昨日の記事の答え合わせである。
解答には細心の注意を払っているが、間違いがあるかもしれない。
見つけたら教えてほしいです。お願いします。
2つのサイコロ
サイコロで出る目は互いに独立なので6分の1……としてはいけない!
確率の操作の基本に「同じサイコロでも区別する」というのがある。
サイコロ1とサイコロ2の出目を表にしてみると、下のようになる。
すなわち、見分けは付かないけど、確率を計算するときには、両者を区別するのだ。
ここに、少なくともどちらか片方が6になるものをマル、そうでないものをバツとして書き込んでいくと、
となる。〇は11個あり、そのうち「どちらも6である」のは1個。
よって、確率は11分の1になる。
ここで気付くべきなのは、「そもそも片方が6じゃないとゲームが始まらない」という事実。
つまり、「覆い隠してないほうが6である」という前提条件が必要だから、普通の場合の確率とは数字が違うのである。
箱に隠したトランプは…?
最初に箱に入れてるから、後から見たハートの図柄3枚は確率に影響しない……よって52分の13で、答えは4分の1だ!!としたら間違い。
その理屈で行けば、後から13枚見た結果が全てハートの図柄でも、箱に入れたトランプがハートの確率が4分の1になってしまい、おかしくなる。既に13枚出ているからハートの確率は0になるはず。
ここで気を付けるのは、「図柄を見ていないのだから、先に箱に入れても後に入れても確率は同じ」という事実。
確率は情報を入手すれば変わってくるけど、入手してなければ変わらないのだ。
問題を変えて、
「最初に3枚見たら全部ハートの図柄だった。次に引くカードもハートである確率を求めよ」としてもよいはずで、そうすると皆さん正しい答えを出せると思う。
だからこの問題の答えは、
(52-3)枚中、(13-3)枚のハートを引く確率だから、
答えは49分の10となる。
ガチャ
確率の操作に慣れない人は、「確率1%のやつを100回施行すれば、必ず1回は起きる」みたいに思っているかもしれないが、それは違う。
計算はたぶん100分の1に100をかけて1になったからこう結論づけたのだろう。
ためしに、「1枚のコインを2回振ってみて、2回中必ず1回はオモテが出るかどうか」を考えてみるといい。
さっきの例と同じように考えれば、2分の1に2をかけて、1になるから、必ず1回は起きるのだ……となるが、実際には「2回ともオモテが出るのが4分の1、オモテウラ両方出るのが2分の1、2回ともウラになるのが4分の1」だから、必ず1回はオモテが出るなんて言えない。
今回の問題の計算方法は以下のようになる。
まず、
「100分の1の確率で当選するガチャを100回引いて、当たりが出る確率」
というのは、
「ガチャ100回引いても、一回もあたりが出ない確率」を、全体(つまり1)から引いたもの
とみなすことができる。全体というのはあらゆる試行のことだ。当たりが出たとかでないとか何回出たとか、そういうのは抜きにして、とりあえずあらゆる試行をカウントする。
なぜ全体の確率が1になるのか。それは、全体の試行を言い換えると、「出現しうるパターンの中で、どれかにヒットする確率」だからだ。サイコロ2個の例でいえば、「サイコロを2個振って、どれかの目が出る確率」が全体の試行、つまり1である。
サイコロを振ったのに目が出ないということはないように、ガチャも、100回引いて当たりが何回目かに出たり、何も出なかったりするが、それら全部をカウントしたのが全体の試行なので、やはり確率は1である。
で、100回やっても一回も当たらない確率というのは逆にいえば、「100分の99で当たる確率のガチャを100回引いても1回も当たらない確率」と同じなので、100分の99を100回かけて、それを1から引けばよいことになる。これを求めるとおよそ0.634。
だいたい60%は、少なくとも一回は当たることになる。
いや逆に言った方が伝わるだろう。「100回ガチャを引いたのに、1回も当たりが出ない確率は、だいたい37%である」と。これを大きいとみるか小さいとみるかは、あなた次第だが。
ちなみに……試行回数と「1回も当たらない」確率の関係をグラフにしてみたらこうなる。
横軸が試行回数、縦軸が「1回も当たらない確率」。ほとんど当たると断言できるため(=当たらない確率が5%以下になる)には、300回も回し続けなくてはならない。
ガチャ沼、おそるべし。
同じ誕生日
これもまあ、意外や意外。人間の直感なんて全然アテにならないとわかる、良い問題だと思う。別名を「誕生日のパラドックス」というぐらいだもの。パラドックスというのは、「一見違うように見えるけど、それが真理であるもの」ぐらいの意味。
まず、同じ誕生日のペアが少なくとも2人いる確率、というのを数学的に記述すると、こうなる。
1 - (その場にいる全員の誕生日が全部違う確率)
つまり、例えば2人いたら、2人目は1人目と誕生日が違うのだから、1 - 364/365になるのはわかるだろう。3人だったら、「2人目は1人目と誕生日が異なり、なおかつ、3人目は1人目や2人目と誕生日が異なる」のだから、1 - (364 / 365) × (363 / 365)となる。
この調子で計算をやっていくが、だいたい「23人」いれば、確率は半分超えてしまうのである。
とても信じられないからもう一度言う。
「23人の中に誕生日が同じペアが(少なくとも)1組存在する確率は2分の1」
上のグラフがそれを示している。横軸が人数、縦軸が「同じ誕生日のペアが少なくとも一組存在する」確率である。
実はこれ、私の中学校の数学の授業で実際にやったことがあるのだが、見事1ペア、誕生日が同じ2人がいた!
