2014年度5月のテーマ

日本の捕鯨ついて考えます

3月31日国際司法裁判所は、日本に南極海での「調査捕鯨」の中止を命令。資源量や鯨の生態を調査するはずが、10年間で作成された報告書は僅か2件。 調査のために年間千頭もの鯨を捕獲する科学的根拠がなく商業的と判断されました。調査捕鯨の必要性についてお聞きします。
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Q1
調査目的で捕獲した鯨の副産物(鯨肉)は、大半が市場に流されています。ここ1~2年、鯨肉を食べたことがありますか?
 日本の調査捕鯨に反対するグリーンピースシーシェパードの反対行動を、ニュースとしてご覧になられた方は多いと思います。しかし、商業捕鯨停止を受け入れた日本が、どうして捕鯨をしているのか、またどこの会社が捕鯨を行っているのか、詳しく知る日本人は少ないはずです。何より多くの日本人は、鯨肉を食べておらず、牛肉や豚肉や鶏肉に対するほど関心を持っていません。
 実際に、この1~2年で鯨肉を食べたことがある会員様は、少数です。54.0%の方が「ゼロ回」と回答されており、食べた事がある方も「2~3回以内」(32.2%)と回数が少ない方が大半です。「何度もある」と回答された方は、9.2%と1割未満でした。但し、この9.2%という数字も、実際よりも膨らんだ数字である可能性があります。
 というのは、今回のアンケートでは、鯨肉を食べる方の率が低い40代以下の若い年齢層で回答者数が先月より大幅に減少しているからです。特に、20代の回答者はゼロ人へ、40代の回答者は、ほぼ半減と大きく減少。若い年齢層が大きく減る中で、最も鯨肉を食べる50代(「何度もある」が14.9%)の減少は少なく、「何度もある」方の比率を押し上げています。ちなみに70歳以上の「何度もある」方は、ゼロ%でした。鯨肉の硬さが、受け入れにくいのかも知れません。
 ここで、質問2以降の集計にあたって、知らない方が多いと思われる捕鯨の歴史について、おさらいをしておきましょう。古代から、捕鯨は行われており、食料の少ない時代、クジラは貴重な食料源でした。ところが中世から近代にかけて、捕鯨は食用目的から、主に灯油用の鯨油の採取を目的とした捕鯨に変わります。船が大型化しクジラサイズになり、捕鯨技術が発展すると、ますます捕鯨は盛んになります。そして、まずは大西洋、続いて北極海太平洋と次々と鯨の漁場資源を枯渇させていきます。最後に残った最も豊かな鯨の漁場が、南極海でした。ところが、ノルウェー、イギリス、日本、ドイツなどが、如何に多く鯨を取るかと言う捕鯨競争(捕鯨オリンピック)を繰り広げたため、豊かだった南極海の資源は、急激に減少。コクジラを始め次々と捕獲禁止になるクジラの種類が増えて行きます。そして、とうとう捕鯨主要国は、国際捕鯨協定を結び、資源保護のために動き出します。
 その後、捕鯨主要国は、国際捕鯨取締条約締結し、国際捕鯨委員会(IWC)を設立。捕獲量の制限を行ってきました。しかし乱獲のツケは大きく、資源減少が止まりません。科学者からの資源保護の主張が強くなったことから、IWCは、1982年商業捕鯨の一時停止(商業捕鯨モラトリアム)を決議します。1985年、日本もこの決議を受け入れています。
 ところが、商業捕鯨の停止に納得できない日本は、商業捕鯨を停止した翌年の1987年から調査捕鯨を開始します。ウィキペディアによると、日本の調査捕鯨は、初年度273頭の捕獲から、年々捕獲枠を拡大。最高は、2005年の863頭でしたが、最近は、民主党政権の財政節減やシーシェパードの妨害などにより捕獲数が低下。2013年度は、251頭となっています。 
Q2
市場での鯨肉の販売は不振です。鯨肉を食べる日本人が少なくなっているのが原因です。ご自宅の食卓に鯨肉は必要な食材と思いますか?
 遺跡の調査から、日本で鯨肉を食べる習慣は、縄文時代以前からあったことが判明しています。しかし捕獲の難しさや流通の問題から、近代になるまで主に産地である漁村で消費されることがほとんどでした。江戸時代になると船団を組んだ組織的な捕鯨が行われるようになり、捕獲量が増えたため鯨肉を食用とする地域は広がりを見せます。それでも第二次世界大戦終結までは、冷凍保存が普及していなかったため、消費が多かったのは、産地や大阪・京都などの西日本であり、産地以外の東日本では、まだ一般的な食べ物ではなかったようです。
 鯨肉が食用肉として日本の一般家庭に広まったのは、戦後の食糧難の時代です。冷凍などの保存技術と流通の進歩が重なり、鯨肉は一気に日本中に広がりました。しかし鯨肉は、牛肉や豚肉、鶏肉などの代用品的な食肉であり、多くの日本人が好んで食べた肉とは言い難いところです。それが証拠に、国内で養鶏や養豚が普及し、安価な食肉が供給されるようになると、鯨肉の消費は減少し始めます。商業捕鯨が中止された80年代後半には、流通量減少が加速。そこへ1991年の牛肉輸入自由化によってもたらされた牛肉の値下がりが追い討ちをかけました。日経ビジネス社の記事では、現在5,000tを超える鯨肉が売れ残り、冷凍庫に眠っているそうです。国はかつて普及していた学校給食で、再度消費を増やそうとしているようです。
 農林水産省は、鯨肉を食べる日本の食文化を守るためにも捕鯨は必要と主張しています。しかし、戦後の食糧難の時代と違い、豚肉や牛肉が安価で簡単に手に入るのであれば、鯨肉を選ぶ人が少なくなるのが現実です。それに、古くから鯨肉を食べていた沿岸部の漁村では伝統的な食習慣であっても、内陸に住む日本人にとっての鯨肉は、戦後の食糧難の時代に食べるようになった歴史の浅い食品で、今は好んで食べる人が少なくなっています。何よりも、会員様の半数以上(54.0%)は、ここ1~2年、一度も鯨肉を食べていません。
 そのため、自宅の食卓に鯨肉は「必要」と考える方(5.9%)は、極めて少数派です。最も多いのは、「全く不要」(43.5%)と考える人で、あまり必要ではない(「やや不要」)と考える人も、19.2%いらっしゃいます。
 面白いのは、質問1で鯨肉を何度も食べていると回答された方は「必要」を選んでいるのかと思いきや、「全く不要」や「分からない」選んでいる方が意外に多いという点です。反対に、回数ゼロ回の方でも「全く不要」ではなく、「必要」や「やや必要」選んでいらっしゃる方がいます。普段からご自宅の食卓に並ぶ食べ物か、並ばない食べ物かで「必要」「不必要」を判断していらっしゃる訳ではなさそうです。過去のアンケートに比べて「分からない13.8%)」と回答される方の比率が高いことからも、判断が難しい問題であることが推測されます。
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