法華狼の日記

■[ネット]デイリーメールについての町山智浩氏の説明をアウトと批判するketudan氏は、「女性自身はゴシップ記事だらけの女性向け週刊誌」という説明も女性蔑視でアウトと批判するのだろうか？

まず、三浦瑠麗氏*1が主張の根拠にタブロイド紙をもちだした問題にからんで、ツイッターで町山智浩氏*2が事例をあげて批判ツイートしていた。

@TomoMachi: 三浦さんが根拠にしているデイリーメール紙は、移民をテロリスト扱いしてＥＵ離脱を煽っていたイギリスの労働階級向けのタブロイド紙です。URL

2018-02-13 01:44:29 via Twitter Web Client

単純に信頼性がないというだけでなく、労働者階級へ向けて移民への憎悪を煽るようなメディアということから、三浦氏の問題の主張との関連性を見いだすこともできる。

この批判ツイートに対してid:ketudan氏が、「この発言は文脈的に完全アウトですよね？」と批判エントリをあげた*3。

町山智浩が言ったら下層階級蔑視も庇う人達 - ここはお前の日記帳

nejipico イギリスには今も階級が存在してることを無視して「労働者階級向け」で噛みつくのはただの言葉狩り。

2018/02/15

ここでは「労働者階級」という言葉が狩られているわけではないし、労働者階級の存在が否定されているわけでもないですよね。「労働者階級は実在する！」という頓珍漢な擁護論陣を貼ってる人達は０点。

上記のようにnejipico氏へ反論したketudan氏は、日本社会で理解しやすいようにと「高卒」でたとえた。

・「日本社会には高卒が存在します。」＝セーフ

・「ゲンダイ・フジはクズ記事ばっかり載せてる新聞です。」＝セーフ

・「ゲンダイ・フジはクズ記事ばっかり載せてる高卒向けの新聞です。」＝アウトだろ。

・「バクサイなんか見てるのか、あんな下品なサイト」＝セーフ

・「バクサイなんか見てるのか、あれ高卒が見るもんだぞ」＝アウトだろ。

・「このワインは安いけど不味い、今後は買わないでください。」＝セーフ

・「このワインは安いけど不味い、高卒の飲み物ですよ。」＝アウトだろ。

簡単なことじゃん？

しかしこのketudan氏のたとえは、論点の隠蔽や飛躍、論理の転倒が見られる。

まず、「ゲンダイ・フジ」について実際に高卒が読者層なのか、きちんと検討していない。

たとえであれば前提が事実でなくてもいいとはかぎらない。クズ記事ばかりのメディアという印象が先にあれば、その読者層と根拠なく名指しすることは差別的な印象を生みかねない。

メディアの読者層を想定することは、必ずしも差別ではないはずだ。先に引用したように、nejipico氏への反論でketudan氏は「向け」という表現を無視している。それが地味に問題となってくる。

ketudan氏は、たとえで「ゲンダイ・フジは高卒向けの新聞です。」という文章も示して、セーフかアウトかを語るべきだった。

もし、すりかえを意図していないのならば、せめて事実とは異なる印象にひきずられないたとえを示すべきだった。

たとえば「女性自身は女性向け週刊誌」は事実だと思うが、ketudan氏はアウトと批判するだろうか。「女性自身はゴシップ記事だらけの女性向け週刊誌」も事実だと思うが、ketudan氏はアウトと批判するだろうか。

たしかに、女性向け週刊誌はゴシップ記事が多いという印象があって、それが女性はゴシップ好きという偏見につながるならば、蔑視を生まないよう配慮すべきではあるだろう。

もちろんゴシップ記事ばかりの男性向け雑誌もある。それゆえゴシップを女性だけが好むという偏見が誤りとわかるし、メディアごとの信頼性だけでなく読者層を説明する意味もわかる。

単純に「クズ記事」や「ゴシップ記事」といっても、想定される読者層によって予想される方向はちがってくるものだ。話題ごとの信頼性だけでなく、情報そのものの種類や、批判の強弱も変わってくる。

そして、「このワインは安いけど不味い、高卒の飲み物ですよ。」にいたっては、発端のツイートとまったく関係ない。

ketudan氏の文章では、安くて不味いことを根拠に話者が高卒向けと評価している。売り手が高卒向けに安くて不味いワインを出したという順序でなければ、発端のツイートのたとえとして成立しない。

「この高卒向けワインは安いけど不味い」と修正すれば、不味いワインを出したことで批判されるべきは売り手とわかる。どちらかといえば高卒の買い手は被害者であり、ワイン批判の対象ではないこともわかる。

買い手の需要が売り手の供給を継続させることも考えられないではないが、買い手が社会的な弱者であれば、その需要も社会の問題としてとらえるべきだろう。

労働者階級向けのタブロイド紙もそうだ。イギリス階級社会が生みだした問題メディアを批判することは、その読者層と想定された階級への批判とイコールではない。

ketudan氏は批判エントリで、下記のように語っている。

デイリーメールをバカや低能が読む新聞だとdisるのはよい。*1

「労働者階級」という存在を認めてその言葉を使うのもよい。

でもそれぞれを繋げたらそりゃアウトだろ。

＊1:デイリーメール関係者を傷付けるがポリコレ違反じゃないだろう

しかし町山氏による発端のツイートから、デイリーメールはバカや低能が読む新聞だという主張を読みとることはできない。読者層と利害が衝突する移民への憎悪をメディアが扇動することは、読者がバカや低能という問題ではない。

むしろketudan氏の注記こそ問題だろう。バカや低能あつかいした読者ではなく、メディア関係者が傷つくことしか想定していない。騙す側ではなく騙される側を「バカ」と考えているらしいことから、ketudan氏こそが内面に何らかの蔑視をかかえていることをうかがわせる。

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