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アメンボと卵寄生蜂

 
研究対象としているアメンボは正確にはナミアメンボという種類で、国内では最も一般的なアメンボです。改めて説明する必要のないほどよく知られた昆虫ですが、天敵となる卵寄生蜂が存在することはあまり知られていません。
 
アメンボの雌雄(左がオス、右がメス) 年中室内で飼育しています
 
 
簡単に卵寄生蜂の生活史を紹介すると、水面をふらふらしている卵寄生蜂は水草などに産みつけられたアメンボの卵を発見すると、産卵管を差し込み、アメンボの卵内に卵を産み込みます。卵寄生蜂はアメンボ卵内で卵から孵り、幼虫となります。その後、アメンボ卵の内部を食べながら成長し、そのまま卵内で蛹になります。さらに、アメンボの卵内で羽化し、ここで初めてアメンボ卵の外にでます。卵から羽化までアメンボ卵のみに頼って成長するので、成虫の体長はアメンボ卵とほぼ同じ大きさで1mmほど。ごく小さな蜂なので、よほど目を凝らさないと見つかりません。ですがこの卵寄生蜂、野外ではかなり高密度でいるらしく、8月ともなれば場所によっては9割以上のアメンボ卵がこの蜂に寄生されています。

アメンボの卵寄生蜂 飛ぶよりは歩く方が多い
 
 
卵を食われる側のアメンボはそれを回避すると見られる行動を示します。それは、潜水産卵です。アメンボは浮遊物や水草などに卵を産みつけますが、産卵する際にしばしば水草などをよじ登る(よじ潜る?)ようにして水中に入っていきます。そして、卵を産みつけた後、浮き上がってきます。しかし、水中に産むだけでは卵寄生から逃れることはできません。卵寄生蜂も同様に潜水して、水中に産みつけられたアメンボ卵に到達できるためです。しかし、水中深くにある卵ほど卵寄生を受けにくいことが明らかになっています(Amano et al. 2008)。
 
つまり、アメンボと卵寄生蜂は産卵深度をめぐる競走関係にあると言えます。
 
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