外から見ていると、ツアー生活など気楽なものに見えるかもしれない。世界中の都市を訪れ、楽しいパーティでDJをし、プロモーターには郷土料理をご馳走になる。
しかし、見落とされがちなのは、度々、長期間、家を留守にすること…大切な人たちから、そして住み慣れた家から離れ、ホテルからホテルへ移動する日々。これは想像以上に過酷な挑戦で、Aviciiの訃報を知っていれば分かる通り、精神的な健康に被害を及ぼすことも少なくない。あるいは必要以上に慢心し、性格が変わり、クリエイティビティに悪影響を及ぼすことも考えられる。
したがって、DJとしては、ツアー中、心のバランスを見つけることが実に大切なのだ。
そんなツアー・サバイバルのノウハウについて、30年以上のキャリアを誇るカール・コックスより詳しい人物はそうそういないだろう。以下は、そんな彼が同胞のDJたちに贈る、ツアーを健康に乗り切るためのティップスだ。
水分補給を心がけ、睡眠不足にならないこと
これは度々言ってきたことだけど、ツアーで潰れてしまわないために重要なのは、できるだけたくさん水を飲むこと、お酒は控えること、そしてもちろんドラッグは厳禁だ。睡眠も超重要だよ。チャンスがあればできるだけ沢山寝る。これで、大概のことは乗り切れるさ。一度何かが不足してしまって免疫力が落ちてしまったら、おしまいだよ。
何事もほどほどに
振り返ってみると、なるべく多くのパーティをこなそうとするのは、かなり最悪なことの一つだ。どこかの時点でこなしきれなくなって、そうすると、今度は誰かを失望させる事態が発生する。自分も滅入っちゃうし、最悪は、自分を酷使しすぎて、病院行きさ。体が回復するための余裕がないと、必ず、どこかの時点で破綻するんだよ。これに勝てる人なんていないよ。ロボットじゃないからね。そして、そんなことしてると、その内、仕事が嫌いになってくる。ツアーだけの人生なんて、良いもんじゃないからね。心と体がバランスを保つためには、「DJばっかり」にならないことが大事なんだ。俺は、そのためにオーストラリアに住んでる。オーストラリアではDJの出番がないからね。車を走らせたり、旅行したり、新しい出会いを楽しんだりしてるよ。
そうやってくつろいでから業界に戻ると、常に100%の元気で新しいプロジェクトに取り組むことができるんだ。2年前には150回くらいDJしたけど、今年は35回だ。旅に出る回数は同じくらいだけど、毎回、全力でブチかましに行けるよ。これが、飛行機を降りて現場に直行みたいなパターンだと、どうしてもエネルギーが不足してしまうんだ。俺のDJを見にきてくれれば分かると思うけど、いつも汗かいて、笑顔で飛び回ってるはずだよ。正直、56歳がこんなことやってる場合かとたまに思うよ。寝巻きでパイプを燻らせながら「ワシも昔は」って話をしてたって良いはずだ。でも、前みたいに150回DJしながらこの状況を維持してたら、多分、今頃は地中2メートルあたりでくつろいでるはずさ。とにかく、人間なんだから、超人的に過酷な生活をしてしまってはダメだよ。無理なんだよ。
食に気をつける
俺は、食事はなるべく軽くするようにしてる。胃が、全ての食べ物をちゃんと消化できるようにね。DJの中には、プレイの前にガツンとステーキを食べて、赤ワインとプリンを流し込む人もいる。そんなことしてから飛び回ってごらんよ。お腹がびっくりして、すぐにトイレから呼び出しがかかるはずだ。南米に行くと、必ずと言って良いくらい、現地の人たちは肉とポテトでもてなそうとしてくれるんだ。俺は、正直に「ごめんなさい、野菜と、魚が食べたいです」と言うよ。連中、第一子を殺されたような顔をするんだぜ。それで、DJが終わってからは、好きなだけ食べるよ。翌日にかけてじっくり消化すれば良いからね。とはいえ、満腹で寝るのも良くないから、ツアー中は、食事に関することが結構難しいよね。とにかく自分の体のことを良く知って、これはやっても良い、これをやるとまずいってのを把握することが大切だよ。
自分のことを大事にしてくれる人に同行してもらう
自分のことを大事にしてくれる人がそばにいるってのは、すごく大切なことだよ。俺は、ずっとそういうダチがそばにいた。俺にとって良くないことが起きそうになってると、俺がそのことに気づく必要すらないように計らってくれたよ。20年以上の仲になる。結婚も、そんなに長続きしないことが多いだろう。俺たちは、のっけからお互いのことを理解しあってたんだ。だから、彼が俺の面倒を見てくれるのと同じように、俺も彼の面倒を見たよ。もし、同行者が何かとイライラする人だったり、次の渡航先について無頓着だったり、テックライダーがプロモーターに伝わってるか意識しないような人だったら、それは徐々にストレスになってくる。一度そうなると、もう、その人と縁を切るしか、解決策は無くなってしまうよ。もしそういうスタッフを選べるなら、学校時代からの友達とかが良いと思うよ。自分のこと、大体は分かってくれてるからね。
ストレスを溜めないこと
DJ的な形で世界中を移動するには、ストレスを溜めないことが肝心だ。ストレスを溜めるのに、良いことは一つもない。モニター・スピーカーの調子が悪いからって怒鳴り散らしても解決にならないよ。それより、使える機材でできる範囲内で、ベストを尽くすことだ。可能な限り、リラックスもしてね。俺は、1回のDJにつき、3日くらいかけるのがベストだと思ってる。プラハに行くとして、まず、DJ予定日の前の日に到着する。そうすれば、プロモーターの方達とゆっくりご飯を食べれるし、DJ当日は、少し観光をしてから、事前にサウンド・チェックをして、出番までのんびりする余裕もある。そして、パーティの後もホテルでぐっすり寝てから次の移動に入れるので、良い感じだよ。
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