朝鮮半島の非核化が実現し、南北朝鮮が平和協定を結んだら、在韓米軍はどうなるのか。日本にとっては、非核化と並んで、こちらも死活的に重要な問題だ。米朝首脳会談の開催は流動的だが、論点を整理しておこう。
米朝首脳会談については、訪米した北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長が5月30日夜(日本時間31日朝)、ニューヨークで米国のポンペオ国務長官と会談した。議論は31日(同6月1日)も続く見通しだ。
北朝鮮側は「段階的な非核化」で、ぜひ開催にこぎつけたい。米国側は「完全で検証可能、非可逆的な非核化」で譲らない。これが基本構図である。結果は予断を許さないが、北朝鮮は「当面は言葉の上だけでも妥協し、後で反故にする」作戦に出る可能性もある。
北朝鮮はこれまで何度も約束を破ってきた。だから、仮に北朝鮮が妥協して首脳会談の開催にこぎつけたとしても、それで「世界はハッピー」とはならない。約束を直ちに実行するかどうか、それをどこまで検証できるかが、最大のポイントである。
さて、米朝首脳会談が開かれるかどうかは別として、中長期的に見ると、在韓米軍の撤退問題が重要課題になるのは避けられない。5月18日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55704)で書いたように、南北朝鮮は平和協定の締結を目標に据えているからだ。
それは、南北朝鮮が4月27日の首脳会談で発表した「板門店宣言」に記されている。念のために確認しておこう。
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南北は、休戦協定締結65年になる今年中に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための南北米3者または南北米中4者の会談開催を積極的に推進していくことにした。
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休戦協定は、朝鮮戦争(1951〜53年)を戦った北朝鮮+中国人民志願軍の代表と米国を中心とする国連軍の代表、それに国連軍と中国、北朝鮮の司令官の5人が1953年7月に署名した協定である(https://www.ourdocuments.gov/doc.php?flash=true&doc=85&page=transcript)。休戦協定は戦闘中止を宣言したにすぎず、戦争そのものを終結したことにはならない。
南北朝鮮は今年中に終戦を宣言して、休戦協定の平和協定への転換を目指している。これが実現すると、直ちに在韓米軍の撤退問題が浮上する。なぜかといえば、5月25日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55817)で書いたように、そもそも米軍が韓国に駐留しているのは、休戦中の北朝鮮が突然、攻撃してくるのを阻止するためであるからだ。