3メガ銀、米金利乱調で外債運用が課題-前期は収益構造の弱さ露呈

  • みずほFGは業務純益を直撃、外債ポートフォリオ運用難
  • 邦銀の外債、株のエクスポージャーは突出-S&P吉澤氏
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

米国の金利上昇に伴う米債運用難に続き、イタリアの政治不安を要因とした欧州債からの資金逃避。債券市場の変調は邦銀の収益圧迫要因となっている。顕在化したのは有価証券運用リスクにさらされやすい邦銀の収益構造だ。 

  みずほフィナンシャルグループは米債運用不振などで本業のもうけを示す業務純益が前期(18年3月期)に前年比で3割減となった。坂井辰史社長は5月15日の会見で、前期の業務純益が大幅減少した理由を「過年度に稼ぎ頭だったドル外債のポートフォリオ運用が難しい状況になったのが大きな要因」と述べた。業務純益31%減少は、三菱UFJフィナンシャル・グループの13%減と比べても大きく、三井住友フィナンシャルグループは6%の増加だった。

  S&Pグローバル・レーティングの吉澤亮二シニアディレクターは、根本的な問題として、邦銀の有価証券や株式のエクスポージャーが自己資本や収益に比べて国際的にみて突出して高い構造にあることを挙げた。株式持ち合いなど歴史的経緯や、国内での貸し出し利回りが低いなどの背景があり、欧州の銀行に比べて支店や人員の整理が遅れていることから、吉澤氏は「重たい経費構造を賄うため」にリスクを取らざるを得ない状況が見て取れると述べた。

投資有価証券割合が高い

邦銀3メガと米時価総額トップJPモルガンの比較

出所:ブルームバーグ・グローバルデータ

投資有価証券の資産合計に対する割合

  前期決算での要因は米金利上昇で、価格が下落した外債損切りの影響などから国債等債券益は2グループで減少し、みずほFGはマイナスに落ち込んだ。同社は前期、運用ポートフォリオ適正化を目的に保有外債の減損処理で約500億円の損失を計上した。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは、今後も金利上昇が見込まれる中で合理的な損失処理だったとした上で、外債運用が厳しかったことを象徴する決算だったとコメントした。

  みずほFGで特に影響が大きかった理由について、S&Pの吉澤氏は、評価損が膨らみ利息収入が減少する中、どこで処分に踏み切るかのタイミングの違いと指摘。問題は、運用益が得にくい環境で外債のウエートを高めざるを得なかった邦銀の経営環境にあると述べた。

異なる対処法

  みずほFGの坂井社長は会見で、債券運用はレポ取引(現金担保付債券貸借取引)をベースに調達と運用をマッチングし、リスクコントロールをしている述べた上で、「外債のポートフォリオが少し減って、株にウエートを置く形」でアセットリロケーション(分散投資)を進めていると語った。前期末の外債保有残高は約8兆3000億円で前年の9兆円から減少。評価損は1661億円だった。

  邦銀最多の外債を保有するMUFGは、外債の保有残高を昨年12月末比約2兆4000億円減らした。前期末残高は17兆4000億で評価損は1391億円。国債等債券関係益はその前の期に比べ約500億円減少した。JPモルガン証券の西原里江アナリストは、ポジション圧縮により資金利益に入る利息収入は減少するとコメント。一方で、米ユニオンバンクを傘下に持つなど金利変動が法人向けより少ない個人預金が豊富なことから、金利上昇のマイナス影響は資金調達面で限定的との見方を示した。

  平野信行社長は決算会見で、保有外債のうち金利上昇の影響が大きい米国債は7割を占めると明らかにした上で、一定の金利水準を見極めた上で欧州債も選択肢に機動的に対応していくと述べた。

  三井住友Fの外債期末残高は、前々期の7兆637億円に対し前期7兆1576億円と微増だった。評価損は約1100億円から約1594億円に膨らんだが、西原アナリストは「見た目は含み損があるように見えるが、デリバティブなどでヘッジをしている」として、リスクコントロールで実際の利益には響かない形になっているとの見方を示した。

さらなる損失も

  ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリスト、フランシス・チャン氏は、3メガ銀が今後、米国債利回りの上昇に伴い含み損を減損処理する可能性があると指摘した。

  米投資銀行キーフ・ブルイエット・アンド・ウッズのアナリスト、デービッド・スレッドゴールド氏は、みずほが外債運用で500億円の損失を計上したこと自体は大きな驚きではないが、マイナス分を補う収益源が与信関係費用の戻し入れや政策保有株の売却であったことを問題視、「銀行の本来のビジネスではない」とコメントした。

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