皆さんも実際にやってみよう。
なくしたチケット
これ割と混乱してしまうし、下手に確率論に精通した人が解こうとすると、n=1000まである漸近式とか書こうとして失敗しがちである。
確率のとっつきにくいところとして、「時間軸を無視する」というのがある。すなわち、今回であれば「最初の人が座った後、2番目が座り、……一番最後の人が座る」と考えがちであるが、そうする必要はない、……いやむしろこの問題に関していえば、考えないほうが良いのである。
結論から言おう。答えは「2分の1」である。
なぜなら最後の人が座る段階になったとき、その人が座る席は「自分の席か、そうでないか」の2択しかないからだ。
時間的な流れを考慮するとわけがわからないが、この問題に関しては「席が埋まったかどうか」のみを考えればよく、「いつ席が埋まったか」については考えなくてよいので、こうなるのだ。
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席替えしよう
直感でわかった方もおられるかもしれないが、実は「クジをいつ引いても確率は変わらない」が正解である。
実際に計算しよう。まず一番最初にクジを引いてお目当ての席をゲットできる確率は、
49通りのうち1通りなので、49分の1である。
では二番目だとどうなるか?一番目の人がそのお目当ての席をゲットせず、なおかつ自分がゲットできる確率なのだから、
(1-(48/49)) × (1/48)となり、ありゃりゃ、また49分の1。
最後の場合も同じように考えてよい。
いつ引いても確率が変わらないからこそ、くじ引きは平等なのである。ドラフト会議、万歳。
ちなみにあみだくじだとこうはいかない。あれは真ん中を選べば、真ん中に落ちる可能性が最も高くなるクソゲーなのである。公平な場面では使用しないことを勧めます。
先手と後手どっちが有利?
これ、「先手!」と即答できる人は大勢いるだろう。しかし「なぜ先手のほうが有利なのか」と聞かれると答えに詰まってしまうに違いない。
基本としては、先ほどの席替えの問題と同じであり、
何手目に引いても、赤が出る確率は301分の1である。時間軸を固定して考えてしまうとその部分から詰まってしまう。
ただし、席替えと同じく「先手も後手もどちらも同じ!」と即断するには早い。
これも飛行機チケットの問題と同じく、発想を転換させる必要がある。
ルール上は「赤いボールが出た時点で勝負が終了する」とあるが、これを書き換えて「赤いボールが出ても勝負を続け、ボールを全て取り出した時点で勝負終了、赤を持っていた人の勝ち」としてみよう。どうせゲームが終わった後のことは考えなくてよいのだから、逆にこうしてみてもいいはずである。
そうすると、先述のように何手目に引いたかどうかは関係ないので、あとは「合計で何手引けるか」のみが、当たる確率の大きさを左右することがわかるだろう。
先手の人は最大で151手引くことができて、後手は150手しか引けないことがわかる。赤を引く確率は何手目であっても301分の1であるが、引ける手の数がわずかに先手のほうが多いので、先手が有利だとわかるのだ。
偽陽性問題
確率論が非常に難しく見える原因として、「条件付き確率」の本質的理解が困難であるというものが考えられるが、この問題はまさにそれを代表する例である。
確率に精通しない人ならば、普通に「え?90%じゃないの?」と答えてしまいそうなこの問題であるが、それは違う。一番最初の「2つのサイコロ」と同じ類であり、
Bさんがこの検査を受けて陽性が出た、という事象を分母において、計算しなければならないのだ。
普通に「陽性が出る確率」であれば90%でよいが、条件付き確率はその「普通」とは異なり、前提条件が必要なので、必然的に確率も変わってくる。
一番最初の問題と同じなのである。
分母は「検査陽性、実際陽性+検査陽性、実際陰性」の確率なので(450+950)/10000、分子は「検査陽性、実際陽性」なので450/10000。
9/28が答え。
これはだいたい32.1%で、「陽性と出たとき本当に陽性である」のは、この問題であればだいたい3人に1人。ワクチンに副作用があるとかだとけっこう深刻じゃなかろうか。
面白いのはここからで、「陰性と出たけど本当に陰性である確率」は(計算は略)99.4%であり、さっきと全く違う。何となく「どうせ100から32.1ひきゃいいんだろ」と思いがちだが違う。
裏を返せば、1000人に6人は「ほんとは感染してるのに陰性と出てしまう」のだ。
これらをそれぞれ「偽陽性」「偽陰性」と呼び、どの検査薬にも付きまとってくる、非常に難しい問題である。
ここによれば、HIVの偽陽性は1000人におよそ1~3人である。多いと見るか、少ないと見るか。
※現実では、偽陽性でないか確かめるため、数か月後に再検査したりする。
十発十中のガンマン
えーと、人数かける命中率は赤も青も同じ……。
てことはどっちも同じ!!
