・女性向けコミック誌の印刷証明付き部数(※)のトップは「BE・LOVE」。直近の2018年1月~3月期では8.7万部。「プチコミック」「Kiss」が続く。
・前四半期比では女性向けコミック誌においてはプラス誌は「MELODY」のみ。5%を超える下げ幅を示したのは2誌。
・前年同期比では女性向けコミック誌すべてがマイナス。5%を超えた下げ幅は12誌、10%超は6誌。
女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」
日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりで無く、少女・女性向けのものにも及んでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。大よそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数から、実情をさぐる。
まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2018年第1四半期(1月~3月)のもの。
トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。
「ARIA」は今期では部数の計上が行われていない。ここしばらく部数の減少が気になる動きを示していたが、2018年4月28日発売の6月号で休刊することが発表されている。仕組みの上では今期の部数計上は可能だが、休刊が決定している以上、その必要は無いとの判断が下されたのだろう。
「ARIA」は、かつて「進撃の巨人」特需で大きく部数を底上げしたが、間もなく失速。その後は下落基調を示していた。2016年後半に入ってからは、これまでの最小値だった1万2000部すら下回る値にまで部数を落としており、前期では4ケタ台に突入。危機感を覚える状況だったが、それが体現化する形となってしまった。
また今期では部数計上が行われているが、「YOU」も2018年10月発売の11月号で休刊することが発表されている。
「YOU」も継続して部数減少していたものの、何の前触れも無い突然の休刊決定は驚きであり、また悲しい話に違いない。
プラスは1誌…四半期変移から見た直近動向
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
唯一のプラス計上誌「MELODY」は隔月刊誌。
なだらかな下落基調の部数推移だったものが、今期では明らかに上昇へと転じている。これは複数の要素による影響が考えられるが、恐らくは樹なつみ先生による「八雲立つ」の続編が掲載されたこと(+表紙にも大きく登場)が主な要因だろう。販売サイトや購読ブログなどにおいて、同誌に対し賛美・評価のコメントが多く見受けられる。パワーのある作品は掲載誌そのものを大きくけん引する好例ともいえよう。
前期比プラスマイナスゼロとなった「フラワーズ」だが、人気作品「ポーの一族」の続編「ポーの一族 春の夢」の特需は、完全に消え去ってしまっている。
「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での部数上昇(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は平常の状態に戻した結果。2018年5月28日発売の7月号からは新しいシリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が表紙掲載・巻頭カラーで登場する予定なので、次期には再び「ポーの一族」のけん引力の大きさを知ることができる値が出てくることだろう。
季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
「フラワーズ」は「ポーの一族 春の夢」特需発生前の部数に戻ったのが現状で、1年前は特需の頂点だったため、このような結果が出てしまっている。それを除くと、誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた下げ幅を示したのは8誌、2割超えの下げ幅も「Cookie」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。
1年ほど前にはあちこちに見受けられた「おそ松さん」特需だが、今四半期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。すでに第二期の実放送も終わり、今期はまさにその放送時期の動向なのだが、部数の上での盛り上がりは見受けられない。第一期のような嵐は去ってしまったのかもしれない。
「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。「八雲立つ」もその可能性を秘めている。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。
他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減退している可能性は否定できない。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。
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