新聞販売店が飲食店の出前まで始めたワケ
出前の配達シェアリングはどこまで広がるか
新聞は販売部数の漸減が続き、新聞販売店の経営状態は年々厳しさを増している。販売店の疲弊は部数減を加速しかねないだけに、新聞社にとっても販売店の収益多角化は課題だった。そこに登場したシェアデリ事業は販売店・新聞社双方にとって干天の慈雨。「配達用バイクや配達ノウハウといった新聞販売店の強みを生かせる」と販売店も好意的に受け入れた。
夢の街創造委員会は当初、朝日新聞社以外の新聞社にも声をかける意向だったが、先にアポイントがとれた朝日新聞社に義理を立て、今後は「ほかの新聞社とは組まない」(夢の街創造委員会の中村利江代表)という。
シェアデリを導入した飲食店の反応はどうか。2017年6月にシェアデリを導入したハンバーガー店の店長は「設備投資や交通事故のリスクを考え、デリバリーには二の足を踏んでいた。シェアデリは売上増に貢献している」と笑顔で話す。配達機能が元からあり出前館に加盟している飲食店でも、自前での配達をやめ、
シェアデリ拠点数を3倍超に拡大へ
2017年3月に神奈川県相模原市のASAが業務を開始してから9カ月。ASAに加え、
シェアデリを伸ばす上で課題はないのか。飲食店の人手不足対策で始めた取り組みだが、やはり配達を担うスタッフを安定的に確保し続けられるかがポイントになる。シェアデリ事業に参入した新聞販売店も知恵を絞っており、中には出前に電動アシスト自転車を使う店もある。運転免許がない人やシニアも活用できる。
また、配達スタッフの質も大事だ。スタッフの接客態度が悪ければ、飲食店や出前館に対するユーザーの印象が下がる。ユーザーと飲食店双方に継続的に使ってもらう上でも、シェアデリ拠点は配達スタッフの接客態度や習熟度に目配りする必要がある。
こうした課題を乗り越えられれば、シェアデリには商機があるといえる。出前需要は堅調に推移しているからだ。外食産業が総じて苦戦を強いられる中、出前館を運営する夢の街創造委員会は、目下5期連続で増収・営業増益が続いており、この5年間で時価総額は60億円から880億円へと、およそ15倍になった。新聞販売店との協業で始めたシェアデリは、出前館のさらなる成長エンジンになるか、その成否が注目される。