と答えたアナタ、全滅です。
これはほぼほぼ青軍が勝つと言ってよいのだ。
実際に青軍が1度目の発砲で勝つ確率を求めよう。
青は1人での命中率が10%なので「10人全員外す確率」は9/10を10回かけて35%。
裏を返せば「1回目で青が勝つ確率」は65%である。
失敗してもよい。2回目は9人全員でベテラン赤を狙うのだ。
このように計算していくと、「青軍が勝てない確率」の計算結果はこうなる。
つまり9回目の射撃でも勝てない確率はめちゃめちゃ低い。9回目までにはほとんどの確率で青が勝っている、と結論づけることができる。
この面白い話は一説には日本海海戦で大勝した東郷平八郎に遡る。
「百発百中の大砲1門は、百発一中の大砲100門にも匹敵する」という彼のことばは、恐らく練度の大切さを教えるものであろうが、確率論的には間違っている。
もちろん彼とてそのことを知らなかったわけではあるまい。
しかし、1回目から10人からの斉射をうけ、9回目までに生き残る確率が0.003%のベテランガンマンの気持ちを汲めば、大和魂でなんとかなるものでもないのだろう……。
円周率の電話番号
よくいう「無限の猿定理」である。
無限の数列・文字列があれば、(有限個の)どんな配列もそこに収納されうる、というもの。これを実際に確かめるのが本問だ。
11ケタ中に11ケタ電話番号がある確率は、(1/10)の11乗、めっちゃ小さい。
12ケタ中では、(1/10)の11乗に2をかけた値になる。なぜ2をかけるのか、については下図参照。
一般化すると、nケタの電話番号があれば、自分の電話番号がある確率は、
(1/10)の10乗かける(n-10)である。
これが0.99より大きくなるには、だいたいnが990億である必要がある。
つまり、自分の電話番号を確かめるためだけに、990億の数字をカウントせねばならない。
「円周率がランダムな数列とすると、どんな画像データも全て円周率には含まれているので、いずれ円周率のケタ数のみを指定すれば、画像が呼び出せるようになるかも?」という考えはあるようだが、この問題を解くとそうでもないように思える。
以上、確率の良問、答え合わせであった。
エッセンスと銘打っていますが実際は問題集です。
アマゾンの評価が高くないのはそういう理由です。
しかしながら、「直感に反する」という問題をたくさん揃えている点ではぜひお勧めしたい一冊。この記事に載っていない様々な問題が、あなたを待っています。*1
巻末には未解決の確率問題有り。興味がある方は挑戦してみては?
ソースが不明なのが若干怪しいけど、話のツカミとして絶対に損はない一冊。
三毛猫が生まれる確率、というような雑学マニアにはおなじみの確率から、飛行機で事故に遭う確率、女子高生の娘が飲酒をしている確率、東京のひとができちゃった婚をする確率など、気になるけど調べにくい、さまざまな事象についての本。
確率分野ではありませんが、頭をやわらかくしないと解けない、数学の様々な分野を駆使しないと解けない、むずかしい問題達が勢ぞろい。
論理的なパズルの好きな方々にも、脳をフル回転させたい方にもオススメできる本です。
*1:逆に、この本から引用したのもけっこうあります