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【経済】原発ごみ、処分地決まらないのに 英の計画地住民 一問一答
日本政府と日立製作所が原発を建てようとしているアングルシー島とはどんな場所なのか。住民団体のリンダ・ロジャーズさんは、独特の文化を誇る島の特徴を列挙し、原発による弊害を問題提起した。 (妹尾聡太、伊藤弘喜) -アングルシー島はどのような地域か。 「美しい自然があふれ、英中西部・ウェールズの古い伝統が息づく島だ。観光業と農業が主要産業。住民はウェールズで生まれ育ったことに強い帰属意識を持っている。その一方で、数百年前にイングランドの統治下に入って以来、差別的扱いを受けてきた。産業の乏しい地域に建てて都市部に電気を供給する原発はその象徴だ。東京電力福島第一原発事故が起こった福島県と東京都の関係に似ているのではないか」 -日立の原発建設計画をどう考えているか。 「原発の敷地で使用済み核燃料を長期間保管しなければならないといわれ、子や孫の世代、そして観光産業にとっても良いことではない。島の自然や伝統が損なわれてしまう。英国でも日本同様、核のごみの最終処分地がつくられるめどはついておらず、核燃料が置かれたままになる懸念がある」 「原発建設で雇用が増えたとしても一時的だろう。島内には既に停止して廃炉作業中の原発があり、確かに建設時は一部の人々の収入が増えた。しかし雇用は長続きせず、今も地域は貧しい。建設に当たって八千人以上の雇用を生むと言われているが、それは島外から来る作業員。持続的産業にならない」 -建設には公的資金が投入される見通しだ。 「(三兆円規模の事業費のうち)英政府は二兆円を日立の子会社に融資するとされている。だが、緊縮財政が敷かれている英国では現在、教育や医療などの予算が減らされている。街では路上生活者や困窮者が増えている。二兆円は人々のために使うべきだ」 -今月下旬に来日し、まず福島県を訪問した。 「飯舘村などで見たことにショックを受けた。汚染された土が袋に詰められ農地にたくさん並べられていた。事故の影響は長引く。福島の人々に対する連帯の思いを強くした」 「福島では電力会社などが原発は安全と宣伝していたというが、これはウェールズでも同様。日立の子会社は、伝統的なお祭りのスポンサーになり、『原子力は明るい未来をつくる』と宣伝している」 -日立や日本政府に訴えたいことは。 「原発は過去の技術であり、今日の問題を解決する回答にはならない。なぜ日本が原発を輸出しなければならないのか。日立は優れた再生可能エネルギー技術をつくっている。原発ではなく風力発電などへの投資を増やすべきだ。アングルシー島で、自然環境を破壊しない持続可能なエネルギーのシステムに投資することこそ考えてほしい」 <アングルシー島と日立の原発計画> 同島は英国ウェールズの北西部に位置する人口約7万人の島。英本土と海峡を挟み2本の橋でつながる。紀元前の巨石遺跡や美しい海岸などで知られ、主な収入源は観光業と農業。住民の多くは地域固有の言語であるウェールズ語を話す。 島には1971年から稼働し2010年代に運転を終了した原発がある。日立は12年、同島で原発新設を計画していた独企業を買収し、事業を引き継いだ。 事業費総額は当初の予想を大幅に上回る3兆円に膨らむ見通しになったことなどから、中西宏明会長が今月初めメイ英首相と会談して支援を要請。英政府による融資や出資、高値での電力買い取り保証を求めて交渉中だ。
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