メディア・マスコミ 芸人 インタビュー

「一発屋」を消費してきたすべての人に山田ルイ53世が伝えたいこと

元売れっ子たちの「その後」
石戸 諭 プロフィール

「自分が進む道は周りが決めてくれんねん」

43歳、長女も生まれた。そんな年になり最近、ある先輩芸人からこんなことを言われたこんな言葉が心に響いたという。

「自分が進む道は周りが決めてくれんねん」――。

《43歳になって、人生のなかで自分を諦めてあげることが大事だなって思うようになりました。可能性は無限大みたいなことを言う先生がいるじゃないですか。あれって違いますよね。

そもそも無限にあったら選べないし、すごい速さで挑戦して、失敗して選択肢を潰していくことが人生では大事だと思うんです。》

山田さんも諦めを増やしている。諦めるなかで、残った道がある。それこそが進む道だと思いながら。

《僕で言ったら、もうテレビでバカ売れするのは無理ですから諦めています。

僕らの世代はめちゃイケとかで売れていって、自分たちの番組を持って芸能界で成り上がっていくんだというのが一番のサクセスストーリーです。でも、そこに選ばれていない。

いまの時代なら賞レースで勝ち上がっていくのも大事だけど、そもそも僕らはもう賞レースには出られないし、いま出ても評価されるタイプでもない。だから、いろんなことを諦めてますよ。

諦めていった結果、やれることが残っていればそれはラッキーだなって思います。僕なら書いたものがあるし、いまの大事に思える仕事がある。》

 

一発屋芸人列伝』の最終章を飾る相方、「ひぐちくん」こと樋口真一郎さんがワインエキスパートを取得しているのも、諦めのあとに残った道なのだろう。やはり貴族キャラならワインは不可欠であり、コンビの個性を磨くことにつながる。

《自分で決めたことやからいいんです。彼はドン引きするくらいワインのことを勉強してますからね。ただ、樋口くんの場合はお笑いをやりたくないから、ワインに取り組んでいるんですよ。

僕はまだまだ体質が古い。なんのためにやってんねん。お笑いのためやろって思っちゃうんですよ。わはは。》

ほんわかあったかい美談、山田さんの言葉を借りれば「喉ごしトゥルトゥルの美談」にまとめようとしたら、あっさりと否定されてしまった……。

それは周囲からの安易な「美談化」を拒み、「一発屋を在るがままに見つめる勇気」を貫く彼の姿勢であるともいえる。

一発屋はある意味で、熾烈な競争が続くお笑い界で淘汰された存在だが、彼らはただの敗者ではない。腐らずに別のやり方で挑戦を続け、生きている。そんな存在がいたからこそ、勝者もまた芸を磨けたのだ。

彼の義侠心は一発屋を確かに救い出した。

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