレーズ。レスバトルにおいて、具体的な意見を語らせることは、相手の失言を引き出すうえで重要である。このフレーズを活用して相手に具体的な内容を強制的に語らせ、相手のロジックに亀裂を入れよう。 - 「言いたいことが全く分からないから、簡潔にまとめてくれない?」
相手が長文多レスしてきたときに使う。馬鹿にしつつ、展開を一旦リセットできるフレーズ。あいてが律儀に言い分をまとめてきた場合、まとめたコメントとまとめる前のコメントの間にある矛盾を探そう。矛盾があれば徹底的に指摘することで、相手に壊滅的なダメージを与えられる。 - 「冷静ぶってるわりには、思い込み激しいね。」
レスバトルでは、冷静であるほど強者である。強者に勝つためには、感情を揺さぶり、イラつかせるフレーズを一通りそろえる必要がある。「冷静ぶっているけど~だよね」という切り口で相手を激昂させよう。 - 「そんなこと一言も言っていないんだが。」
「持論は述べない」という鉄則を守っていると、相手がこちらの主張や立場を勝手に決めつけたり、思い込みで反論する場面が必ず現れる。そこで、この一言を相手に叩きつけ、あわせて論破宣言しよう。
【鉄則5】負けを認めなければ負けたことにはならない
最後の鉄則はこれだ。私が説明するより、下記ページを見ていただいた方が、理解は早いだろう。
レスバトルを究極的に砕いて説明すると、相手が根負けするまで、しつこく論破宣言し続けたものが勝つ勝負である。「負けを認めず、最後までレスし続けた鉄のハートを持つ者が勝者になる」のがレスバトルなのだ。あきらめたらそこで試合終了とは、レスバトルの特徴を説明する名言だ。
レスバトルは時間の無駄なのか
自分のいままで胸に抱いてきた広島の牡蠣は縮まないというアイデンティティーが崩壊するのを恐れているの?ん?その恐れがお前のルサンチマンを刺激して反動でそんなに攻撃的になって自分を見失ってしまっているの?
自分を見失っているから検証して自分の経験を増やすことを考えずに自我の殻にとじ込もってしまうの?
ニーチェは力への意志という概念で力強く生きることを促した。
生きるということは投企だとサルトルは言いました。現実の中に自分を生きるということは今君に最も必要なことやと思うで。広島産のちっちゃいちっちゃい殻をそろそろ破る時が来ましたんやで。
「レスバトルは時間の無駄」と主張する者へ。
何もわかっていないな。
弁護士の論破術、キャリア官僚の詭弁パターン、政治家の扇動コメント、ソクラテスをはじめとした古来の哲学者同士の喧嘩内容をよく観察すると、レスバトルが人類の発展と切り離せないものであり、レスバトル能力が社会を生き抜くうえで重要な素養であることは、容易に理解できるはずだ。
彼らのやっていることは、掲示板内のレスバトルと大差ない。
つまり、レスバトルとは、人類に許された最も高度な知的活動のひとつなのだ。
著作「人を動かす」で、D・カーネギーは「議論を避けよ」と述べているが、議論できるがあえて議論を避ける人と、議論ができないから避けている人とでは、その人から受ける雰囲気や印象は大きく異なる。また、レスバトル能力は、文章力、交渉力、人を笑わせる力、様々な場面で役立つ。
なにより、レスバトル自体が面白い。最高に知的かつ野性的な余興だ。相手から煽りコメントが飛んできたとき、あなたの脳みそはドーパミンでビショビショになり、手は震え、目の前の文字に噛り付くだろう。
※ただし、健全な精神の発達を促進するうえで、レスバトルは害悪でしかないのも事実であるため、自己責任で。
レスバトルに強くなりたいなら読むべき3冊の本
弁護士が書いた議論が強くなるための本、ロジカルシンキングを身に付ける本、こういった本を読んでもレスバトルは強くならない。
ネット議論に強くなるために読むべきは、文章術の本と哲学の本だ。文章術はいわずもがなだ。無駄がなく趣旨が明快な、つまり隙のない文章を作成する力は、それだけでレスバトル力に直結する。次に哲学本。哲学というと高尚な感じだが、やっていることは屁理屈をこねまわした口喧嘩でしかない。ただ、その屁理屈のこねまわし方、口喧嘩の内容が尋常じゃない水準まで昇華されている。哲学系の本は、レスバトラーにとってこれ以上ない参考書だ。
