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「生活保護法改正」は一体誰のため? 5つの問題点を徹底解説

このままでは当事者が…

当事者のための「改正」なのか?

現在、国会(第196回通常国会)において、生活保護法改正法案(以下、「改正案」)が議論されている。

すでに衆議院では可決しており、昨日(5月31日)には参議院の厚生労働委員会でも可決した。

本日(6月1日)の午後、参議院の本会議で採決予定と聞いている。与党が多数なので、ほぼ成立すると考えてもいいだろう。

生活保護法は、生活保護制度の根拠となっている法律だ。現在の生活保護法は1950年に成立してから68年間、憲法25条で規定する「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために生活に困窮した人たちを支えてきた。

生活保護法自体は成立から長らく改正されてこなかった法律であるが、2013年に不正受給対策や扶養義務の強化などの観点から初めて改正され、その5年後の今回、さらなる改正に向かっている。

 

2013年の改正の内容、問題点については下記を参照してもらいたい。

2010年代に始まったいわゆる「生活保護改革」は必ずしも当事者のための制度改正であるとは言えない。

生活保護の基準の見直しという名での引き下げ、不正受給対策という名での受給抑制につながりかねない申請手続きの変更や扶養義務の強化、働ける年齢層を対象とした新制度(生活困窮者自立支援制度)の創設……生活保護制度がもともと持つ「権利」としての要素を少しずつ切り落としているようにも見える。

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社会保障削減としての「生活保護改革」

また、財政的な観点からも「生活保護改革」は語られがちだ。

昨年12月に閣議決定された経済財政諮問会議における経済財政再生計画における「改革の工程表」によれば、財政的な観点からの「改革案」が明らかになっている。

具体的には2018年度中におこなうこととして、

・生活保護受給者の後発医薬品の使用割合について、2018年度までに80%とし、後発医薬品の使用の原則化などに向けた所要の措置を講じる

・頻回受診等に係る適正受診指導を徹底するとともに、頻回受診者に対する窓口負担について、頻回受診対策に向けた更なる取組の必要性、最低生活保障との両立の観点なども踏まえつつ、いわゆる償還払いの試行も含めた方策のあり方について検討する

・生活保護受給者に対する健康管理支援の実施等に向けた必要な措置を講ずる

・級地制度について、地域ごとの最低生活費を測るための適切な指標の検討を行い、速やかに抜本的な見直しを行う

が挙げられている。

また、KPI(政策評価の指標)として、就労者や増収率などの数字や、後発医薬品の使用割合などを明記している。

これらの「生活保護改革」は、生活困窮者の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するためのものではない。

後発医薬品の使用促進も頻回受診対策も健康管理支援も、いずれも財政的な観点からの「改革」である。