米国のニュースサイト「ブルームバーグニュース(Bloomberg News)」は、2018年5月21日夜に「中国:産児制限の終了を検討、年内にも決定へ-関係者」と題する記事を掲載した。同記事は次のように報じた。
事情に詳しい複数の関係者が明かしたところによれば、中国政府“国務院”は「世帯当たりの子供の出生数に関するすべての制限」を撤廃する計画を協議中である。産児制限による計画出産政策はおよそ40年にわたって続けられてきた。産児制限を終了させた場合に、それが社会に及ぼす影響に関する調査はすでに委託済みで、この結果を踏まえた協議がまとまれば、2018年の年末にも決定が下される可能性もあるが、2019年にずれ込むことも有り得る。協議中の案では、人口管理を個人の選択に任せ、子供を何人持つかは個人が決定できるようになる。中国の産児制限は数多くの人権侵害が指摘され、労働力不足を招いたが、歴史的な打ち切りへと向かいそうだ。
中国の人口抑制策の歴史について、米国ウィスコンシン州立大学の客員教授で中国人口学者の“易富賢”は、次のように述べている。
(1)1950~1970年、中国の人口増加は世界と同じペースであり、中国が全世界に占める人口比率は22%で安定していた。1971年に国務院が『計画出産の任務を立派に成し遂げる件に関する報告』を承認し、1973年には全面的な“晩・稀・少”政策<注1>へ移行した。当時の中国では「“一個太少、両個正好、三個多了(1人は少ない、2人は丁度良い、3人は多い)”」というスローガンの下で、子供2人までの出産は容認されていた。
(2)1980年に元“国家科学技術委員会”主任で、“中国工程院”院長の“宋健”が、もし1組の夫婦に子供を1人と限定する独生子女政策(一人っ子政策)を実施せず、今のままの出生水準が持続するなら、中国の人口は2050年には40億人に達するとの予測を提出した。この予測が後押ししたことによって中国は一人っ子政策の実施へ踏み切った。今ではこの宋健が提出した予測は誤りであったと考えられているが、当時はこの予測に異議を唱える者もなく、中国は1980年9月に一人っ子政策の実施を一部の地域から開始し、実施地域を順次拡大する形で、1982年頃には全国で統一的に実施されるようになった。
中国については、多くの人が今後も発展を続けアメリカと世界を2分する時代も近い、とバラ色の未来を語るケースが多かったが、いつも違和感を持っていた。
その一つが、これからやってくる人口の急減と高齢化である。私の知っている中国の中堅や若者は、一人っ子政策の時代に生まれ。育ち、周りも一人っ子ばかりであることから、これが日常風景となっていて、これに疑問を感じていない。つまりは“一人っ子政策”ではなく“一人っ子文化”の国になってしまっていると思う。これでは、政府が政策を緩和しようが2,3人目を推奨しようが誰もメリットを感じないし、出産に踏み切る人も多くはないであろう。
もう一つは、世界一の大好きな政府が短期間に強力に推し進めてきたインフラ整備である。世界一の高速鉄道網,橋梁、そして一帯一路のインフラ建設・・・、これが人口減と経済の成熟とによりGDPが減速する中で、世界一の運営経費と世界一の保守修繕費用を中国にもたらすことになるのだが、対策は立てているのだろうか?いつも疑問に思っている。(2018/06/01 11:25)