先日、アメリカで「西欧メディアは、アジア系女子が目立つためにはネオンカラーのメッシュが必要という考えを捨てるべき時だ」というツイートが大きな話題となった。
ツイートには『デッドプール2』のユキオ(忽那汐里)を筆頭に13人のアジア系女性の映画/ドラマ/アニメのキャラクターの写真が添えられていた。全員の髪にメッシュ(*)が入っており、多くは紫色だ。
(*)メッシュ(meche)はフランス語。英語ではストリーク(streak)と呼ぶ
このツイートはモーメントとして紹介され、すぐさまグラマー、アルーアといったファッション雑誌はもとより、ワシントン・ポスト紙でも紹介された。
実際のところ、一般のアジア系アメリカ人女性にパープルやブルーのメッシュを入れている人もいるが、ツイートに挙げられたのは映画/ドラマ/アニメのキャラクターであり、かつ『グリー』などごく一部を除いてSFやアクションヒーローものばかり。ほとんどのキャラクターが「普通の」アジア系アメリカ人女性ではない。つまり映画やアニメの作り手側が、アジア系アメリカ人女性を表す記号として、アジア系アメリカ人女性の実態から離れたステレオタイプを作り上げてしまったのだと言える。
近年のアジア系アメリカ人の人口増加だけでなく、日本製アニメの多大な影響があり、こうしたジャンルにアジア系キャラクターが含まれるようになった。だが、制作者はアメリカ人である。彼らは、彼らのイメージするアジア人キャラクター、または彼らにとって都合のよいアジア人キャラクターを作り上げる。
アジア人の外観を特徴付けている(と西洋人が思う)のは、顔立ち、肌の色、そして黒くまっすぐな髪だ。だが、どのキャラクターも一様に黒い直毛では差が出ず、派手さ、華やかさも出しにくい。そこでメッシュ、しかもなんとなく東洋の神秘を感じさせる紫が多用されるのではないだろうか。
実はこの「アジア系女性キャラクターのメッシュ」の件、論じられるのは今回が初めてではない。ここ数年、何度も繰り返しおこなわれており、映画やアニメの制作者も気付いているはずだ。それでも「紫のメッシュ」は不滅なのである。
増えるアジア系女優
そんなことを考えながらツイートに挙げられていた13キャラクターと、それを演じた女優/声優をチェックしてみた。すると、いろいろと新たな発見があった。アメリカ(一部カナダ)のアジア系にも今や非常なバラエティがあるのだ。
●=女優/声優名 ( )=役名 『 』=作品名
●忽那汐里(ユキオ)
『デッドプール2』2018
日本の女優。オーストラリア生まれの日系三世。女優になるため14歳で日本に移住。
●菊池凛子(森マコ)
『パシフィック・リム:アップライジング』 2018
『パシフィック・リム』 2013
日本の女優。
●ジェナ・アウシュコウィッツ(ティナ・コーエン=チャン)
『glee/グリー』2009-2015
アメリカの女優。韓国で生まれ、生後すぐにアメリカ人夫婦の養子となり、米国で育つ。
●ファン・ビンビン(ブリンク)
『X-MEN: フューチャー&パスト』2014
中国の女優。
●吹替:ジェイミー・チャン(ゴーゴー・トマゴ)
『ベイマックス』2014
アメリカの女優/リアリティTVスター。韓国系二世。
●福島リラ(ユキオ)
『ウルヴァリン:SAMURAI』2013
日本のモデル/女優。
●吹替:タニア・グナディ(ミコ・ナカダイ)
『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』2010-2013
アメリカの女優/声優。インドネシア生まれ。高校時代に米国の「グリーンカード(永住権)宝くじ」に当選し、アメリカに移住。
●ペ・ドゥナ(ソンミ451)
『クラウド アトラス』2012
韓国の女優。
●エレン・ウォン(ナイブス・チャウ)
『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』 2010
カナダの女優。カンボジアからカナダに移住した中国系カンボジア人の両親のもと、カナダで誕生。
●吹替:ステイシー・デパス(Nicole ‘Nikki’ Wong)
『6teen』2004-2008
カナダの声優。白人。
●吹替:ララ・ジル・ミラー(Juniper “June” Kim Lee)
『The Life and Times of Juniper Lee』2005-2007
アメリカの声優。白人。『デジモンアドベンチャー』『金色のガッシュベル!! 』など、日本アニメの英語版吹替を多く担当。
●メイ・メランソン(サイロック)
『X-MEN: ファイナル ディシジョン』2006
アメリカの女優。フランス系の母親と、日本と中国のミックスである父親のもと、フィリピンで生まれ、日本、香港、韓国、ヨーロッパで育つ。二人目の父親はアメリカ人。
●吹替:ドリュー・バリモア(アキーマ・クニモト)
『タイタンA.E.』2000
アメリカの女優。白人。
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