いわゆる〈まとめ記事〉や、質の低い情報サイトに掲載されている〈育児のデマ〉。それら通称〈トンデモ〉に振り回されてしまうのは、子育て中のママたち。「ワクチンは怖いもの」「牛乳は危険」「骨盤が歪むと子宮と胎児も歪み、育てにくい子どもになる」「母乳のほうがIQが高くなる」etc…
それらは「よりよい環境を子どもに与えたい」という親心につけこみ、隙あらば関連商品を売りつけようという害悪です。ところが、素人にはどれが怪しくてどれが正しいのか、正直わからず……。
そんなときに役立つのが、正しい情報を幅広い角度から解説してくれる『専門家ママ・パパの本』シリーズ。こう書くと、まるでPR記事のよう。ですが、世の中に〈医師発信のトンデモ本〉もあふれかえっている昨今(しかもそこそこ売れてしまう)、〈公正で妥当な情報〉を厳選して載せている本というのは、実に貴重な存在なのです。
同シリーズは、各分野の専門家が医学的に根拠のあることで、実践できる内容をわかりやすく答えてくれるという、育児のバイブル的存在。一時期絶版となっていたところ、この3月に内外出版社より復刊したという嬉しいニュースが届きました。
その記念として、4月1日に行われたのが「妊娠・出産・子育て情報の選び方」トークショー。産婦人科医ママの宋美玄先生(以下、宋先生)と小児科医ママの森戸やすみ先生(以下、森戸先生)がクロストークをする運びとなりました。
医師がよく耳にするデマトーク
トークショーの会場は、三省堂書店池袋本店。トークの始めには、宋先生と森戸先生が診療の場で驚かされたという、ママたちが口にする〈妊娠、出産、育児のデマ〉が話題に上ります。
宋「私の場合すごくよく聞かれるのは、どうやったら男女を〈産み分け〉できるかについて。産み分けに役立つと謳われる高額な潤滑ゼリーが販売されていたり、ネットでも情報や研究グループが出てきたりするんですよね。私も患者さんたちから質問を受けていろいろ調べましたが、結局のところ現時点では日本で男女を選ぶための産み分け法は、ありません。
他には、某骨盤ベルトについてもよく聞かれます。エコー検査をしているとき、胎嚢(たいのう、赤ちゃんを包む袋のようなもの)が映し出された画面を見て『胎嚢の形が細いけど、私の骨盤の形が悪いってことでしょうか? 育てにくい子になるんでしょうか?』とか※2。ベルトで骨盤を締めたって、子宮や胎嚢の形が変わるわけではないのに」
※有名な妊婦向け「骨盤ベルト」が、骨盤が歪むと子宮や胎児の体が歪み、育てにくい子になると謳っている。
森戸「たくさん歩くほど安産になる! と思っている方も本当にたくさんいますよ。それを指導する医療関係者の価値観が反映されている場合もあるのでしょうけど、いずれにしても〈だからこの商品がオススメ〉といった物販が付随している情報は、根拠のないものがほとんどだと言えるのでは」
育児の世界は体験が重視される傾向があるので、「根拠はなくても、みんながいいと言っている方法がいい」となることも、デマがなくならない原因のひとつであると宋先生は指摘。