余談だが「無知について」という本は、タイトルこそリッチでいかにも哲学臭のする本である。が、内容は、ペトラルカが「ギャラリーのレベルが低すぎて、口論に負けた」という恨み節を淡々と書き連ねているネタ本である。当たり前だが、ギャラリーを味方につけられなかった時点でそいつが弱者なのである。
話がそれた。私がお勧めする本を3つ挙げていこう。
文章作成ノウハウに関する本なら、これが最強だ。異論は認めない。レスバトル以外に、論文やビジネスメールを作成するときに役立つ(というか、アカデミック面やビジネス面で役立てるべき本)。
史上最強の口論士、ソクラテスの詭弁テクニックはこの本から盗める。岩波文庫より読みやすい訳になっている。ここでは紹介しないが、ソクラテスの次は、ニーチェとカントについて学ぶことを薦める。ニーチェは、「世の中、結局じぇーんぶ意味ねーから。お前が言っていることもな!」という屁理屈が相手の主張を無効化にするうえで役立つ。カントの理論は、一般通念を持ち出すレスバトル相手に対して、「理性という不安定なものに頼っている時点で、なんも反駁を積み上げられていないんだよね」という反論を行う時に、素晴らしい働きをする。
著名な哲学者の思想の主軸が無駄なくまとめられている。Amazonの評価の高さもうなずけるほどの質である。この本で学べる内容はそのままキラーフレーズとしてレスバトルで使える。私が指喧嘩に精を出していたときに、この本が存在しなかったことが悔やまれる。
【おまけ】忘れられないレスバトル3選
わたしは、愛すべきバカたちが集まる、今は廃れたあの電脳空間が最高に好きだった。掲示板の住民が織り成すわたしが忘れられないエピソードを3つ紹介しよう。
【エピソード1】
『出逢い板』住民である16歳女子高生が自顔写メをアップロードし、そのJKが可愛いか可愛くないかで、二人の男による口論が始まった。両者とも早い段階で「あきらかに可愛くない」という結論に達していたにもかかわらず、なぜ可愛くないのかについての口論が続いた。不気味なほど、紳士的な口論であった。たおやかな口調で、両者は淡々と意見を戦わせ、ギャラリーも妙に丁寧な口調で横やりを入れた。片方が「(そのJKは)そもそも生まれたことが間違いだったと思われるが、いかがだろうか?」と述べたところ、「むべなるかな!」と強い支持コメントがギャラリーから多数寄せられ、対戦相手である片方も「たしかに、私なら彼女を生むだろうか。否、おろす。」と潔く敗北を認めた。16歳女子高生は掲示板に来なくなった。
【エピソード2】
レスバトルランキング内の自分の順位に不満を抱いたレスバトラーが、ランキング管理者にいちゃもんをつけ、口論が勃発した。ランキング管理者に口論をふっかけたレスバトラーに限らず、ランキングの内容に不満を抱いていたレスバトラーは多かった。ランキング管理者がひとつ反論するたびに、外部から10~20のヤジと煽りが飛ぶ集団リンチのような口論であった。そして、ランキング管理者はその口論にあっけなく敗北してしまった。「こんなに口論が弱い人が作ったランキングに信憑性なし」とオーディエンスの一人が主張し、彼の主張は満場一致で可決された。かくして、ランキングは作り直された。元ランキング管理者のグレードはA-からF+になった。
【エピソード3】
股ユルな女になりすまし、男住民のナニの画像を入手し、掲示板内にばらまくチャ〇ト〇ッチ詐欺が一時流行った。生まれたてのハリネズミのようなわが身の分身を晒された、男住民の一人が、なりすまし師に「騙す側と騙される側のどちらが悪いのか」口論を仕掛けた。騙された側の住民は「鶏が生まれるのが先か、卵が生まれるのが先か」よろしく「騙す側が存在しなければ、騙される側は生まれない」という知的かつ哲学チックな持論を展開した。これに対し、なりすまし師の男は、「短小〇茎が何を言っても説得力無し」と小学生のような反論を展開した。「画像が本人のものであることが真である場合、それが極めて魅力に乏しい機能しか備えていないことは第三者から見ても明らか」という女住民からの無慈悲な援護射撃により、口論はなりすまし師の圧勝だった。
なおレスバトル後、風儀を著しく乱したとして、なりすまし師とチャ〇ト〇ッチ民は双方とも掲示板運営者の手によって投稿禁止になった。(ならばなぜ、出逢い板とチャ〇ト〇ッチ板を掲示板内に作ったのか真偽は誰にもわからない。)