著者もかつて不登校・中退を経験した。金沢文庫の母校にて。撮影:藤原慶
学校・教育 ライフ

わが子をひきこもりから救った親がやめた「二つの行動」

不登校・中退者を支援するプロが伝授

――子どもが不登校になった。

多くの親にとって、それはとても苦しい出来事だろう。

ただ、小中高の不登校は合わせて18万人、39歳以下のひきこもりは54万人という社会の中で、特別に珍しい話ではない。同じような経験をしている方はたくさんいるが、周囲に明かさない方も多いため、見えづらいだけだ。

前回の記事「『じつはうちの子、学校に行ってません』が普通の時代になってきた~だから不登校中退者専門進学塾をつくった」では、私が平成という時代を通じて経験してきた、「不登校」や「うつ病」といった社会の暗闇が、この30年間で急増してきたという話を、統計データと共に説明をした。

実は私自身も、子ども時代から大人になるまで、発達障害やうつ、ひきこもりなど、様々な障害やトラブルを経験した「社会問題の当事者」だ。そんな私が「暗闇」でも走り続けることで、たくさんの偶然に出会い居場所を見つけるストーリーは、拙著『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』に記した。

では実際に、暗闇の中にある当事者を、周囲はどのように手助けすべきなのか。例えば、「子どもが学校に行きたくない」といった時に、周囲の人間、特に親はどのような行動をとるべきなのか。

今回は、私がこれまでご支援してきた卒業生やその保護者の方の経験をもとに、お伝えしたい。

子どもを意図せず追い詰める親たち

私は現在不登校・ひきこもりなどの若者を支援するための事業を行っている。メインの事業となっている「キズキ共育塾」を通じて、この7年間で1000名以上の不登校・中退の若者たちの次の進路を後押ししてきた。

親であれば、「自分の子はいい大学に行くものだと思っていたのに」「そのことで安定した職業についてくれると思っていたのに」と思うかもしれない。子どものことを尊重する親であっても、「(子どもが)今まで頑張ってきたことが全て無駄になるかもしれない」と過度に心配してしまうかもしれない。

だからこそ、子どもにも「学校ぐらいは行った方が良いのでは」「このままでは将来の就職出来ないかもしれないよ」といった声をかけてしまうことがある。

私の経験上であるが、子どもか不登校になった時に、親が子どもを放置している状況よりも、親が心配になり過度に干渉してしまうケースの方が多い。

 

子どもが頑張る気力を失う理由

このような「親の期待」「親の心配」は、「逆効果」を生むことが多い。

多くの子どもは、親を心配させている自分を責めてしまう。そして、子ども自身が罪悪感を感じれば感じるほど、元気がなくなり、何かを頑張る気力が失われてしまう。

つまり、親の「期待」や「心配」は時に逆効果になることを覚えておきたい。

むしろ、「今の苦しみが永遠に続くわけではない」という「希望」を示すことが、よっぽど重要だ。

例えば筆者がかつて支援したA君は、不登校の後に高校を中退、その後3年間ひきこもった。本人のことを尊重する家庭環境だったこともあり、徐々に精神も回復。その後私が経営する塾に通うことになったが、しばらくすると「あの時親に迷惑をかけたから」と「自分のアルバイト代から授業料を出したい」と話すようになった。

こんな風に、不登校が終わった後で、親に対して感謝の気持ちを示す子はとても多い。親がどれだけ心配しているのか、子どもには十分わかっている。