私のブラック企業体験(15)

      2017/12/25

当たり前かもしれないが、カリスマ社長である孫正義さんに憧れている社員ばかりで、私も孫正義さんのスピーチに魅せられて入社を決めた一人である。

巨大化した組織には綻びが出るものなのかもしれない。

ただ、ソフトバンクは買収を繰り返して大きくなった企業で、小さいところから大きくなった企業とは一線を画している。
少なくとも買収先の文化が残っているところは安全だと言えたのではないだろうか。

私が居た「流通事業」こそが孫正義さんが求める文化を引き継いだ組織なのではないのか。
そこで、ここまで「いじめ」「セクハラ」「パワハラ」が横行していたのは何故なのか。

他の部署の同期が、「先輩が、新人のトイレの回数を数えている」なんて話をしていたので、全体としてそういう文化が醸成されていたのではないかと推測される。もっともその同期は笑い話として話していて何の疑問も持っていない様子であったが。

ここまで社長が何も言及しないということは、黙認しているということ他ならない。

私は孫正義さんの出自から、人種差別を絶対にしない人だと信じて入社した。
しかし、性差別はどうだろうか。
ここまで「男」を前面に押し出すマッチョイズム満載のマネジメントをしてきたのは、日本の大学を卒業した者を、肉体労働に従事させているつもりだからなのだろうか。

最近、孫正義さんが視覚障害者のことを「めくら」と発言したというニュースを見た。

苦労した人が差別問題に敏感であるとは言えないのだと思った。

私は在日韓国人の人達と縁が深い人生を送ってきた。
両親が営む喫茶店を一生懸命働いて支えてくれ、私を自分の子供のように可愛がってくれたのは在日韓国人の女性だった。
その女性は、学校の先生になりたかったけれどなれないのを知って、学業優秀だったにも関わらず、勉強に身が入らなくなったと言っていたそうだ。母から聞いた話だ。

孫正義さんも同じようなことを何かのインタビューで答えていたように思う。

本来、アジア諸国の中の日本は、諸外国に対してきちんと非を認めて、人権問題に対してリードしていかなければならない立場であるのに、それをしない。
そればかりか、日本では、在日韓国人を未だ差別し、職業選択の自由、参政権を奪っている。

今でさえそうなのだから、昔はもっと酷かったのだろう。
だからそれにめげずに成功した孫正義さんを本当に尊敬していた。

私は学生時代に一年間中国に語学留学をした。
同室は韓国人の女の子だった。

クラスメイトの韓国人男性とは大親友になった。韓国人の人達は、私を仲間だということで、私が困った時はいつでも熱心に助けてくれた。それに比べて日本人は冷たいもんだなと思っていた。「仲間」に対する熱心さはとても見習うべきものだと思った。

けれど、男女の関係になった時に、韓国人男性は、決して男女平等とは思えないような行動を相手の女性に対して取ることがあって、女性の人権というのは、日本も韓国も十分に担保されているとは言えないのだと知った。

日本で在日韓国人の男性と交際した時、彼は母親のことをとても尊敬していたのだが、私のお金の使い方や食事の仕方などをずっと細かくチェックしていたようだった。
自分の母親がスーパーウーマンだということで、私は結婚相手に相応しくないと判断したとのことで、結局振られてしまった。

一年前、一緒にビジネスをやろうと一緒に働いた人も、朝鮮学校出身の在日韓国人であったが、彼が語るエピソードは、彼らの日本における職業選択の自由のなさを感じ取るのに十分な話であった。学業優秀でなければ、実家の飲食店を継ぐか、学校推薦のパチンコ屋か。

その人はそれが嫌で、学歴不問のネット回線の営業で実績を上げて、独立。
しかしその後は、法律のグレーゾーンを掻い潜るような商法に手を染めていた。

私はそうするしかない事情というものが痛いほど分かったし、
彼の生きてきた環境には、適正なやり方についてのノウハウがないというのも知っていた。

結局、彼は無給の正社員という雇用形態を私に結ばせて、歩合給を払うという関係を求めてきて、私は言われるがままに合意してしまったが、そこからは二人きりになると、卑猥な話をしてくるなどのセクハラが始まってしまった。
弁護士をつけて、賃金の清算をして縁を切ったが、彼は未だ何が悪かったのか分かっていないだろう。

