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すべての業界がチャットボットを活用すべき7つの理由とブランド事例

どの業界のどの会社も、いつかIT企業にならなければいけない。そうでなければ、これからの時代は生き残っていけない

昨年サンフランシスコで開催されたドリームフォースで、アディダスのブースの方が言っていた印象的な言葉である。アディダスはデジタルチャンネルの強化を推し進める一環としてチャットボットを導入し、パーソナライズされたユーザー体験を作り出そうとしている。

日進月歩するAIによって、これまでになかったITと他分野とのコラボレーションも進んでいる。実際に、フィンテックのような「テック」と、スマート家電のような「スマート」がついた言葉がどんどん身の回りに広がってきている。

これにより、これまであまり「テック」や「スマート」と言った言葉と馴染みの薄かった消費財メーカーなどにも、テック化しスマートになっていくことが求められる。スマートなUXがユーザーにとってのディファクトになっていくからである。

一方で、AIがどんどん進化していく中で、逆にどうやってAIを活用していったらいいか、そもそもそんなに必要なものなのか疑問に思っている人も増えているのではないだろうか。

AIとなると、技術の部分が注目されがちだが、見落とされがちなのはUX的観点を持ったデザインをサービスに落とし込めるかということである。これがなければせっかくチャットボットを導入してもカスタマーエクスペリエンスの向上には繋がらない。

この記事では、比較的身近にあるAIの事例としてチャットボットを取り上げ、それを導入している消費財メーカーがどのようにしてカスタマーエクスペリエンスを向上させたかについてご紹介したい。

なぜチャットボットが必要なのか?

チャットボット(以下ボット)はオムニチャンネル化が加速する消費財マーケティングで、今後も需要の成長が見込まれているサービスである。そもそもなぜ近年ボットの需要が高まっているのだろうか。Digital Doughnutではボットが企業にもたらす利点として次の7つをあげている:

1. トレンドである

多くの企業がFacebook MessengerやKikといったメッセージングアプリや自社のアプリにボットを導入し始めている。ボットというチャンネルがユーザーの中でディファクト化すれば、ボットを持っていないことがマイナスになってしまう。

2. カスタマーサービスの向上

営業時間や場所を選ばないので、いつでもどこからでも利用でき、カテゴリーや管轄部署に関係なく、広範囲の質問に瞬時に回答できる。また、担当者の経験値に関係なく、均質なサービスが提供できる。

3. カスタマーエンゲージメントの向上

同サイトが紹介する調査では、ボット導入後、ソーシャルメディアにおけるカスタマーエンゲージメント率が導入前に比べて20%上昇したという。また、プッシュ通知などを通じて、カスタマーに企業側からリーチできるという点も大きい。消費者意思決定プロセスにおいて、消費者が「情報収集」の段階に入る前の段階で、問題提起をして購買意欲を刺激することができるからだ。

4. インサイト情報の取集・分析

ボット上でのやり取りから得たデータをもとにパーソナライズされた内容を表示・提案できるだけでなく、商品に合わせたマーケティング戦略を練り直すこともできる。

5. より良いリードの創出・絞り込み・育成

見込み客に対してパーソナライズされたメッセージとともに、自然な流れで必要な情報を尋ねることができるため、インサイトを得やすい。それにより、リードの創出やリードを次のステージに進めることが容易になる。

6. グローバル市場へのリーチ

ボットなら、24/7で利用できるだけでなく、基本的な質問なら多言語にも対応できる。ただし、商習慣や文化の違いによって、ローカリゼーションが必要になってくることを忘れてはならない。

7. グローバル市場へのリーチ

独自に複数のモバイルプラットフォームに対応したアプリを開発したり、専門の人材を採用するより安い。また、1つのシステムで1対多数のユーザーを同時に24/7で対応できる。

チャットボットで何が提供できるのか

では実際に、ボット活用方法にはどのようなパターンがあるのだろうか。ボットに最終的によってもたらされるのはカスタマーエクスペリエンスの向上だが、その内容は様々だ。企業が提供する一般ユーザー向けのボットサービスを見ていくと、大まかに次の5つに識別できそうだ:

1. 探す(検索)・提案

ユーザーへの質問や過去のデータをもとに、その人の嗜好に適したものを探して提案。商品だけでなく、天気予報の通知や関心のあるニュースなどもピックアップしてくれる。

2. コンシェルジュ / 予約・購入

予約やオンラインショッピング時の面倒な入力作業を必要とせず、簡単なやり取りでボットがレストランの予約やチケットの購入を代行。Google Duplexでは自分の代わりに電話もかけてくれる。他には、Siriに代表されるように、ユーザーの司令に応じてスケジュールを作ったり管理したりしてくれるものもある。

