「暫定」とは名ばかりだ。
米軍は、米アラスカ州エレメンドルフ空軍基地に所属するF22ステルス戦闘機の、嘉手納基地への暫定配備を開始した。5月30日に10機が飛来、6月1日までに計14機の配備を完了する。
米朝首脳会談を控え、北朝鮮に圧力をかける狙いがあるとみられ、配備は約1カ月を予定しているという。
嘉手納基地は5月5日、約6カ月間暫定配備されていたF35A戦闘機12機が、米本国へ帰還したばかり。1カ月足らずで、再び10機以上の外来機が配備される事態に、地元自治体や県から強い反発の声が上がるのは当然だ。
沖縄防衛局が、県や地元自治体に今回の暫定配備を通知したのは、最初に飛来した4機が嘉手納基地に到着するわずか2時間半前のことだった。「通知」というにはあまりに遅く、地元軽視の批判は免れない。
嘉手納基地への外来機の暫定配備はこの間、繰り返されている。数週間から時には年単位に及び、F22は2007年以降16年まで、数カ月単位で配備されてきた。
ほかにもF16、F35A、FA18、AV8などの配備が後を絶たない。加えて1~2機単位の飛来も間断なく続いており、外来機の存在はもはや「常駐」そのものといえる。
外来機の常駐化による基地負担の増大は、17年度の防衛局の調査でも明らかになった。嘉手納基地の全機種の飛行調査によると、離着陸回数計5万8066回のうち、約35%に当たる2万281回を外来機が占めた。
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外来機の常駐化で懸念される一つが騒音被害の激化だ。
沖縄市が実施した調査では、今回、F22が市登川を通過した午後3時すぎに101・7デシベルの騒音を測定した。電車が通る時のガード下の騒音に匹敵する。
専門家による16年の調査では、嘉手納基地でF22が訓練を開始した前後で騒音が平均値5デシベル大きくなった。
県の騒音調査でも同様の結果が出ている。12年にF22配備前の約1カ月と配備後約2カ月の平均値を比較すると、W値(うるささ指数)は11測定局のうち6局で増加し、滑走路に近い嘉手納町屋良では5ポイント悪化した。
今回の暫定配備について、嘉手納町の當山宏町長は「やっと落ち着いたと思ったのに再び追い打ちをかけるような配備だ」と批判した。
言葉には、日々爆音に接する地元自治体の危機感が伝わる。
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施政方針演説や国会答弁で度々「沖縄の基地負担軽減に全力で取り組む」と表明してきた安倍晋三首相。一部の訓練移転や施設返還を強調する一方で、増える外来機の負担にはこの間、一切言及していない。
米軍による通知が遅くても、なくても、日本政府は抗議するわけでもない。これでは、本当に沖縄の基地負担を軽減する気があるのかと疑わざるを得ない。
「(暫定配備は)決して容認できず、直ちに撤退してほしい」という當山町長の言葉に耳を貸すべきだ。