ネットでは政治や外交の話になると人種ばかりが取り沙汰されるが、私は言いたいと思う。人間は環境の生き物だ。

日本社会が育んできたものはたくさんあろうが、女性の人権は一番優先順位が低かったのだ。日本に関わってきた社会や人達にとってもそうだ。これは侵略戦争を仕掛けた側の日本が作ってきた因縁である。

中国だけはジェンダーに関して縛りがきつくなく、女性にとっては過ごしやすい国だと感じた。

国籍、人種関係なく、アジア諸国一帯となって、性差別の問題に取り組める日は来るのだろうか。

孫正義さんは、最近も、新たな野望について語っている。
恐らく、日本に携帯端末の割賦販売を取り入れたように、今度は金融の分野で、例えばマイクロファイナンス事業などを考えているのではないだろうか。

日本が貧困化することをこれほど早く見越していたとは、本当に先見の目がある方である。

私は、ソフトバンクを退職した後は、女性であることや、退職理由がネックとなり、更に時はリーマンショック、結局正社員の職には就けず、非正規雇用で職場を転々としてきた。

ある時、リクルート社に派遣社員で入ることとなった。

リクルートはトップダウンではなく、ボトムアップの社風でとても風通しが良かった。

しかし、プローパーの早稲田や慶応といった大学を出た正社員がリーダーで、その手足となって6割の非正規社員が支えるといった会社組織であった。
もちろん労働組合もなく、正社員でも長く勤める人がいないという特殊な会社であった。

非正規社員としては構造にとても不満があったが、ボトムアップで事業を作っていこうという文化が醸成されていることが私には新鮮だった。

ソフトバンクは、カリスマ社長が全て。
孫正義さんに褒められるためのプレゼンの作り方、みたいな本もたくさん出されている。

労働者が団結して何かを生み出すという文化とは間逆な発想の会社である。

「塾」のようなところで、孫正義に見出されれば一気にチャンスが巡ってくるのだろう。現にペッパーがそうだった。

私は、ペッパーを見て、とうとうソフトバンクも「ものづくり」を始めたのだなと感慨深かったが、開発者もすぐに辞めてしまったようだ。

日本は労働者の団結と、ボトムアップからの開発で成り立ってきた国だと思っている。

私は仕事は我慢なんかじゃないと思っている。
だから、ソフトバンクで「耐えられない」ものは無能だといわれ続けて来て、今も尚言う人はいるでしょうが、どうぞ言ってください。

私は民主的なところじゃないと力を発揮できない人間です。

上の言うことをずっと聞いて従っていれば食うには困らないのかもしれないが、それで安泰だなんて、そんな生活には戻りたくありません。

私は、あの会社がハラスメント撲滅に動くかどうかだけを気にしています。

そして障害者に対して優しい会社になるのかどうかを気にしています。

分かっています。私は所詮、駒でした。

しかし、あの留学を終えて夢を膨らませて入った会社で体験したことは、
「女性性」をあげつらわれること、「容姿をからかわれること」
上の者には「ぺこぺこすること」

とにかくスピード感を持って仕事をすることだけは身についたことなのかもしれないが、失った自尊心を回復するまでに費やした時間を思うと、気が遠くなる。

紛いなりにもリテールの事業を営んでいる会社ではないのか。
私も入社時に、携帯を変えました。母も変えました。

あれからナンバーワン採用や、携帯勧誘数を競うような採用基準を取り入れた時期があったようだ。使い捨て人材でもよりフレッシュな人材が欲しい、そして友人を勧誘してきてくれて契約台数が伸びればそれで良いという考えだったのでしょうか。

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