3. カスタマーサービス

簡単な質問やよくある質問に対して、即座に回答または目的のページに誘導。必要であれば、人間のエージェントに繋ぐこともできる。

4. アドバイザー / 講師

健康管理や金融といった専門的な知識を必要とする分野へのアドバイスを提供。学習用のサービスでは、ユーザーの理解を促す手助けをしてくれる。

5. 会話の相手

おもちゃや、Softbankのペッパーのような、コミュニケーションそのものを目的にしているもの。

チャットボットの実用例

上記のパターンはあくまで目安であって、機能をこれらだけに限定する必要はないし、1つに絞る必要もない。実際に企業はどのようにボットを使っているのだろうか。

カバーガール

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<画像引用元:Kik: Kalani Hilliker’s Bot>

カバーガールは1950年代から続くコスメティックブランドで、長らくP&Gの傘下に収められていた。数年前に別の企業に売却されたのを機に、ミレニアル世代やそれに続くジェネレーションZを主なターゲットとした新興のライバルに対抗するべく、デジタル化に注力している。

その1つがインスタグラムで480万人のフォロワーがいるカラニ・ヒリカーという2000年生まれの芸能人(ダンサー・女優・モデル)の名を冠したボットだ。言葉遣いや絵文字を通して、彼女のパーソナリティーをボットに反映させることで、より若い世代が関心を抱きやすくなっている。彼女と会話を続けるとクーポンをゲットできるという「おもしろ要素」も組み込まれている。

H&M

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<画像引用元:Kik: H&M>

ファストファッション・ブランドのH&Mでは、ボットがユーザーとの初めのやりとりにおいて、スタイルの異なる洋服の写真を直感的に選択させることで、各自の好みに合ったスタイルを探っていく。ある程度スタイルが確定すると、ユーザーの好みに適したものを優先的に提案することで、小さなスマホの画面から何度もページを読み込むという面倒な作業が減る。

ジョニーウォーカー

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<画像引用元:Facebook Messenger: Johnnie Walker>

約200年の歴史を誇るウイスキーブランドのジョニーウォーカーは、ブランドの歴史や商品の紹介、ウイスキー全般に関する知識を教えることでブランド・ロイヤリティを高めようとしている。また、サードパーティーと協力することで、ジョニー・ウォーカーを使ったカクテルのレシピや近所で商品が買える場所の紹介など、幅広いサービスを提供している。

アブソルート

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<画像引用元:Lyft Blog

同じくリカーメーカーのアブソルート ウォッカは、ボットを通して、ユーザーがバーに行くのを促すキャンペーンを行った。無料でアブソルートウォッカが体験できるバーを告知し、実際に行ってくれた人には、シェアライドサービスのLyftのクーポンを配布して安全に帰ってもらうという一連の流れによって、バーを介したO2O(Online to Offline)体験を作り出した。このキャンペーンでは4.7倍の売上増加に成功した。

ドミノピザ

ドミノピザは、Facebook MessengerだけでなくAmazon EchoやTwitterなど、あらゆるソーシャルメディアやメッセージングプラットフォームからピザの注文を可能にしている。

彼らのボットは、ピザのカスタマイズはもちろん、注文した品が今どの工程にあるのか(トッピングしているのか、焼いているのか、など)、配達までどのくらい時間がかかるのかまで分かるようになっている。これによってユーザーは、ちゃんとオーダーが通っているのか、時間通りに配達されるのか余計な心配をしなくても良い。

チャットボットを作るときに注意すること

最後に、チャットボットを導入するにあたって、考える必要があることは何だろうか。チャットボットの開発自体は、作成サービスなどを利用してコーディングなしに行うことも可能だ。

しかし、もっとも重要なのがそれより前の段階におけるUXデザインの設計である。対象は誰で、何の目的のために使ってもらうのか。どのようにその目的を達成するのがユーザーにとって最適なのかといったことからコンセプトを考えていく必要がある。

関連記事:チャットボット (Chatbot) とは? 【ChatBot入門編】

PwCのレポートでは、チャットボットのようなデジタルアシスタントへの認識を調査したところ、「スマートで友好的」に対して「ロボットっぽく(人間味がなく)て限定的」と感じる人がほぼ同率だった。

同じテクノロジーでもユーザーが受け取る印象がポジティブにもネガティブにもになりうるということである。ユーザーが「親切なサービス」と感じるか「どこか違和感があるな」と感じるかは、UXデザインが大切になる理由である。

まとめ

AIから電話がかかってくる時代が来ようとしている。どの業界であっても、テック化していくことがユーザーから当然のように考えられる中で、チャットボットは身近なAIとして、今後も広がっていくことが予想されている。

チャットボットは単なるメッセージングサービスではなく、カスタマーサービスの向上やインサイトの分析に活かせるなど利点も多い。例としてあげたように、あらゆる業界でチャットボットの利用が広がってきている。その使われ方は、用途に応じて様々だ。

しかし、ユーザー視点に立ったUXデザインがなされなければ、せっかくカスタマーエクスペリエンスの向上のために導入したチャットボットも、ユーザーにかえって悪い印象を与えかねないので、注意しなければならない。

参考:

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