今国会において、「生活保護家庭の子どもの大学進学」に関しての議論がおこなわれている。
生活保護家庭の子どもの大学進学については何度か書いたことがある。簡単に言うと、以下の問題がある。
・生活保護世帯の子どもの大学進学は制度的に認められていない(働ける人はまず働くと言う原則があり大学進学は考慮されていない)
・例外的な措置として「世帯分離」という方法をおこなうことにより大学進学を可能にしているが、この方法は子ども本人や生活保護世帯に負担がくるものである
・実際に子どもが大学進学をすると子ども分の支給額が減額され(世帯によっては6万円以上減額されることも)、子どもは学費を奨学金で全額まかない、自分の生活費をアルバイトで稼ぐ生活を強いられる
・これらの実態により、生活保護世帯の大学進学は19.2%であり、一般世帯が53.9%であることを考えると大きな差が開いてしまっている
この「生活保護家庭の子どもの大学進学」について、政府は今国会で「進学準備給付金」という新しい制度をつくり、支援をするとしている。
この「進学準備給付金」の創設により、大学等(短大や専門学校含む)に進学する生活保護家庭に子どもには、自宅からの通学の場合は10万円、自宅を出て進学する場合には30万円を支給することになる。
このことは、これまで大学進学を制度上認めていなかったことをふまえると大きな一歩とも呼べるだろう。
とはいえ、実際には、これまでの「世帯分離」という扱いは変わらない。10万~30万円の一時的な資金は支給があるものの、これは一回のみの給付金であるので、学費を奨学金で借りること、生活費をアルバイトで稼がなければならないことには変わりはない。
一歩進んだことは大きく評価したいと思うが、この施策によって支援できるのはあくまで本当にほんの一部であることは注記しておきたい。
一方で、野党は6野党の合同で対案を出している。
野党案の内容としては、「世帯分離」という扱いをあらため、生活保護を利用しながらの進学を可能にするものである。
もちろん、奨学金の扱いなど技術的に詰めなければならない部分はあるものの(自立更生計画の策定等でまかなうのか等)、生活保護制度の制度内での進学を可能にする内容で大きく踏み込んでいる。
生活保護世帯の子どもの大学進学という観点からは、当然、野党案の方が進学への道は開けるだろう。国会での今後の論戦に期待するとともに、この生活保護世帯の子どもの大学進学がより容易になるように、政治の決定に期待したいところではある。
そもそもが、生活保護家庭の子どもの大学進学率がとても低すぎる。
一般家庭の進学率が、大学等(大学・短大)が53.9%、専修学校等が17%で進学率全体は70.9%に対して、生活保護家庭の子どもは、大学等(大学・短大)が19.2%、専修学校等が13.7%、進学率全体が32.9%である。
生まれた家庭によってこれだけの「格差」が出ていることに関しては早急な対策が必要なのは言うまではない。