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組み合わせ最適化問題を高速で解ける量子コンピュータで先行したディーウェーブ・システムズ。現在、4グループの日本企業が対抗する技術で追っている。
第3回は、既存の半導体技術を使って量子計算に対抗する、富士通と日立製作所の技術を取り上げる。
2社が開発する専用コンピュータは、最適化問題を解く過程で繰り返し現れる演算を加速するLSIを開発し、これまでの性能限界を打ち破ろうとする考え方に基づく。最適化問題の「専用アクセラレータLSI」だ。
富士通は2018年5月、日本勢4グループの中では最も早く自社技術「デジタルアニーラ」の商用化に踏み切った。量子コンピュータへの注目が集まる中、富士通はデジタルアニーラの能力を「実用性で量子計算を超えた」と表現。「ほとんどの最適化問題を1秒で解ける」(吉澤尚子執行役員常務)とも主張した。
「CMOSアニーリング」と呼ぶ方式を開発する日立も「半導体なら多ビット化しやすく、より大きい問題に適用できる」(情報エレクトロニクス研究部の山岡雅直主任研究員)と量子コンピュータへの対抗に自信を見せる。同社は試作段階で、部分結合ながら約2万ビットの専用LSIを開発済みだ。
半導体技術を使う富士通や日立の専用コンピュータは、実際に量子計算を超える能力を発揮できるのか。強みと弱みはどこにあるのか。その実像に迫る。
計算量を減らして「実用解」を探す
ディーウェーブも含めて、今回取り上げた5陣営の専用コンピュータは、すべて「イジングモデル」と呼ばれる計算モデルに基づくことは第2回に説明した。相互作用が働いている平面に並んだ磁性体の結晶格子のモデルに、解きたい問題を当てはめる。最適解を探す計算を、この磁性体のモデルが最も安定した状態を探す、という問題に置き換える計算手法である。
このイジングモデルと組み合わせて、実際に最適解を探すために使われるのが「シミュレーテッドアニーリング(焼きなまし)」という計算手法である。金属を熱してゆっくり冷ますことで内部の応力を取り除く焼きなましの工程をコンピュータ計算に実装したものだ。最適化問題を解くために古くから使われており、実績もある。
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