米人気俳優の人種差別ツイート問題、ホワイトハウスも戦闘態勢

Actress Roseanne Barr in January 2018 Image copyright AFP
Image caption ロザンヌ・バー氏

米ABCテレビが、主演俳優による人種差別ツイートを理由に高視聴率の人気コメディー番組を打ち切ると発表したことをめぐり、ホワイトハウスがエンターテインメント業界の「偽善」を非難している。ドナルド・トランプ米大統領が30日、ツイッターでABCテレビの親会社ディズニーのロバート・アイガー最高経営責任者(CEO)を批判したほか、サラ・サンダース報道官も定例記者会見でこの問題を取り上げた。

サンダース報道官は、トランプ大統領について「最も無礼なこと」を発言したリベラル系の人気テレビ出演者が、何もとがめられず影響も受けていないと示唆した。

サンダース報道官の発言に先立ち、トランプ氏自身もツイッターに、テレビ業界の経営者らの二重基準を暗に指摘する投稿をした。

問題の発端となるツイートをした人気俳優でコメディアンのロザンヌ・バー氏は、ABCの番組打ち切りに対抗するつもりだと話している。

ホワイトハウスの見解

バー氏は、これまで声高にトランプ氏を支持してきた。特に熱心な支持者の番組打ち切りについてトランプ大統領は30日、沈黙を破った。

問題となったバー氏のツイートは、バラク・オバマ前米大統領の側近でアフリカ系米国人のバレリー・ジャレット氏を猿になぞらえる内容だった。ツイートについてディズニーのアイガーCEOは、ジャレット氏に直接謝罪していた。

これに対してトランプ氏はツイッターで、ディズニーのアイガーCEOを攻撃した。

トランプ氏は「ABCのボブ・アイガーはバレリー・ジャレットに、ロザンヌ・バーがしたような『発言をABCは許容しない』と知らせる電話をした。なんてことだ。僕についての無礼な発言をABCが放送したのに、ドナルド・J・トランプ大統領に謝罪の電話なんてしてこなかったじゃないか。ひょっとしたら、僕の電話が鳴らなかっただけか?」とツイートした(編注:太字部分は原文では大文字で強調されている)。

Presentational white space
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ディズニーはABCテレビ放送網の親会社。バー氏に対するインターネット上での猛烈な批判を受け、ABCは29日、1990年代の人気コメディ番組「ロザンヌ」の新シリーズを打ち切った。

サンダース報道官はホワイトハウスでの定例記者会見で、トランプ氏のツイートに触れた。

サンダース氏は、「大統領は、大統領についてひどいことをを言いながら、誰も何もしないメディアの偽善を指摘した」と述べた。

報道官はさらに、トランプ氏を白人至上主義者と呼んだ米スポーツ専門テレビ局ESPNの司会者、ジェメレ・ヒル氏についてアイガー氏は謝罪していないとも指摘した。ディズニーはESPNの親会社でもある。

ABCの番組「ザ・ビュー」で司会を務めるジョイ・ベハー氏が、マイク・ペンス米副大統領のキリスト教への信仰について、精神病かもしれないとほのめかして嘲笑した際も、謝罪はなかったとサンダース氏は述べた。

コメディアンのキャシー・グリフィン氏が同じく「ザ・ビュー」でトランプ氏に「冒涜(ぼうとく)的暴言」を口にしたこともあると、サンダース氏は強調した。

「大統領は、二重基準の話をしている」とサンダース氏は結び、「(バー氏の)発言を擁護しているわけではない。発言は不適切だった」と念を押した。

記者会見の最後に、1人の記者が「ここ数年間の、大統領の発言について謝罪はどうしたんですか?」と質問したが、サンダース氏は答えずに会見場を立ち去った。

バー氏の主張

ジャレット氏を「猿の惑星」とイスラム武装勢力「ムスリム同胞団」の混血児だとほのめかしたツイートについて、バー氏は当初は深く悔いているような雰囲気を漂わせていた。しかし1日たつと、開き直って反発するかのような様子を見せた。

バー氏は30日、「私は人種差別主義者ではないし、過去もこれからも絶対にそうではない。全マイノリティの市民権のため、自分の神経と家族と財産を犠牲にしてネットワークやスタジオを相手に闘ってきた自分の人生を、たった1度の馬鹿げた冗談が奪い去るなんて、決してありえない」とツイートした。

Presentational white space
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バー氏はまた、番組で息子を演じた元共演者のマイケル・フィッシュマン氏に向かって、「私を裏切ったね。すてき!」とツイッターで皮肉を述べた。

他の共演者と同じく、フィッシュマン氏もバー氏の人種差別ツイートを非難していた。

バー氏はこの数時間前には、自らのツイートを「許されない」とし、支持者に自身を擁護しないよう警告していた。

同氏はまた、「アンビエンを飲んでツイートしていた」と述べ、炎上した投稿は睡眠薬のせいだと書いていた。

さらにバー氏は、ジャレット氏に宛てて「投稿を見たかはわかりませんが、激しく、悪趣味なツイートであなたを傷つけ、苦しめたことを謝りたいと思います。心から謝罪します。私は人生の全てを人種差別の闘いに捧げています。ひどい間違いを犯してしまい、何百人の人々に職を失わせてしまいました。本当にごめんなさい!」とツイートした。

Presentational white space
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しかし、アンビエンを製造しているサノフィ社は、「どの薬品治療にも副作用がありますが、サノフィ製のどの薬品についても、人種差別という副作用は確認されていません」と声明を出した。

バー氏は当初29日には、ジャレット氏への謝罪とツイッターの使用を止めるつもりだと投稿していた。

しかしバー氏はすぐにツイッターに戻り、「もっとひどいことを言っている他のコメディアンもいるのに、攻撃されたりけなされたりするのに疲れた」と投稿した。

バー氏の番組で起こったこと

映画会社パラマウントなど複数のメディア企業を傘下に持つバイアコムの広報担当者は、「ロザンヌ」の過去の放送回の再放送を取りやめる意向を述べた。

動画ストリーミングサービスのフールーも、視聴可能番組の一覧から「ロザンヌ」を取り下げる予定だと発表している。

今年3月に「ロザンヌ」復刻版の初回放送は、インターネットなどで後から視聴した人も含めると2500万人以上を集めた。

米映画界ではおおむね無視されていたトランプ氏支持者をバー氏が演じたことで、「ロザンヌ」は保守層からの称賛を得た。

ABCはジャレット氏に関するバー氏の人種差別ツイートが投稿されるまで、「ロザンヌ」の第2シーズンを製作する方針だった。

(英語記事 White House comes out fighting on Roseanne racism row

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